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───とある秋の日
︎︎ ︎︎︎ ︎︎︎ ︎︎︎ ︎︎︎ ︎︎︎ ︎︎︎ ︎︎︎ ︎︎︎ ︎サビ組事務所にて───
「チッ、はぁ……」
1枚の書類を見ながら舌打ちをし苛立っているのか、頭を掻きむしるカラスバ
「カラスバ様、やはり私が行きましょうか…」
「あかん、お前やと変に目立ってまう。オレが適任や、やけど問題は……」
そう悩んでいると、エレベーターが開き事務所に「カラスバさ〜ん!!」と鈴のなるような声が響く
「パン買ってきたんで一緒に食べましょ!」
そう言ってカラスバとジプソにそれぞれパンを渡すシオン
そんなシオンを見て、カラスバは「あ」と声を上げる
「シオン、明日の夜暇か?」
「え?暇ですけどどうしました?」
「えっ、カラスバ様まさか……」
「明日の夜ちょっと付き合ってくれへん?」
「エッ?」
その言葉にシオンが驚くがそれ以上にジプソが驚きカラスバに声をかける
「カラスバ様!もしかしてと思いますが、まさか此奴と行かれるおつもりですか?」
「なんや別にええやろ」
「あの聞こえてます、というか行くってどこにですか?」
「あるパーティ会場への潜入調査や」
「ほえー…それでなぜ私?」
「…そのパーティは男女ペアが鉄則なんや」
その言葉を聞いた瞬間、少し間を置いたあとシオンは顔を少し赤くし目を輝かせカラスバへ寄る
「それで私に彼女役をと!!」
「彼女とは言っとらん、パートナーや」
「ひゃ〜!!嬉しい〜!!」
「聞いとるんかコイツ」
嬉しそうに笑うシオン
そんなシオンにツッコミつつ、立ち上がる
「ドレス買ったるさかい、今から見に行くで」
「え!?わっ、ちょ!?」
「ジプソ、車出し」
「か、かしこまりました…」
シオンの手を取り、そのまま事務所を後にする
「ひょあ〜……」
「此奴に似合いそうなん全部持ってきてや」
「かしこまりました」
煌びやかな店内にはキラキラと輝く、高そうなドレスが何着も飾られている
そんな中に慣れた手つきで定員に指示するカラスバ、そんなカラスバを見て驚きつつ色々と見て回るシオン
「お前は丈が短いのが似合うんやろうけど、パーティやからな」
「そういえば、そのパーティに行く目的はなんですか?」
「まぁ、そのパーティの裏である組織が動いとって、取引するらしいんやけどその現場抑えたらって魂胆や」
「……カラスバさんお一人で?」
「当たり前やろ」
「それなら私に任せて下さいよ、私こう見えて強いんで〜!!」
そう言ってパンチする素振りをしアピールするシオンに対し「はしゃいだら痛い目見るで」とあまりシオンの腕を信じていないカラスバ
「お客様、此方等どうでしょうか?」
「…これとかええんやないん?」
「わ、可愛い…」
「ご試着致しますか?」
「頼むわ」
「えっ?あっ、え!?」
ドレスに見とれていると、店員に捕まれそのまま試着室へと連れ去られるシオン
近くの椅子に座り、シオンが出てくるのを待つ
数分経ったあと、試着室のカーテンが開く
「ど、どうですかね……へへ……」
苦笑いしつつ、カラスバに近寄る
カラスバが選んだ服は、黒色のスレンダードレスに右足の所に少し切込みが入っている大人っぽくお洒落なデザインのものだった
正直童顔で身長も低いシオンに似合うのかと不安だったが、高めのヒールを履いているのもあるのか元々の素材がいいのか違和感がない
「(それよか…めちゃ綺麗やん…)」
「カラスバさんなんか言ってくださいよ〜!!」
「!!ま、まぁ、ええんとちゃう?」
「え!!ほんとですか!?」
カラスバの言葉に嬉しそうに笑う
そんなシオンを横目に、手で口を覆い下を俯くカラスバ
「(あかん、なんやこれ…心臓うるさ!)」
先程から心臓がドクドクと大きく脈打ち苦しい
まるでシオンに対して恋をしているかのように
「(アイツにオレが…!?)」
そう思いシオンを見る、するとシオンはカラスバの視線に気づいたのかまたニコニコと嬉しそうに笑う
その笑みがいつも以上に可愛く見えて、つい目を逸らしてしまった
そんなカラスバを不思議に思いつつ、店員に案内されるまま試着室に戻るシオン
「あれ、買いで頼むわ。あとあのヒールも」
「はい!かしこまりました!!」
店員が嬉しそうに頭を下げたあと、裏へ行く
「……はぁー………」
一旦深呼吸を挟み落ち着く
しかしすぐに先程のシオンを思い出し顔を赤らめてしまう
「ほんまなんしとんやオレ…」
「あ、あの……」
「なんや」
「流石に少しは払いますよ…」
「気にせんでええ言うとるやろ」
「う……でもブレスレットとかも…」
「オレが買いたくて買ったんや。それ以上言うたらここで下ろすで」
「ひぇ!あ、ありがとうございます!」
「それでええんや」
そう言って笑みを浮かべるカラスバ
いつものあっけらかんとした表情とは違い、少し焦ったような自信なさげな表情をしているシオンに胸がまた甘く鳴り続ける
「…お前って今年でいくつや」
「んー、18です!!」
「(ほら、やっぱ未成年やないか!!)」
シオンの歳を聞き、頭を下げ落ち込むカラスバを変に思いつつ「大丈夫ですか?」と声をかける
「大丈夫や」
「そうですか?あ、ここら辺でいいですよー!!」
「あかん、こんな真夜中何があるかわからんのやから」
そう言って車を降りて、二人でミアレシティを出る
いつもはここまで見送りしないのになと思いつつも、少し嬉しくなり笑いながらカラスバの後を歩いた
──数時間後 サビ組事務所
「ジプソ」
「はい」
「……同意の元やったら未成年との交際ってありやと思うか?」
「え!?あ、いや、まぁ同意の元なら…」
「そうか……」
そう言ってはぁとため息を着くカラスバ
そんなカラスバを見て、ジプソはカラスバに問いかける
「…何故あの女を誘ったんですか」
「…………シオンが、1番ええと思ったからや」
その言葉にジプソは目を見開く
「ですがカラスバ様、彼女は……」
「分かっとる、怪しいのは分かっとる。」
シオンがどこからどう見ても怪しいのは分かる
何も情報がないし、探っても出てこない、当の本人も『頑張って正体を調べてみてくれ』とはぐらかす始末だ
しかし時折見せるはにかんだ素の笑顔や太陽のように眩しいシオンの存在に救われていた
──恋は盲目というのかそれでもシオンへの想いを消すことが出来ない
「はぁ〜…厄介やな……」
カラスバはもう一度大きなため息をつき髪を掻きむしった