テラーノベル
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*ご本人様には一切関係ございません
俺は、熱が残った手首を左手で押さえながら、カメラ前まで戻って行った。
太智「2人とも遅いねん!」
早よしろとでも言わんばかりに、手招きをしてくる。
太智「スタッフさんも、みんな待っとてんで、何サボってたんや!」
いつもの突き抜けるような甲高い声と、お調子者の笑顔。その能天気な姿を見た瞬間、俺の右手首に残っていた勇斗の手のひらの熱が、一気に冷たい現実の空気によって薄められていくような気がした。
仁「わりぃ、わりぃ」
俺はわざとらしく頭の後ろを掻きながら、自分の定位置に戻った。
柔「さっきのとこカットにしてもらったから」
俺の横に座っている柔太朗が、コソッと伝えてきた。
__本当にありがたい。
あんなシーン流されてしまったら、またさのじんが、さのじんしてるなんてファンのみんなに茶化されてしまう。
柔太朗に、感謝を伝えようと息を漏らそうとした、その瞬間
柔「あんまりイチャイチャしないでよね」
柔太朗は口元をニヤつかせながら、俺を揶揄うように、さらに声を潜めて釘を刺してきた。
仁「……っな!?はあ?!」
柔「よっしー顔真っ赤笑」
柔太朗は相当俺をいじるのが好きなのだろう、顔を真っ赤にしてたじろぐ俺を見て、子供みたいにケタケタと笑っている。
太智「吉田さんうるさい!そろそろ撮影開始すんで!!」
右奥の方から太智の声が聞こえてくる。
仁「今の俺悪くねえだろ!」
完全にとばっちりを食らった俺は、大袈裟に声を張り上げて、太智に言い返した。
太智「あー、はいはいそんなんどっちでもええねん」
早口で手をひらひらと振りながら、太智は俺の反論をバッサリと、見事なまでに一瞬であしらってみせた。
カメラマン「そろそろ撮影再開しまーす」
スタジオの少し高い位置から、カメラマンさんの声が全体に響いた。
ディレクターのカウントダウンのジェスチャーと共に、カメラの赤いランプが鮮やかに点灯する。
勇斗「それじゃあ、第3問目に移ります!!」
さっきまでとは全く違う、明るい声が、俺の隣から発せられた。
太智「あっ!これって俺らもお題とか考えていいん?」
目をキラキラと子供のように輝かせながら、勇斗の方に体を向ける太智。
__そんな顔してたら、断れるか。
勇「あーまぁいいけど、なんかお題とかあんの?」
案の定、断れなかった勇斗は太智に話を振った。
太智「えーと、じゃあ……」
太智は少し考えて、すぐにホワイトボードに書き始めた。
__まあ、太智だし大丈夫だろ。
普段からメンバー同士の絡みに人一倍興味のない太智だから、変なお題はこないだろうと俺は信用している。
太智「よし!じゃーん!!」
満面と笑みと共に、太智がホワイトボードをカメラにバッと向けた、みんなでそれに覗き込むと、書かれていたのは、
『勇斗を一言で表すと?』
勇「俺かい」
ボードを見て、すかさず勇斗が太智に突っ込んだ。
よかった、このお題ならサクッと書いて終わらせれる。
勇斗と言えば、『優しい』『真面目』『努力家』『面白い』__あいつを表す言葉なんて、わざわざ考えなくたって頭に溢れてくる。
そうやって、ホワイトボードにペンの先を当てたまま、勇斗のことをぼーっと考えていると。自分の口元が、いつの間にかだらしなく緩んでしまっていたらしい。
勇「なに仁ちゃんニヤついてんの?かわいいねえ」
隣から悪戯っぽく笑い、勇斗がひょいっと俺の顔を覗き込んできた。
勇「俺のこと考えて、笑ってたの?」
「嬉しい」なんて、ふにゃっと笑う勇斗の顔を見て、頭が真っ白になってしまった。
__じゅうたろ〜、ヘルプ……
グループで1番空気が読めて、スマートな男柔太朗に心の中でSOSを送る。頼むから助けてくれと。
柔「いい加減俺の隣でイチャつくのやめてよ〜」
呆れたように肩をすくめながら、柔太朗の声がスタジオに響き渡った。
__ほんと、柔太朗天才かよ。俺の味方はお前しかいねえよ。
心の中で柔太朗に、全力で感謝した。
今度、絶対に美味しいものでも奢ってやろ。
勇「あはは、ごめんごめん。」
柔太朗にそう指摘され、勇斗は笑いながら、ようやく俺の顔から離れた。
太智「吉田さんさっさと書いてな、あとあんただけやでー」
右の方から、容赦ない催促の声。
__えっ、嘘だろ!?
周りをキョロキョロと見渡すと、太智はもちろん、柔太朗も隣にいる舜太も書き終わり、俺が書き出すのを待っているようだった。
仁「待って!今書くから!!」
俺は焦りながらもホワイトボードにペンを強く当てて、ささっと書いた。
太智「よし!これで全員書けたな!一斉にボード上げんでー、せーのっ……」
みんなのボードを見てみると、
『真面目』全員が全く同じ文字が並んであった。
舜「嘘やろ!?みんな一緒」
柔「まあ、勇ちゃんは真面目でしょ」
舜太が「ありきたりすぎたかー」なんて、溢しながら、全員の回答をもう一度見渡した。
勇「俺そんな言うほど真面目か?」
フリップに書かれた文字を見つめながら、勇斗が照れくさそうに、どこか嬉しそうな笑顔を浮かべて首を傾げた。
太智「大真面目やわ」
太智の迷いのないそのバッサリとした言葉に、ぐぬぬとでも言うように、勇斗は口を尖らせて悔しそうにした。
