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荒い呼吸が喉に引っかかる
背後から聞こえる音が、まだ耳に残っている
_ドンッ
重い足音
振り返る勇気はなかった
ただ必死に森の中を駆け抜ける
枝が顔をかすめる
足元の石につまずきそうになりながら
それでも足は止めなかった
そして視界の先に、それは現れた
古い洋館
暗い森の中に、不自然なほど大きく建っている
考える暇もなく、玄関へ駆け寄り
取っ手を掴み、思いきり引いた
_ギィ
扉を開け、 中へ転がり込むように入る
すぐに振り返り、勢い良く扉を閉めた
バンッ、と鈍い音が館の中に響く
しばらく、そのまま扉にもたれかかった
静かだ
さっきまで背後に迫っていた
あの足音は聞こえない
ゆっくりと息を吐く
助かったのかもしれない
そう思い、恐る恐る扉の取っ手を引いた
開かない
押したり引いたりしても
、、、開かない
「、、、」
閉じ込められた
館の中は薄暗い 長い廊下が奥まで続き
赤い絨毯が敷かれている
壁には古い絵画
見られているようで、少し落ち着かない
_ポーン
廊下の奥から微かに聞こえてきた
ピアノの音だろうか
たった一音だけ
思わず顔を上げる
人がいるのかもしれない、と
静まり返った館の中で、
その音だけが不思議とはっきり聞こえた
足音を忍ばせながら廊下を進む
音は階段を登った先の
すぐ近くの部屋から聞こえていた
扉が少しだけ開いている
隙間からそっと中を覗いた
そこには古いピアノがあり、
その前に一人の青年が座っていた
緑色のパーカー
背中を丸めて、静かに鍵盤を触っている
ポーン
また一音
今度は短い旋律になりかけて
途中で止まった
その時
青年の手が止まる
ゆっくり振り返った
目が合う
少し驚いたように目を丸くして
それから口を開いた
「、、、エト」
「いらっしゃい、、、」