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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ワパレで怠慢聖職者×高慢悪魔パロになります
つまみ食いの唇「悪い子 もったいない 一緒に」
人間の魂を喰らわなくなってどれくらいが経っただろう。夜空の中、宙に浮かび黒い羽を羽ばたかせながら漠然と思う。
今、眼下に広がる都会の灯りの海は、眩いほどの光を放っている。悪魔という立場の自分には眩しすぎるそれに、思わず両の目を細めた。
ついこの前まで俺は、人間は愚かで下賤だと思っていた。低俗な奴らばかり。たまにいる心根の綺麗な人間に会っても、悪魔との契約の話を持ち出せば目の色変えて飛びついてくる。…どいつもこいつも私利私欲に溺れ、時には悪魔以上にろくでもない本心を晒す。
そんな連中の寿命・魂を喰うことに、俺は今まで罪悪感も躊躇いもなかった。
…だけど、今は違う。
思考の途中で、俺はぐりんと空中で体を方向転換させた。羽がばさりと、背中で大きな音を立てる。
そのまま行き慣れた街外れへと向かうと、随分と灯りの少なくなった場所にぽつりと佇む1軒の教会が視界に入った。ぐいと高度を落とし、その扉の前に降り立つ。最近頻繁に訪れるようになったこの場所は、もう自分にとって第二の棲家のようになってしまっていた。
悪魔という立場で教会に入り浸るなんて、魔界にばれたら破門ものだろうか。
まぁでもそれもいいか、なんて楽観的に考えながら、俺は外壁沿いに背伸びをした。窓から中を覗くと、もう信者たちは帰った後らしく気配もない。ただ唯一、神父だけが教会の前方にあるパイプオルガンに座り、繊細で荘厳な音色をその指から響かせていた。
まろの奏でる、この音が好き。優しく穏やかで、でもどこか艷やかな色気があって。まさに演奏者本人のようだと思いながら思わず聴き入ってしまう。
だけどそう思った次の瞬間、オルガンの音が止んだ。
まだ曲の途中だったのに…。名残り惜しく思った瞬間、鍵盤の上で指を止めたまろがこちらを向いた。ガラスの向こうの目が俺を捉えて細められる。
…どくり。
目が合っただけでうるさく弾む胸が、本当にやっかいだ。服の上からそこを抑えつけるようにして、俺はとんと軽く地面を蹴って宙に浮く。そしてそのまま、舞うようにして教会の中へと無遠慮に押し入った。
******
「何で外から覗いとったん。入ってきたら良かったのに」
寒なかった? なんて言いながら、まろは俺を教会内に招き入れる。「あーあ、やっぱり冷たなっとるやん」なんて言いながら俺の頬に触れた。掌で包み込むようにして、壊れ物みたいに扱われるのが毎度毎度くすぐったい。
「…ん?」
借りてきた猫みたいにされるがままになっていると、まろが不意に疑問形の声を漏らした。それからまじまじと俺の顔を凝視する。
「ないこ、なんか顔色悪ない?」
なんて、そんな言葉を口にした。
「そう? 最近ちゃんと食べてないからかな」
何でもないことのようにさらりと応じると、まろが眉を顰めてこちらを見下ろしてきた。視線だけを持ち上げて、言葉の先を促してくる。適当にごまかすことはできなそうで、俺は小さくため息をつきながら首を竦めた。
悪魔という立場でありながら、最近人間の魂を喰らっていない。その事実だけを軽い口調で続ける。深刻な話に取られたくなかったから冗談まじりに。
本音は、自分にとってそんなに軽い話じゃなかったのに。
今まで罪悪感も疑問も持たずに喰らっていた人間の魂。それで満腹感を得られ、自分の命も繋がれていく。それを喰らわなくなったということは、逆に自分の身を削っているようなものだった。
それでもここ最近「食事」をすることに抵抗を覚えていたのは、まろに出会ったからだ。人間の生気を吸い魂を喰らうことで、俺の命は紡がれていく。だけどその分、人間であるまろとは運命を分かつ未来へと近づいていく。人間は不老不死じゃない。生き方によっては何百年も生き永らえてしまう俺たちとは違う。
一年一年、確実に年を重ねていく人間。悪魔の俺よりも遥かに速いスピードで老いは訪れる。30年もした時に白髪で目元の皺が増えるだろうまろの隣で、俺はきっと今の姿のままだ。そして更にもうあと何十年かしたら、永遠の別れが訪れるだろう。人にとっては永いその一生の時間も、俺にとっては瞬きをするほどの一瞬でしかない。
まろがいつかいなくなる世界。そんな未来に何の意味がある。俺の命が伸びたって、その時もう愛する人はいない。それが分かっているのに、今「食事」をすることに何の意味がある。
言葉にはしなかったそんな俺の感情を、まろは一体どこまで読み取ったんだろう。俺の頬を包み込んでこちらの目を覗き込んだまま、「うーん」と苦笑いに似た笑みを浮かべてみせた。
「何となく考えとることは分かるけど…でも、ないこが喰うべきものを喰わんせいで自分の命を縮めるんは違うやろ?」
