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おまけ
ちょっと関係性が進む話。
食われる意味を知る吉田さん。
付き合ってから一ヶ月。
付き合うとは言ってもお互いに抱えている仕事は多く、特に佐野は常にスケジュールが詰まっている状態でなおかつ男同士、アイドルという立場。大っぴらに外でデートできるわけでもなく、自然とどちらかの家で過ごすのが日常になっていた。
この日は佐野の家。
マグカップに淹れたコーヒーを手に、佐野家のソファーで我が物顔でゆったりと寛ぐ吉田。
お気に入りのマグカップ、こだわりのコーヒー豆、肌触りの良い部屋着。そして、寝泊まり用に佐野から借りたダボっとした大きな服。そうやって、佐野の生活空間の中に当たり前のように自分の私物が増えていく光景に、吉田は胸の奥がじんわりと温かくなるような幸せを感じていた。
しかし、その頭の片隅には、あの時真野から言われた「食われる覚悟をしておいた方がいいよ」という言葉がずっと引っかかっていた。
(……多分、勇斗に対しての例えなんだろうけど……どういう意味だったんだ?)
気になって仕方がなくなり、隣で「今度仁人とここ行きたいんだよね。」とスマホでデートスポットを調べている佐野に素直に尋ねてみた。
「……ねぇ勇斗。『食われる覚悟』って、どういう意味だと思う?」
以前帰りがけに告白もどきの流れで真野にこう言われたと、内容を告げた次の瞬間佐野が思いっきりしかめ面を作った。ただでさえ整った端正な顔立ちが、より一層険しく歪む。
「……あいつ、マジで余計なことしか言わねぇな。」
「え?あいつ?」
「んー、そうね。……まあ、いずれ分かることだし。意識してもらうために、先にしておくか。別にあいつに言われたからじゃないからね。」
「ん??」
首を傾げる吉田に向かって、佐野がニコリと笑う。
「仁人、もうちょいこっち来て。」
ちょいちょいと手招きされ、吉田は何の疑いもなく顔を寄せる。
その瞬間——佐野の手がすっと伸び、吉田の腰をぐっと引き寄せた。
「……っ!?」
自分の手で一周してしまう吉田の腰の細さとふにっとした肉付きの良さに佐野はたまらなくなる。
一気に身体が密着し、服越しでも伝わる体温と隙間なく合わさる唇。
付き合ってからまだキスもしていなかったため、完全に油断していた。
(あ……そっか、付き合うってこういうことだよな……!)
自分も子供ではないし、付き合う先に何が待っているか理解していた筈だが、あまりに佐野がいつも通りだったため深く考えずにいた。
突然のキスに急激に頭が混乱し、吉田はすがりつくように佐野の服をぎゅっと掴む。
吉田が抵抗しないと分かると「ふふ」と唇越しに佐野が笑った気配がする。
直後、はむ、と上唇を甘噛みされるような仕草に、思わず吉田の口が小さく開いた。その隙を見逃さず、佐野の熱い舌が滑り込んでくる。
「んん、ぁ……っ。」
自分でも聞いたことがないような甘い声が跳ね上がり、ぎゅっと目を瞑った吉田は心の中で絶叫した。
(おわーー!!!何今の自分の声無理無理無理!!きしょいきしょい!!)
気づいた時には佐野との距離はゼロになり、力強い腕でしっかりと抱きしめられていた。
容赦なく口内を動き回る巧みな舌遣いに、吉田の思考は一瞬で翻弄されていく。
「んっ、あっ……あ、んぅ……。」
意味がないと分かっていながらも、佐野の鍛え抜かれた胸をぐっと押してみるが、ビクともしない。
年々トレーニングを重ねて作られた体格の良さは知っていたはずだったが、こうして極限まで密着して初めて、佐野との圧倒的な体格差を思い知らされる。
(てか長い長い!!!!こいついつもこんなキスすんの!!?!)
一応、吉田も恋人ができたら毎日たくさんキスしたい派のつもりだった。だけど、こうなると話が違いすぎる。
吐息まで吸い尽くすような濃厚さと執拗さに、吉田のキャパシティは一瞬で限界を迎えていた。
「は、はぁ……んっ、ん、ま、待って、待ってぇ……!」
「ふ……仁人……。」
熱い吐息が交じり合い、腰がじんと痺れるように震える。
「は、はぁっ、は…ふぁ、」
隙間なく口づけを交わしながら、上がった息を整えようとふと見上げた佐野の瞳。そこに宿るギラリとした熱量を目にした瞬間、吉田の頭に真野の言葉が鮮明に蘇った。
(……あ、俺、食われるかも……。)
強引な腕力と熱い体温に、一瞬の恐怖。
……そして少しの優越感。
(…勇斗なら。)
吉田が意を決し、震える手をそっと佐野の背中に回した。
その瞬間。
全てを許されたことを実感した佐野の顔が、一気に破顔した。
「仁人……。」
「…あ…、勇斗…。」
——ずるい。
至近距離でそんな、全部を包み込むようなクシャッとした満面の笑顔を見せられたら、もう勝ち目なんてあるはずがない。
触れ合った唇から伝わる温もりと、向けられたまっすぐな愛おしさに、胸の奥がぎゅーっと苦しくなるほど締め付けられていく。付き合うことにあんだけ不安だった自分の気持ちなんて、一瞬で溶かされてしまった。
(そんな笑顔されちゃ負けるわ…。)
重ねた唇の隙間からふふと佐野の笑いが漏れ、逃がさないと言わんばかりの腕の力でそのまま吉田を押し倒す。ソファーのしっとりした質感を背中で感じながら、見上げた佐野の瞳の奥に灯る熱を見て、吉田はこの男は自分のものだと確かめるように、自ら唇を重ねた。
おしまい!
コメント
6件

かんわいっ
ysdさんが可愛すぎました🫠 これからsnさんに色々される続きや、無自覚片思いな頃の2人の第三者視点など、ぜひまた読みたいです!
「食われる覚悟」の意味がこれか……!って膝を打ちました。真野さんの言葉がここで効いてくる構成、好きです。吉田さんがキス中に「自分の声きしょい!」とツッコむ内心のギャップがもう最高で、照れと動揺がありありと伝わってきました。最後の佐野さんの破顔した笑顔に吉田が負ける流れ、甘くてたまらないです。関係性の進み方に説得力があって、続きが気になります!
あじさい。
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ねむ
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かぼす
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