鋼の騎士と星霜の瞳

🛍️第五章：完璧な茶葉と、監視者の視線

次の日の午後。イリスは、ハンジに依頼されていた残りの書類整理を半ばで切り上げた。頭の中は、リヴァイに課せられた**「最高の紅茶」**という至上命令でいっぱいだった。

（水の温度、蒸らし時間…そして、何より**「茶葉」**だ。兵長のメモに合う、完璧に純粋な茶葉を見つけなくては）

しかし、団の備蓄にある茶葉は、兵士の士気を保つための実用品であり、「完璧」とは程遠い。

イリスが廊下で途方に暮れていると、ちょうど調査兵団団長であるエルヴィン・スミスが、静かに声をかけてきた。

エルヴィン：「イリス・ヴェルナー。何か困っているのかね？」

「だ、団長！申し訳ありません。実は、リヴァイ兵長に…その、**『極秘の任務』**を課されておりまして…」

イリスは、紅茶のメモを握りしめながら、事情を正直に説明した。

エルヴィンは、その内容を聞くと、いつもの冷静な表情の中に、どこか愉悦の色を浮かべた。

エルヴィン：「なるほど。リヴァイらしい**『愛情表現』だ。そして、君はそれを『任務』**と受け取ったわけだね」

エルヴィンは、その昔、地下街からリヴァイを連れ出した人間だ。彼の異常なまでの潔癖さや、紅茶への執着が、彼の過去と深く結びついていることを知っている数少ない人物だった。

エルヴィン：「よし。私も手を貸そう。**『最高の紅茶』とは、リヴァイにとって単なる飲み物ではない。それは、彼が唯一、『世界を完璧に統制できる』と感じられる瞬間だ。彼が求める茶葉は、市場にある『粗悪な汚れ』**とは無縁でなければならない」

「団長、ありがとうございます！」