テラーノベル
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「 木洩れ日の奥で 」
もりょき
点滴の機械が一定のリズムで音を刻む病室の中。
夜は深まりカーテン越しに月の光が差し込んでいた。
涼架はベッドの傍で、ずっと元貴の手を握っていた。
握り返されるその力は、弱くて、でも確かで。
「 …ねぇ、元貴 」
「 ん……なに、涼ちゃん 」
「 昔……虐待されてたって、ほんと? 」
静かに、優しく問いかけた。
答えたくなければそれでいい。けど、今なら少しは──
元貴は、一瞬だけ視線を逸らしたあと、小さくうなずいた。
「 うん……ずっと、親じゃない人に育てられてたの。血も繋がってない。
家にいるのが、ずっと怖かった。誰にも、助けてなんて言えなかった…… 」
「 元貴… 」
「 手を伸ばせば叩かれるし、声を出せば怒鳴られた。 」
「 だからね、僕、触れられるのが怖い。人の目が、痛いの。 」
「 優しくされるたび、どうしてって、怖くなる 」
涼架はぐっと唇を噛んだ。
そんな過去を、あんな小さな体で抱えてたなんて。
「 それでも……涼ちゃんは、いつも手を伸ばしてくれた。
怖くなかった。……涼ちゃんだけは、怖くなかったんだ 」
涙が一粒だけ枕元に落ちた。
「 ……ほんとはね、いつかいなくなるのが、怖かった 」
「 僕はいなくならないよ 」
「 でも、僕は──また熱出して、吐いて、弱って…… 」
「 それでも、いいって言ってんじゃん 」
涼架はその手をそっと頬に寄せた。
「 元貴がどれだけ弱くても、泣き虫でも、全部抱えてあげるから、
だから僕を信じていい。……信じて、くれないかな 」
元貴は、ぽろぽろと涙を流した。
涙の奥にあったものは、悲しみではなく、ほんのわずかな希望。
「 涼ちゃん、ありがとう…… 」
「 こっちこそ、生きててくれてありがとう 」
窓の外には満天の星。
夜空は静かで、優しくて、すべてを包み込んでいた───
#7.「 君が泣いた夜 僕は空を見上げてた 」
近いうちに関係者様募集しようかな…?
コメント
2件
えぇ!!みのりさんっ! いつも拝見させていただいています!! え、関係者様?!!ぜひぜひ! ほんと感謝です🥹💗 フォロバ失礼しますっ
ほんっとに好きです。 主さんの話今日全部始めて見て… 儚いくて、切なくて、淡い感じの…青春の話に 心打たれました…っ 情景がスッと頭に入ってきて、毎回シチュも最高で 儚い感じがひしひし感じます… 本当に雰囲氣が好みです。だいすきです。愛してます。 もしよろしければ、関係者様なりたいなー、とか。 初コメ、フォロー、ブクマ失礼しますね。 これからも応援します。