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あの時の義勇さんの、耳までほんのり赤くなった顔――思い出すだけで楽しくて仕方ない。 あれほど無表情を崩さない彼を、少し揺らせたのだから、これはもう「成果」と言っていいでしょう。
だから今日も、ちょっとだけ意地悪をしに来ました。
蝶屋敷の廊下を抜け、彼が縁側で日向ぼっこをしているのを発見。
「義勇さ〜ん」
わざと軽い調子で近づき、彼の横に腰を下ろす。
風が頬を撫で、縁側の木がほのかに温まっている。
「昨日のあれ、照れてましたよね?」
ふふっと笑いながら、彼の肩を軽くつつく。
……返事がない。視線は庭の方へ。
無視ですか? じゃあ、こうしましょう。
私は彼の腕にそっと自分の腕を絡め、わざと距離を詰めて上目遣いを送った。
「ほら、そんな顔してたら……私、また好きになっちゃいますよ?」
……まただ。
昨日に続き、距離を詰め、挑発するような視線。
このまま流せばいいのだが――昨日の俺は防戦一方だった。
なら、今日は――攻める。
「……しのぶ」
名を呼ぶと、彼女の眉が僅かに動く。
そのまま腕を引き寄せ、腰ごと抱き込むようにして膝の上へ。
「えっ、ちょっ、義勇さん!?」
驚いた声。
しかし逃がす気はない。背中に腕を回し、顔を近づける。
彼女の睫毛が小さく震え、息が浅くなるのがわかった。
な、なにこれ……反撃!?
突然膝の上に座らされ、抱きしめられるなんて想定外すぎます。
顔が近い、息がかかる――やだ、心臓の音が聞こえてしまいそう。
「な、なにを……」
言いかけた瞬間、彼の手が私の頬をそっと包む。
そのまま額が触れる距離で、低い声が響いた。
「……お前にだけは、笑われてもいい」
――だめ。そんなこと言われたら。
顔が熱くて、まともに目が合わせられない。
しのぶの頬がみるみる紅潮していく。
昨日の俺はただ翻弄されたが、今日は違う。
彼女の耳元に口を寄せ、囁く。
「……だから、もうからかうな」
小さく息を呑む音。
そのまま唇を軽く触れさせるだけのキスを何度も、何度も繰り返す。
彼女の肩から力が抜け、胸元に手を置く感触が伝わった。
……やられました。
こんなに甘く、優しく、それでいて逃げられない抱擁なんて。
からかうつもりで来たはずなのに、完全に私の方が押されている。
「……もう、反撃なんてずるいです」
そう言っても、義勇さんは表情を崩さず、でもどこか優しい目をして――また一度、唇を重ねた。
※本来1話完結型だったけど、続編です!紛らわしくてすいません💦
🦋→🌊→🦋→🌊→🦋の視点で書いてます