コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「歯が抜けたよ!」の特報は、やっぱりふみや叔父さんへ
ぽろっと歯が抜けた、その日の夜。
「……さて、じゃあ誰にいちばん最初に報告する〜?」
歯を包んだティッシュを丁寧に見つめながら、颯斗がにこにこしながら聞いた。
「ふみやくんでしょ!!!」
娘は即答だった。顔をぱぁっと輝かせて、まるで“わかりきってるでしょ”って顔。
「だよなぁ〜」
颯斗も笑いながらママと顔を見合わせる。
どうやら娘の中では、ふみやはもう「なんでも真っ先に教えたい人」ポジションらしい。
ママがスマホを手に取り、「今なら出るかも」とLINE通話をぽちり。
数コールで画面にふみやの顔が映る。
「お〜!どうしたの?今ね、ちょうどご飯食べ終わったとこ〜……って、あれ?なんかあるな?」
娘がスマホを握りしめて、どんっと画面に顔を近づけた。
「ふみやく〜〜〜ん!歯が!ぬけたの!!!」
ふみやの目が見開かれる。
「え、え!?まじ!?本当に!?どこどこ、見せて〜〜〜!」
娘が口をあけて、下の歯がぽっかり空いてるのをドヤ顔で披露。
「うわ〜〜!!ほんとだ!すごいすごいすごい!大人の歯が来るじゃん!うわ〜〜俺にまで報告してくれるの!?嬉しすぎる〜!!」
画面の向こうのふみやが、身を乗り出すようにして喜んでいる。
「ねぇふみやくん、抜けた歯、お空に投げたんだよ?」
「えー!なにそれ、ロマンチックじゃん〜〜!!写真撮ってないの!?俺それ見たかったよぉ〜!」
「ふふ、投げるときめちゃくちゃ気合入れてたもんね?」とママ。
「うん!!ママがせーの!って言って、パパが高く高く投げたの!」
「え、ちょっと待って待って、はやちんが?投げたの?」
画面に映ったふみやが笑いをこらえる。
「……え、俺に投げさせてくれればよかったのに〜、何で呼んでくれなかったの〜?」
「ふふふ、じゃあ次の歯のときはお願いするね」
ママがそう言うと、ふみやは嬉しそうに頷いた。
「ぜっったい呼んでね。俺も空に向かって全力で投げるから。マジで」
そして最後、娘はにっこりと笑って、スマホのカメラに向かって小さく手を振る。
「ふみやくん、またすぐ会いにきてね〜〜!」
「うん!行く行く!今週末とか、家行ってもいい?」
「やったーーー!!!」
「……って、パパがいいって言ったらね」
ママがちょこんと釘を刺すと、
「え、いや、俺はもうずっとウェルカムですけど!?」と颯斗。
ふみやが「それな」と笑い、3人の画面越しの会話は、あたたかい夜の光に包まれていった。