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「歯が抜けたよ!」の特報は、やっぱりふみや叔父さんへ
 
 
 ぽろっと歯が抜けた、その日の夜。
 
 
 
 
 
 「……さて、じゃあ誰にいちばん最初に報告する〜?」
 
 
 
 
 
 歯を包んだティッシュを丁寧に見つめながら、颯斗がにこにこしながら聞いた。
 
 
 
 
 
 「ふみやくんでしょ!!!」
 
 
 娘は即答だった。顔をぱぁっと輝かせて、まるで“わかりきってるでしょ”って顔。
 
 
 
 
 
 「だよなぁ〜」
 
 
 
 
 
 颯斗も笑いながらママと顔を見合わせる。
どうやら娘の中では、ふみやはもう「なんでも真っ先に教えたい人」ポジションらしい。
 
 
 
 
 
 
 
 ママがスマホを手に取り、「今なら出るかも」とLINE通話をぽちり。
数コールで画面にふみやの顔が映る。
 
 
 
 
 
 「お〜!どうしたの?今ね、ちょうどご飯食べ終わったとこ〜……って、あれ?なんかあるな?」
 
 
 
 
 娘がスマホを握りしめて、どんっと画面に顔を近づけた。
 
 
 
 
 
 「ふみやく〜〜〜ん!歯が!ぬけたの!!!」
 
 
 
 
 
 
 ふみやの目が見開かれる。
 
 
 
 
 「え、え!?まじ!?本当に!?どこどこ、見せて〜〜〜!」
 
 
 
 
 
 娘が口をあけて、下の歯がぽっかり空いてるのをドヤ顔で披露。
 
 
 
 
 
 
 「うわ〜〜!!ほんとだ!すごいすごいすごい!大人の歯が来るじゃん!うわ〜〜俺にまで報告してくれるの!?嬉しすぎる〜!!」
 
 
 
 
 
 
 画面の向こうのふみやが、身を乗り出すようにして喜んでいる。
 
 
 
 
 
 
 「ねぇふみやくん、抜けた歯、お空に投げたんだよ?」
 
 「えー!なにそれ、ロマンチックじゃん〜〜!!写真撮ってないの!?俺それ見たかったよぉ〜!」
 
 「ふふ、投げるときめちゃくちゃ気合入れてたもんね?」とママ。
 
 
 
 「うん!!ママがせーの!って言って、パパが高く高く投げたの!」
 
 「え、ちょっと待って待って、はやちんが?投げたの?」
 
 
 
 
 
 画面に映ったふみやが笑いをこらえる。
 
 
 
 
 
 
 
 「……え、俺に投げさせてくれればよかったのに〜、何で呼んでくれなかったの〜?」
 
 「ふふふ、じゃあ次の歯のときはお願いするね」
 
 
 
 
 
 
 ママがそう言うと、ふみやは嬉しそうに頷いた。
 
 
 
 
 
 
 
 「ぜっったい呼んでね。俺も空に向かって全力で投げるから。マジで」
 
 
 
 
 
 
 そして最後、娘はにっこりと笑って、スマホのカメラに向かって小さく手を振る。
 
 
 
 
 
 
 「ふみやくん、またすぐ会いにきてね〜〜!」
 
 「うん!行く行く!今週末とか、家行ってもいい?」
 
 「やったーーー!!!」
 
 「……って、パパがいいって言ったらね」
 
 
 
 ママがちょこんと釘を刺すと、
 
 
 
 
 
 
 「え、いや、俺はもうずっとウェルカムですけど!?」と颯斗。
 
 
 
 
 
 
 
 ふみやが「それな」と笑い、3人の画面越しの会話は、あたたかい夜の光に包まれていった。