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好きですと告白してから、一切口を利いてくれなくなった。陛下のツンデレは魔王時代から徹底している。両想いなのは分かっているのだから、もっと素直になればいいのに。
ただ、陛下の夜伽の相手になるというわたくしの夢は、この世界でも実現できないかもしれない。武器を持って待ち構える大勢のヤクザに対して、陛下はフルーツナイフ一本で立ち向かうそうだ。
冗談かと思ったが本気だという。いくらなんでもこの世界の人間の力を軽く見すぎだ。それか自身の能力を過信しすぎだ。
当然、前世と同様に陛下が死ぬならわたくしもその場で死ぬつもりだ。死後の世界は孤独だというが、わたくしがそばにいれば陛下も寂しくないだろう。
外で警察が張っていることは知っているだろうから、やつらが侵入に気づいても庭にいる陛下とわたくしを銃撃してくることはないはずだ。そう思っても気がつけばおっかなびっくりの足取りになっている。それに対して陛下の足取りは堂々たるもの。その自信が過信でないことを祈るだけだ。
庭も広いが屋敷も広い。都会にこんな広い家を建てるなんて、堅気の人間には絶対に無理だ。騙したり脅したりして一般人から搾り取ったお金で建てた家だと思うと正直腹も立つ――
という話を憤りながら陛下に話したら、今まで無視していたのに珍しく反応があった。
「なるほど、ヤクザはそんなに儲かるのか? 極星会はぶっつぶすつもりだったが、それなら組織は残して乗っ取る方がよさそうだ」
そうだった。この人は強さや美しさだけでなく、悪どさという点でも誰の追随も許さない大悪党だった。それからはわたくしの方が無口になり、屋敷の玄関前までたどり着いた。