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──すかー視点──
朝の静けさがほんの少し戻ったかと思った瞬間だった。
ネグとマモン、だぁの服をぶかぶかに着たその二人を目にした時、昨日のことがふつふつと蘇ってきた。
「おい、ネグ……マモン……」
声が自然と低くなる。
だぁの影響なのか、心底怒っている時は声のトーンが無意識に落ちる癖がついているらしい。
「何やってんだよ……昨日のこと、まだ忘れてねぇぞ。どんだけ俺たち巻き込んだと思ってんだよ!」
怒鳴りつけた瞬間、ネグとマモンがピタリと止まる。
だけどその顔は、反省よりも――何か考え込んでいるような顔。
(まさか、これで怯えるとか、そういう……?)
そんな考えが頭をよぎったその時、ネグがふとこちらに歩み寄ってきた。
マモンも後ろからついてくる。
ネグが柔らかい声で言う。
「……すかー、しゃがんで?」
「は?」
あまりにも意外な言葉に、すかーは眉をひそめた。
「いいから、しゃがんで?」
(……ったく。どうせまた何かくだらないことするんだろ?)
そんなふうに思いながらも、深いため息をつき、仕方なくしゃがんだ。
「ほら、これで……」
次の瞬間だった。
頬に、ふわりと。
ネグの唇が触れた。
「──ッ」
呼吸が止まった気がした。
続けて、マモンまでも。
「昨日は、ごめんなさい……」
その声と共に、もう一度。
二人から交互に、何度も頬へキスされる。
(おいおい、うそ、だろ……?)
目の前が真っ白になる感覚。
顔が熱い。心臓が、壊れそうなくらいバクバクと鳴る。
(無理無理無理無理無理無理……っ!)
だけど、二人はまだ終わらない。
ふわりと耳元に顔を寄せてきたかと思ったその瞬間――
「ざぁこ♡」
ネグの甘ったるい声。
「ざぁこ♡」
マモンまでも。
それを言い終わると、二人はニヤッと同じタイミングで笑い、すぐさま距離を取るように逃げていった。
──その間、すかーは完全に思考が停止していた。
(……な、なんだよ、あいつら……)
やっとのことで立ち上がり、頭を軽く振った。
「はぁ……」
深いため息をひとつ。
頭の中では言葉にならない叫びがひたすらこだましていた。
(……ああもう!どうすりゃいいんだよ、マジで……)
(かわいすぎるだろ!怒れるか、こんなん!!)
顔は熱いまま。
だけど今さら追いかける気力もなく、すかーはただ手で顔を覆って、その場でしばらく黙り込んでいた。
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