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暗闇。金属の音。閉じ込められた、とわかった瞬間、最初に浮かんだのは焦りじゃなく――
……この距離、逃げられへんやん。
――っていう、どうしようもなく自分勝手な安心やった。
🌸の体温が、腕一本分どころか、呼吸ひとつで触れる距離にある。
狭い箱の中、息がかかる距離で震えてるのがわかって、胸の奥が妙にざわつく。
怖いんか?
守りたい、って気持ちより先に、
“こんな時も俺だけ見とれ”
っていう黒い独占欲が湧くのは、もう性分や。
「怖いん?」と聞いた時、🌸の返事は小さくて、不安を隠してた。
その声が可愛くて、余計に抱き寄せてまう。
「俺の胸ん中おるのに怖いって、どないな意味なん?」
少し意地悪に言うたら、びくって肩が震えた。
その動きすら愛しい。
こんな狭い場所で、俺の腕にすっぽり収まってるのがたまらん。
暗い中でも、🌸が俺に頼って寄り添ってくるのがわかる。
そのたび、心臓の奥がジワッと熱を持つ。
……たまらんな。
不安にさせとく気はない。
けど、この距離、この状況――
正直、俺の方が限界や。
抱きしめる腕に力が入る。
逃げられへんように、って気持ちがどうしても勝つ。
「離したらへんよ。
こんなとこ閉じ込められてても関係ない。
🌸は、俺だけ見てればええ」
口から自然に出た言葉やのに、支配欲ばっかに聞こえる。
でも、それが俺や。
🌸が俺を見上げた瞬間、息が止まった。
……そんな顔すんなよ。
不安で、頼ってて、俺を信用してる目。
そんな顔見せられたら、冷静でいられるわけないやろ。
「限界なん俺だけ、か……」
そう呟いたのは本音やった。
問い詰めれば否定するのはわかってた。
けど、逃げ腰の声がまた可愛くて、意地悪したくなる。
指で顎を持ち上げる。
暗闇でも、顔の熱さが伝わる距離。
「キスしてええ?」なんて、完全に建前や。
答えなんて聞くつもりは元からない。
唇が触れる直前、どうしても言いたくなった。
「覚悟しときや。
ここ狭いし、止める奴なんかおらん。
俺、ずっと我慢してたんやから」
その瞬間、もうキスというより、欲のまま触れた。
箱の中の空気が甘く重くなる。
🌸の息も、震えも、俺の腕の中で全部感じる。
――離す気? あるわけない。
暗闇やろうが閉じ込められてようが、
この距離、この温度、この呼吸……全部俺のもんや。
そう思うほど、腕に自然と力が入る。
「……もう離れんなよ、🌸」
甘やかすとか守るとか、そんな言葉よりもっと深いところで、
俺はただ、彼女を抱きしめ続けた。