悪い子、なんてからかうように言って、俺の額に自分のそれをこつんと押し付けてくる。
「まぁでも俺もさ、『喰うもんはちゃんと喰った方がいいんちゃう?』とは思いながらも、ないこが俺以外の人間の生気を吸うってなったら、ちょっと嫌かな」
思いがけない言葉が降ってきたものだから、俺は思わず目を瞠った。額と額はくっついたままだから、もちろんまろが今どんな表情でそんな言葉を口にしているのかは見えない。
「…お前、未だに『生気を吸う』っていう行為をえろいことだって思い込んでない?」
「見たことないから知らんけど、どっちにしろないこが俺以外の人間のおかげで生き永らえるんは、なんかおもしろくないやん」
だから、と続けて、まろはそこでようやく額を離した。代わりに至近距離から俺の目を覗き込む。青く透きとおる瞳が、射抜くようにこちらをまっすぐに見つめた。
「俺の生気吸ってよ」
「…は!?」
本当に予測できない言葉ばかりをぽんぽんと放り込んでくる。…違うだろ、まろの生気を吸ってまろの寿命が縮まったら、俺達の別れはより早く訪れてしまうだろ。そんなの俺の本意じゃない。
「無理に決まってんじゃん…!」
「何で? ないこの顔色もよくなるし命も伸びるし、俺も他の人間に嫉妬せんで済むしWin-Winやん?」
「ウィンウィンの使い方間違ってるから!そういうことじゃないから! 俺はお前に死んでほしくないんだよ…! なのに寿命を縮めるようなことさせるわけないだろ!」
「大丈夫大丈夫、つまみぐい程度ならいけるって」
「お前ほんとに聖職者!? もっと真面目に生きろよ!」
こいつ、今「つまみぐい」って言った? 自分の命を軽く言うな、もったいない。そうがなるように言っても、この不真面目で怠慢な神父は「んはは」なんて楽しそうに笑うだけ。
「で、どうやったら吸えるん? 教えてよ」
あーもうっ、しつっこいな。顔を顰めて、俺は目の前の深い青色の瞳を見据え返す。
「俺が『吸う』って意識するだけで吸えるんだよ。それこそ頭とか顔面とか掴んで掌からとかさ」
「ふーん、念の問題ってわけね。媒介物は何でもいいんか」
じゃあこれでもいけるんかな、なんて言って、まろは今度はその手をこちらに伸ばした。俺の後頭部に添えられた手がぐいと引き寄せられる。
「ん…っ」
唇が重ねられ、不意打ちに驚いた隙を突いて口内に舌が差し込まれた。歯列を割ったかと思うと、尖った牙をぐるんとまろの舌がなぞる。ぞくりと快感の波が押し寄せたせいで、思わず後ろに身を引こうとした。けれど、逃げ腰のそれを許さないかのように今度は舌を絡められる。
「は………っんぅ」
息をするのも忘れそうなくらい、深く貪るようなキス。「生気を吸う」なんて余裕はあるわけがない。
それでも胸を…いや体全部を、「何か」が自分の中で駆け巡るようにして広がっていく。
あぁ多分、これが「幸せ」って感情なんだろう。…知らなかった。「生気」でなくても、悪魔の俺を満たし、生きる力を与えてくれるものがあるなんて。
「ん、いい子」
俺がキスに応じたことで、さっき揶揄するように「悪い子」と言った言葉を撤回するようにまろは笑った。離れた唇を名残惜しく思っていると、今度はぐいと肩を引かれてその広い腕に抱きしめられる。
「俺はさ、ないこ。簡単に死ぬ気がせんのよな」
自信に満ちた声で、まろは弾むような声でそう言った。…自信というか、「根拠のない自信」だ。なんの裏付けもない。…なのに、どこか信じてもいいと思わされるような声音。
「魂吸われて寿命短なっても、なんかまた増えそうな気がするもん」
んなわけあるかよ。どんなに品行方正…正しく生きたって、そんなんで人生のボーナスステージがもらえるほど命は甘くない。そんなこと分かりきっていて、まろの言葉も戯言だと知っているのに。
「だから、ずっとないこと一緒におれるよ」
それは、甘く優しい嘘。だけどそんな言葉に、俺は自分の視界がじわりと揺れるのを感じる。
泣いてるなんてばれたくなくて、ごまかすためにまろの肩に額を押し付けた。その広い背中に、ぎゅっと腕を巻き付け返して…。
#くらげの寄り道
海月 凛@夏ツ大阪二日目行くど
1,208
#桃
꒰ঌ朧懸໒꒱
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コメント
2件
いつかはお別れのときが来るのに安心させる青くんがかっこいいし、一緒にいたい気持ちで自分を犠牲に出きる桃くんもすごいなぁって思いました😭すごい素敵だけどどこかもどかしくて切ないお話でした😭😭続き来ると思ってなくて嬉しすぎました😭😭😭😭
うわあ…また好きな回だった。ないこの「食べるのやめた」って自己犠牲の方向、もう切なくて…まろが「俺の生気吸って」って軽く言うから、心臓止まるかと思ったよ(笑)でも「つまみぐい程度なら」って不真面目な聖職者っぷりが最高。キスで生気が伝わるっていう設定、えろくて優しくてずるい。最後の「ずっと一緒におれるよ」って甘い嘘、泣きそうになるの分かるよ…。あおばさんの描く世界、いつも重くてあたたかい。