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どうだ、と言わんばかりの表情で出て行く遥香がいつも使う鏡を見ながら


「焦げてる…?燃えてる……?」


自分の髪を持ってみると


「あ……」


焦げたところから切れてしまう髪がハラハラと落ちる。

ベビーピンクの絨毯を見ると、すでにたくさんの髪が落ちていた。


「今……笑ったのか?」

「いえ、まさか…」


心の中のガッツポーズは続いているけれど、笑ってはいないはず。


「失礼します…清掃しますので」

「髪……綺麗だっただろ……」


部屋には入って来ない篤久様の前を通り過ぎようとした時、よほど焦げ臭いのか、彼は顔をしかめてそう言った。


「どうでもいいので。下でお食事をどうぞ」


私は二階の清掃道具を取りに行くと、掃除機をかける。

篤久様はもういないので、表情は気にしなくてもいい。

急いで掃除を終わらせると、自室へ入り


「写真、写真……」


フフッ……我ながら、弾んだ声が出たな。

髪を写真に撮り、手首の真っ赤な痣も写真に残す。

それから前にもらった湿布薬の残りを手首に貼ると、ワンピースを脱ぐ。


あ……音声……

ポケットから超小型高性能ボイスレコーダーを出し、立ったままタブレットを起動させ、Tシャツを被る。


データを移してから、帽子を被るとキッチンへ向かった。


「広瀬さん、すみません」

「はい……キャッ……どうしたの?」


帽子で隠せない髪を見て小さく悲鳴を上げた広瀬さんは、両手で口を押えた。


「ヘアセットの練習をされた結果がこれで……ちょっと遅くまでやってる美容室を探して行ってきます。すみませんが、あとお願いします」


いろいろと聞かれては面倒なので、私はさっさとキッチンを出ると、裏から外へ出る。

そして、駅前にある全国展開のチェーン店美容室に駆け込んだ。


「わ……ッ……これは事件ですか?私たちから通報しましょうか……?」


私と同じ年頃の美容師さんが、私の髪を見た途端にそう言う。


「いえ…そんなこともなくですね……カット、お願いします」

「カット……するしかないですけど……しかも、思いっきりショートになりますね……」


戸惑い気味の美容師さんが、そっと私の髪に触れて、焦げている箇所の長さを見ている。


「はい、いいです」

「……ハンサムショート、こんな感じ……いかがでしょうか?」


美容師さんはタブレットでハンサムショートと言った、短いヘアスタイルを見せてくれた。


「これでお願いします」

「お客様のお顔立ちははっきりとしていますし、首はスッキリ細いのでお似合いになると思います。お似合いのように仕上げます…!」


きっと訳ありの可哀そうな女が来たのだと思って、美容師さんが私を慰めるように明るく気合いを入れてカットを始める。


いいの……髪は伸びるからね。

それよりも、今日の収穫は大きい。

でも……同時に篤久様には気を付けないといけないな。

私の最終目的達成の邪魔はしないで欲しいからね。


遥香の私に対する感情は、友達との電話を聞いて分かった。


でも、篤久様の家族や私に対する感情は全く分からない。

兄妹で話すのも今日くらいしか聞いたことがないけれど、篤久様の言葉は妹に対して距離を感じる。

でも私はただの家政婦……慎重に計画を進めるべきだよね……

私は、魂が汚れたアナタの世話をする

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