テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「孫娘の婿かよ。マジで。受けんの? お前。咲坂さんどうするんだよ」
「咲坂さんって、あの【TOUTA】の彼女かい? 深山君、彼女とそういう関係だったのか?」
驚いた大山さんに、俺は苦笑を返すしかなかった。
「そういう関係ではないです。振られたというか、……振られてないというか」
「大山さん気付いてなかったんですか。こいつったらねー」
三日間だけとはいえ、咲坂さんはうちの会社にいたのだし、遠田社長から預かるに至った経緯も大山さんには話している。今はその情報に加えて、俺が告ってからの顛末を、恭平が吹き込んでしまった。
気が付けば大山さんから同情のまなざしで見つめられる始末だ。
「……振られたんだな」
「振られていません。今じゃないって言われただけです」
沈痛な面持ちで言うのはやめて欲しい。まして真面目な大山さんだ。冗談じゃなく本気で言っているのがありありと分かってなおへこむ。
「いや、でも。『待ってください』なんて、体のいい断り文句だろう。君、今まで振られたことないんだろう」
だから分からないんだな、とでも言いたげなその口調。
ああたしかにそうだ。
振ったことはあれど振られたことなんてない。
彼女の言葉が断り文句だったと言われれば、そうだったのかもしれないという気もしてくる。
……はたから見れば俺は、振られたというのに可能性にすがっているだけの阿呆にみえるんだろうか。
不安というものは黴に似ているようにも思う。
いつの間にかできていて、一度出来るとすごい勢いで広がっていく。
そもそも、待っていていいのかというところさえ揺らいできた。
「いや、大山さん。彼女だって深山のこと好きだって、絶対」
恭平はそう言うけれど、たしかにふた月の間何の連絡もないんだ。
これは彼女に俺と連絡を取る気がないってことなんじゃないか?
もしかしたらもう、新しい職場で新しい出会いがあるのかも知れない。
もし彼女が過去を忘れて生きたいと願っているなら、俺のように遠田社長とつながりのある男は選ばないだろう。
コメント
1件
うわああ深山くんの不安がひしひし伝わってくる😭💔「不安は黴に似ている」って比喩、エモすぎて泣ける……。恭平の「彼女だって深山のこと好きだって」の一言に希望持たせてもらったけど、2ヶ月音信不通は心配だよね。待つってこんなに苦しいんだなってリアルに感じた!続きが気になる〜!坂野さん素敵な物語ありがとうございます🌸
鷹槻れん

33,848
鷹槻れん

17,098
#年の差
水無月 京
84
#大人の恋
月詠 涼
1,024