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その日は朝から快晴だった。
前日、夜遅くまで起きていたミンミンボウの三人はいつもよりゆっくり起床し、午後に始まる自転車レースの準備をしていた。
「さぶ郎はそれで出るの?」
ぺいんが指さしたのはさぶ郎のBMXだった。
「これ速いんだよ?」
「ロードレーサーの方が速くね?」
そういうぺいんは競技用のロードレーサーだ。
「で、お前はなめてんの?」
ぺいんにそう言われたミンドリーは一輪車で参加予定だ。
「ぺいん君。一輪車でも80km/hは出るんだよ」
「………そうですか」
ミンドリーが決めたことを曲げないことを知っているぺいんはあきれた声をあげた。
「ちなみに一輪車で軍事物資の犯人も検挙している」
「どういうこと?」
ぺいんは意味が分からないと言いたげな表情で首をかしげた。事実であれば街中から事件現場は大分離れている。パトカーで高速道路を進み砂漠の街へと行かなければならないからだ。
「んー。東高速のコンビニあるじゃん?通報があったからパトロールに行った。もちろん犯人は逃走していたから、今度は砂漠の方を見回ろうと移動したの。で、ちょうど砂漠に着いたら目の前でやってた」
「………ソウデスカ」
とりあえず事実らしい。
「まぁ、とりあえずそろそろ時間だし出発しようか。集合場所どこだっけ?」
「レギオン!」
「じゃぁ、行きますか」
市が主催だと聞いていたが、主催はメカニックで市は協賛になったらしい。賞金もあるらしく集合場所のレギオンには多くの市民が集まっていた。
以前行われたピーナッツレースの時と同じく今回も出張販売は無いのか聞かれたが、三人とも自転車で来ているため販売が無いことを説明して回った。なお、このことを見越してミンドリーは他の飲食店に根回しをし、レースに参加しない飲食店の店員が出張販売を行っていた。
主催者からのあいさつや説明がされた。ピーナッツレースと同じく指定されたレースを走り上位には賞金が出る。
説明が終わるといよいよレース開始となった。
コースはレギオンをスタートして病院前を通り北上。パシフィック銀行裏手の坂道を上り高級住宅街のカーブが多い道を通った後、ゴルフ場から市役所を経由してレギオンに戻るコースだ。
スタート後、前回と違いミンミンボウの三人は固まって走っていた。相変わらずぺいんとさぶ郎が煽り合いをしながら走り、それを微笑ましくミンドリーが見守っている構図だ。
また沿道には住民もたくさん応援に来ていた。病院前では救急隊が、高級住宅街では交通整理をしている警察官が、市街地ではメカニックや飲食店やギャングがそれぞれミンミンボウの三人に応援をくれた。
レースは終わり、ミンミンボウの三人は上位にはいたが入賞圏内には入れなかった。帰国することを考えればここで賞金や賞品を貰っても仕方が無い。ただレースはすごく楽しかった。
帰り道、三人は沿道の応援を思い浮かべながら話をする。
「なんか、この街に十日ぐらいしかいないのにたくさんの人が応援してくれたな」
「ありがたいことだね」
「さぶ郎もお友達たくさんできた!」
「良かったな、さぶ郎」
「これだけ知り合いが増えると名残惜しくもあるね」
三人は明日帰国予定だ。警官のまるんとギャングの不破、お世話になったカフェのクマの店員とメカニックのギル、れんにだけ帰国することを伝えている。
「まぁ、また休みを取って遊びに来れば良いさ」
「さぶ郎もまた来たい!」
「そうだね。いつになるか分からないけど、また来ようか」
早速ミンドリーはその時まで店や家を維持してもらえるよう、関係各所に連絡を始めた。
ぺいんとさぶ郎はいつも通り今日のレースのことを話している。
楽しかった休暇も明日の午前には空港から飛び立ち、夕方には元いた街に帰り、終わりを告げる。
知り合いもたくさんできた。家族で楽しいこともたくさんできた。家族になってから仕事を忘れてこんなに濃密な時間を過ごしたのは初めての経験だ。
少しの寂しさと元の街の仲間に会えることを胸に街で過ごす最後の日は終わった。