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「これだけにパーティーに来たの？」
すると、さすがにこのタイミングで外に出たことに不自然だと気付いて確認する透子。
「まさか。ホントは透子連れ出すための口実」
「えっ？」
「ホントの目的は別」
「ホントの目的って何？」
「ついてこればわかるよ」
そう。
ずっとオレはこの日を待ってたんだから。
そして、透子の手を繋いだまま、エレベーターに乗り込む。
「ん？ホテルの上に上がってるの？」
透子はオレの一つ一つに不思議そうに尋ねて来る。
オレはようやく久々に透子に会えて、こんなにも胸がいっぱいなのに。
握り締めた手を、もう放したくなくて。
ようやく一緒にいられるこの嬉しさを噛みしめたくて。
実は、こんな風に手を握って歩くことさえもしたことなかったんだと改めて気付く。
ずっと掴みたくて掴めなかった憧れの愛しい人。
ずっとオレには手の届かなかった人。
だけど今。
その愛しい人が、ここに一緒にいて、そして今この手を掴むことが出来ている。
例えもう透子がオレから心が離れていたとしても。
だけどもう。
この手を放す気はないから。
絶対あなたをもう逃がさないから。
そしてエレベーターが上階で止まり、廊下を透子の手を引き歩きながら、ある部屋の前に到着して立ち止まる。
そして持っていたカードキーで部屋のドアを開け。
「どうぞ」
透子の手を放して、部屋へ入るようにと合図をして促す。
「どうも・・」
だけどまだ状況が飲み込めてなくて、言われるがまま部屋へと入る透子。
「うわぁ・・すご・・・綺麗・・」
すると部屋に入ってすぐ飛び込んでくる大きな窓から見える綺麗な夜景。
その景色に透子が夢中になっている。
「どう？綺麗でしょ？」
そんな透子の背後にそっと近づいて、後ろから声をかける。
「うん。すごく綺麗」
透子は嬉しそうにうっとりした声で呟く。
窓のガラスにそんな透子の姿が映っているけど、透子はそんなことも気づかないくらい夜景を見つめていて。
オレに背中を向けていても、そこに映る透子が綺麗で。
嬉しそうにしている透子が愛しくて。
気付いたら透子の背中からそっと腕を回して優しく抱き締めていた。
「樹？」
そしてそんなオレに気付いて透子がそっと声をかけてくる。
「いつかこの景色を透子に見せたかった。オレから透子に夜景のプレゼント」
何度かここから見えるこの景色を見る度に、いつも透子のことを思い浮かべてた。
この広い街の中で、たった一人の透子に出会えた奇跡。
いつでもどんな時でも、オレの感じるモノ、目に見えるモノ、透子にその美しさや感動を同じように感じてほしかった。
「嬉しい・・・。だけど、どしたの？いきなりプレゼントだなんて」
「ん？今日は透子にとって特別な日でしょ？」
「え・・・？」
そう言ったオレの言葉に不思議そうに反応する透子。
そんな特別な日オレが知らないとでも思ってたの？
「透子にとって特別な日に、こうやって一緒に特別な時間を過ごしたかった」
オレがどれだけこの日を夢見ていたか。
透子を想い続けていた時間ずっと。
透子と離れてからもずっと。
「樹・・・」
「透子の特別な日は、オレにとっても特別な日」
透子の特別なこの日、いつか一緒に過ごしたかった。
この特別な日にオレと一緒に過ごしてほしかった。
今ようやくその日に、この腕に透子がいてくれることが嬉しくて。
その幸せをちゃんと確かめたくて、透子をもっと感じたくて、更に強く抱き締める。
「透子。ちょっとそのまま待ってて」
オレがそう言って身体を放してその場を離れようとすると。
「えっ？」
オレの方に振り向いてなぜか透子が不安そうにする。
「大丈夫。振り向かずにそのままでいて」
そんな透子を後ろから両肩にそっと触れて、そのまま安心させる。
すると、その言葉に安心したのか、オレが言ったようにそのまま夜景を見ながら待っている透子。
そんな透子を確認して、オレは用意してあったあるモノを手に取った。
そして、夜景を見ていた透子の目の前にその手の中に握っていたモノを差し出しす。
「えっ？何」
驚いた透子は何が起きたかわからないまま、それをじっと見つめる。
「綺麗・・・」
「透子。このプレゼントももらってくれる？」
それはオレがこの日の為に用意したネックレス。
「えっ？いいの？」
すると、透子は嬉しそうにしながら、オレのいる方へと振り向く。
「もちろん」
そんな透子を見てオレも嬉しくなって優しく微笑む。
「じゃあ、後ろ向いて首出してもらってい？」
「あっ、うん」
そう言って透子が肩の横側に自分の髪を一つにまとめる。
オレが言ったその言葉に何気なくしたその仕草が、その首筋が。
今まで見れなかったその色気や美しさが。
オレの感情を一気に昂らせる。
その後ろ姿にオレの視線も、オレの手も、すべてが止まって見惚れてしまう。
でもすぐに気持ちを切り替えて、とりあえず手に持っているネックレスを透子の首へとつける。
「つけれた？」
だけど、今まで抑えていた愛しさも欲望も、その瞬間一気に溢れて来て。
後ろから透子を勢いよく抱き締めて自分の身体の中へと引き寄せる。
いや・・ヤバいだろ。こんな姿。
どんどん激しくなる胸の高鳴りを感じながら、そのまま透子の肩から首元へと更に顔を近づける。
「もう無理・・」
そしてオレは自分で限界を感じ、静かに透子の耳元でそう囁く。
「えっ？何が？」
「もう透子のすべてが愛しくてたまんない」
もうどうにかなりそうなくらい透子が愛しくて、透子が欲しくて。
ずっとずっと会いたくて、触れたくて、抱き締めたくて仕方なかった。
「樹・・？」
透子がそう囁く声も、オレにはもう甘い囁きでしかなくて。
もう一分一秒離れたくない。
ずっと透子とこうしてたい。
どうしても手に入れたかった愛しい人。
どれだけこの瞬間を願っていただろう。
今までずっと想い続けていたこと。
ずっと想いが届かなくて切なかったこと。
ずっとその想いが伝わらなくてもどかしかったこと。
今こうやってこの手に抱き締めていられること。
目の前のその色気にもう理性が効かなくなりそうなこと。
透子のすべてに、この心臓が今まで感じたことないくらい高鳴って反応する。
「ようやく透子に触れられた」
「うん・・・」
そしてその高鳴りと同時に今まで感じたことないほどの安らぎと幸せも感じて。
そんなオレを受け入れてくれるかのように、透子がそっと後ろから抱き締めているオレの腕に手を触れる。
「しばらくこのままでいてもいい？」
「いいよ」
もう今はただこうやって触れているだけで幸せで。
この幸せをただ今は噛みしめる。
こんなにも満たされて。
こんなにも安心出来て。
こんなにも幸せを感じられる。
誰より大切で愛しい人。
ようやくこの手に抱き締められた愛しい人。
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