テラーノベル
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「ねぇ、中也。」
「私と今日も自殺ごっこをやってみないかい?」
それは雲一つない快晴の日だった。
太宰からの嫌がらせと称し、毎日と言っていいほど行われた遊戯。
そして、今日もそれをしようという話であった。
少し前から、太宰とは顔を合わせる機会がなくなってしまった。
とてもとても忙しかったからである。
大きい仕事が立て続けに重なり、いつしか中也の大きな木製の机には沢山の資料が重なっていた。
首領である太宰が仕事をしないのだとしたら、残った方法は一つだけ。
中也が全ての仕事をやる。である。
その為、日に日に机の上の灰皿にのる吸殻が増え、飲むコーヒーも量が多くなっていた。
部下は心配するが、なんの問題もないと返し仕事を続けた。
探偵社、組合など新たなる組織がのし上がってくる中、一体太宰はいつになったら仕事をしてくれるだろうか。
そう考えてるうちに大きな仕事が片付いた。
そして太宰からの嫌がらせを今日、受けることになったのである。
階段を駆け上がっていく。
太宰は屋上に向かっていった。
今日の遊戯が何なのか分かってしまった。
「今日は、飛び降りだ。」
待ってくれ。
そう言いたくても声が出なかった。
あの日。
太宰が飛び降りたあの日の記憶が頭をぐるぐると回っている。
ぐしゃりと何かがひしゃげた音。
その瞬間、飛び散る赤色のおどろおどろしい血。
真っ赤に染まったストールに、黒い髪が沈んでいく。
『…ッ、何で、飛び降りなんだ?』
『今日は、川でいいじゃねェか。。』
「川、ね。」
それじゃあ駄目とでも言うような表情で中也を
見つめた。
でも中也は飛び降りだけは嫌であった。
あの時、あの瞬間。
太宰が死んだ。
というよりも、
彼奴は俺を置いていった。
と思ってしまったのだから。
もう二度と、置いていかれたくなかった。
温もりも感じない氷のように凍てついた手は、自分にとってはどこか暖かくて、大切であったから。
立場が変わった時でも、置いていかれたと錯覚してしまって。
辛いやら悲しいやら。怒りや嬉しいやら。
いろんな感情が芽生えては消えていって。
視界がチカチカと音を立てて。
「此処から落ちたら死ぬだろうね。」
『あぁ。そうだろうな。』
突如、フェンスの外側に太宰が立った。
『手前ッ!!馬鹿な真似は止せよ、』
風が気持ちいね。
雲一つない快晴で綺麗だね。
意味もない言葉ばかり言い始めた。
それは、もう、終わりを告げていた。
きっと今日。いやまた。太宰は此処から飛び降りるつもりだ。
そしたら、また俺は………
気付けば、暗くなり始め、薄暗いグラデーションを描き始めていた空は、何とも美しいものであった。
先程からずっと。中也も太宰も動かなかった。
黙って空を見上げていた。
『遊戯やろうぜ。』
太宰は一瞬だけ驚愕した表情を見せて、元の冷たい表情へと戻った。
もう二度と、孤独を味わいたくなかった。
1人で生きるくらいなら2人で死にたい。と。
地上すら薄らとしか見えない。
フェンスの外側は一歩踏み出せば空の彼方へ行けるだろう。
風が強く吹く。
月光が二人を照らす。
最期にしては存外儚いものだろう。
「異能を使うかい?そしたら君の負けだけど、」
黙って太宰の手を握り、これ程にない意思表示をした。
もう、何もかも終わりだ。
この世にさよならを告げる前に。
「それじゃあ、また。」
それは、とてもとても辺りが暗くなった頃でした。
ぐしゃりと何かがひしゃげた音が辺りに響きました。
地は一瞬にして赤く染まっていきました。
やがて、人が集まり始め、懸命に蘇生をしました。
けれども、息を吹き返すことはありませんでした。
赤褐色に近い色の毛髪が血へと沈んでいきます。
顔には深い隈が刻まれています。
血に染まったストールは、少し千切れています。
それは、とてもとても美しい姿に見えました。
何処か、安心しきったような姿に。
もうすぐ死ぬ。
目を瞑る。
握っている手の感触が薄れていく。
意識が途切れる直前。
青鯖みたいな彼奴。
包帯を巻いた鬱陶しい。
相棒。
彼の麗しい声が聴こえたような気がした。
「お疲れ様、中也。」
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次の日曜日で最後です。
ラストまで愛読お願いします。
#beast
空欄ノ凪。
1,138
磁石°🎧
127
#太宰治
みみゃsama
53
コメント
1件
第7話、読み終わりました……。中也があれだけ嫌がっていた飛び降りを自ら選ぶ決断、「もう二度と孤独を味わいたくなかった」という一言に全部の感情が詰まってて、胸が締め付けられました。ラストの「お疲れ様、中也」、あれが幻聴じゃなくて本当に届いた言葉だと思いたい。美しすぎて苦しいです。次週が最終回とのこと、覚悟して待ってます。