テラーノベル
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「らっだぁそれ持ってきてー。たぶんその段ボールまだ入ると思う。」
「こっちもういっぱいだけどどうする?」
「じゃあコンちゃんそれ持ってっといて。俺も後から行く。」
「はいはーい。じゃあらっだぁもそれ置いたら一緒に来てー。」
「んー。」
「こっち全部終わったでー。」
「おっけー。きょーさん次こっちお願い。」
「了解ー。そろそろトラック来ると思うから気持ち早めでな。」
「わかった。こっちももうすぐ終わりそうだよ。」
ふたりで過ごしていた4日分の部屋が、みるみるうちに片付けられていく。
やっぱり手伝ってもらったほうが早いな。
一回きょーさん達が来る前にひとりで始めようとしてらっだぁに止められたし。
そう言うらっだぁはひとりで黙々と作業している。偉い。
これから新しい場所に向かう。
ふたりで。
それが今、俺にとっていちばんわくわくしていることだ。
たぶんきょーさん達も着いてきてくれるんだろうな。
それも含めて、この時間が嬉しかった。
「レウさーん、新しいベッドあっちに置くんやろ?今のやつどうする?」
「うーん…今のやつもとっときたいなぁ。新しいやつはあっちに送ったし、解体しても平気。」
「わかった。じゃあ俺先に解体作業移っとくわ。」
「はーい、ありがとー。」
そろそろこの部屋ともお別れか。
惜しいとも思いつつ、さくさくと旅立つ準備を進めていく。
大丈夫、これからもみんなと一緒にいられるはずだから。
失くすことなんかないから。
「レウさーん、トラック着いたよー。」
コンちゃんの声で俺ははっとする。
久々の単純作業でつい没頭してしまった。
「はーい、今そっち行くね。」
返事をして、作業の手を止めて立ち上がる。
ふと見渡せば、つい昨日まで暮らしていたはずの部屋が、飽きるほど静観した景色になっている。
「…お別れかぁ。」
誰にともなくそう呟いて、俺はその場を後にした。
心残りはない。
もう、何千回と繰り返してきたことだ。
ドサッ
最後の段ボールをトラックに載せる。
「よっしゃ終わったぁ〜!」
「意外と早く終わって良かったわ…」
「まあ今度はあの段ボールの山を解体しないといけないんだけどね。」
「コンちゃん厳しい…」
何か大きなことをやり終えた達成感と、きょーさんとコンちゃんに手伝ってもらえた嬉しさ。
そして、これから新しい向かう不安と期待。
「やっぱ誰かと一緒にいるのって楽しいなぁ。」
「わかる。」
「だよね〜。」
きっと、らっだぁも。
「明日から新しい家だよ、らっだぁ。」
「…楽しみ。」
「良かったなぁらっだぁ、これで綺麗な家に住めるで。」
「今までのレウさんの部屋だったらホコリすごくて居づらかっただろうし…」
「なんでやっと一仕事終えたあとにそんなこと言うの…」
これからも、みんなと一緒にいられたらいいな。
「…ん? あれ誰?」
ふとコンちゃんの背後に目を向けると、白い人影が見えた。
「え、…あっ。」
「…やべ、」
何故か固まるきょーさん達。
「…遅イ。」
白いぶかぶかの服を着て、大きな緑の帽子を被った少年が、こちらを見ていた。
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