__その後も撮影はしばらく続いた。
次々に色々なお題が出てきた、みんなさまざまな反応しながらも、お互いをいじり合い、いつものようにケラケラと大爆笑しながらいい雰囲気のまま最後まで撮影ができた。
ディレクター「はい!オッケーです、本日のYouTubeの収録はこれで終了です!お疲れ様でした!」というスタッフの声と共にスタジオの照明が落とされ、俺はホワイトボードを片付けながら、深く息を吐き出した。
仁「終わったー……」
なんかものすごく疲れた、今日一日で色々起きすぎな気がする。
太智「仁人お疲れさん、今日飯行くんやろ?早よ準備してな」
俺の隣を通り過ぎる際、自分の荷物をまとめた太智が、いつもの軽い口調でひらひらと手を振りながら声をかけてきた。
太智「外で待っとくわ」
そう言ってそそくさと出ていってしまった。
__あいつ、相変わらずせっかちだな。
早く行かねえと太智キレそうだな。そもそも、誘ったのは俺だし、言い出しっぺの俺が遅れるわけにはいかないので、出て行った太智に追いつくよう、急いで自分の荷物をまとめてスタジオから出た。
仁「ごめん待たせた、あれ?タクシー呼んでてくれてたのかよ」
ロータリーの街灯の下、ハザードランプを点滅させて停まっている一台のタクシー。
そのすぐ脇でスマホをいじっている太智がいた。
太智「遅いわ仁人、早よ乗りー」
太智に急かされるようにして、俺は後部座席の開いたドアへと引き寄せられる。
太智「で、どこ行くん?」
じとーっとした目で俺を見てくる太智
__そんな目で見るなよ、悪かったな。
仁「運転手さん、すみませんここまでお願いします。」
画面を運転手さんに見せると、「はい、かしこまりました」と静かに車が夜の街へと滑り出した。
太智「……いやもうさ、なんの話されるんかなんとなくわかってんねんけど」
静まり返った車内に、助手席の太智の、少しトーンを落とした低い声がぽつりと響いた。
仁「…ごめん、無理に連れてきて」
喉の奥からやっとの思いで絞り出した声は、自分でも驚くほど細く、頼りなく車内に消えていった。
太智「……別にここで深く聞くつもりないけど…」
少しため息混じりに、めんどくさそうに話す太智。タクシーの車内という空間を気遣い、ここでは深く詮索しないあいつの大人としての、気配り。
太智「……なーんか、しおらしい吉田さん見てて気味悪いからやめてーや」
ゲーッとこれ以上無いくらい嫌そうな顔をして、俺の顔を見てくる。
__……一回引っ叩いていいか?
仁「気味悪いってなんだよ笑悪かったな」
俺が少しだけいつものトーンで返すと、
太智「今日のご飯、吉田さんの奢りやで」
太智は、満足そうに口元を歪ませ、当たり前かのようにぶっ込んできた。
仁「分かってるよ、好きなもん食え」
流れていく夜の街のネオンを見つめながら、ゆっくりとタクシーに身を委ねた。
太智「……と、じんと。着いたで、起きや」
肩をトントンと優しく叩く太智の声に、俺はハッと重い瞼を持ち上げた。
いつの間にか寝ていたらしい、目的地に着いて太智に起こされた。
運転手さんに、お礼をし、お金を払って、俺たちはタクシーのドアを開けて外に出た。
仁「個室の部屋予約してあるから、太智明日仕事は?」
カバンを肩にかけ直しながら、俺は隣を歩く太智の顔を覗き込んだ。
太智「あるけど午後から、何お酒飲む?俺は全然ええけど」
太智はいつもの軽い調子でニヤッと笑うと、俺を安心させるように、ひらひらと居酒屋の暖簾をくぐった。
案内された小さな個室の引き戸を閉めると、周りの喧騒は完全にシャットアウトされ、人目を気にしなくていい、本当に静かな俺たちだけの空間が完成する。
上着を壁のフックにかけ、畳の席にどさりと腰を下ろす。
仁「何飲む?俺は、生で」
おしぼりで手を拭きながら、少し掠れた声で太智に問いかける。
太智「あ、俺も生で!あと、すみませんポテトと……」
太智が手際よく、店員さんにババッと注文を済ませてくれる。
__1分もしない間に飲み物が届いた。
店員「お待たせしましたー」
小さな引き戸がガラリと開き、店員さんの威勢のいい声と共に、結露したガラスジョッキがテーブルの上にドン、ドンッと置かれる。
太智「とりあえず乾杯しよ」
太智は自分のジョッキの取っ手をがしっと握り、俺の方へと差し出してきた。
太智の言葉に慌ててジョッキを持つ、
太智・仁「かんぱーい」
カチャンとガラスがぶつかる音が、静まり返った個室にやけに心地よく響き渡った。
翡翠
198
#snjn
のりもちさん
3,945
ゆき
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コメント
3件
語彙力皆無なんですけど、だいちゃんがだいちゃんすぎて本当に凄いです!!本当に尊敬すぎます😭✨️
このエピソード、仁人の心情の揺れがめっちゃ丁寧に描かれてて好きだわ。勇斗とのやり取りで顔赤くするとことか、完全にバレバレで笑ったw 柔太朗の「イチャイチャしないで」ってツッコミ、ナイスアシストすぎる。あと太智の空気読んだ立ち回り、車内で深掘りしない大人の対応、そこからの奢り宣言で空気戻す流れ、キャラの関係性が良く出てた。次どうなるのかすごく気になるわ。