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次の日の夜。
目黒は冷蔵庫の前に立っていた。
手には、小さな皿。
その上には。
ちょうどいい大きさに切った蒸かし芋が並んでいる。
少し考えてから、メモを一枚添えた。
『クッキー、ココ、モカへ。みんなで食べてね。目黒』
冷蔵庫の中へ入れる。
扉を閉めたところで後ろから阿部の声がした。
「何してるの?」
目黒が振り返る。
「お供え」
「また?」
「うん」
阿部は冷蔵庫を見る。
「誰に?」
「内緒」
「なんで?」
「そのうち分かるよ」
阿部が怪訝そうに目を細めた。
「怪しい」
「怪しくないよ」
「絶対怪しい」
目黒は笑うだけで答えなかった。
まだ、映画のことは言わない。
昨日ココとモカに出会って、その場で映画制作をお願いした。
脚本はこれから。
どうせならちゃんと考えたい。
そう思っていた。
眠りについたあと。
目黒が目を開ける。
最初に聞こえたのは話し声だった。
「この子は現実行けそう」
「でも仕事どうする?」
「研修からじゃない?」
「家賃は?」
「魔王はそればっかり」
目黒がそちらを見る。
天使と魔王が。
昨日使っていた大量の書類をテーブルいっぱいに広げて、真剣に会議をしていた。
「……まだやってるの?」
天使が顔を上げる。
「あ、目黒くん」
魔王も手を振る。
「昨日の続き」
「全員分?」
「うん」
「結構いたよね」
「いた」
天使は履歴書へ何かを書き込みながら答える。
「現実に行きたいだけじゃだめだから」
「仕事できるか」
「人間の世界で問題起こさないか」
「住む場所どうするか」
「結構確認することある」
目黒が感心する。
「ちゃんとしてるね」
魔王が。
「俺もちゃんとやってるよ」
と口を尖らせる。
#❤️💙
みら

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kaede🍁
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#💛💜
みら

5,580
天使がすぐ返す。
「家賃欄しか見てないけどね」
「大事」
「はいはい」
目黒は笑った。
その時。
少し離れたところから聞き覚えのある声がする。
「おいもぉ」
「おいしいねぇ」
「もっとあるぅ?」
目黒が振り返る。
そこには三匹のチワワ。
クリーム色のクッキー。
白いココ。
チョコタンのモカ。
三匹並んで仲良く蒸かし芋を食べていた。
「来てたんだ」
目黒が近付く。
クッキーが顔を上げる。
「目黒くん」
「おいもありがとう」
ココも。
「甘いねぇ」
モカも。
「おいしいよぉ」
三匹ともものすごく満足そうだった。
「よかった」
目黒が座る。
すると、クッキーがぺろっと口の周りを舐めた。
「映画ぁ」
目黒の表情が変わる。
「うん」
ココがしっぽを振る。
「考えよぉ」
モカも。
「脚本作ろぉ」
三匹が一気に目黒の周りへ集まる。
目黒は何となく、昨夜よりも緊張した。
そこから脚本会議が始まった。
「最初はぁ」
「やっぱり出会わないとねぇ」
ココが言う。
クッキーがすぐ頷く。
「そうだねぇ」
「最初から好きじゃだめぇ」
モカが続ける。
「少しずつ好きになるのがいいよぉ」
目黒が三匹を見る。
「詳しいね」
クッキーが胸を張る。
「恋のお話好きぃ」
ココも。
「きゅんってするの好きぃ」
モカも。
「泣くのもいるよねぇ」
「いるぅ」
「ちょっと泣いた方がいいよぉ」
「最後幸せならぁ」
「うんうん」
目黒はしばらく黙って三匹を見る。
完全に。
恋バナをしている女の子たちだった。
「ねえ」
「なぁに?」
「俺、必要?」
三匹が同時に。
「必要ぉ」
と答える。
「主演でしょぉ」
「目黒くんがやりたい映画でしょぉ」
「いっぱいキスするんでしょぉ」
「そこ大声で言わなくていいよ」
天使が遠くのテーブルから吹き出した。
魔王も書類を持ったまま笑っている。
目黒は少しだけ耳を赤くしながら脚本へ視線を戻した。
そこからはかなり真面目だった。
出会い。
距離が近付くきっかけ。
二人が惹かれる理由。
離れなければならなくなる理由。
もう一度出会う意味。
何度も三匹と目黒で話し合う。
「ここぉ」
クッキーが言う。
「もうちょっと寂しい方がいいぃ」
「でも寂しすぎるとあべちゃん嫌がらない?」
「まま、泣くかなぁ」
「泣くかも」
「じゃあ目黒くんも泣けばいいよぉ」
「俺も?」
「一緒なら大丈夫ぅ」
「そういう問題?」
ココが紙の上へ小さな肉球を乗せる。
「ここはぁ」
「すぐ戻っちゃだめだと思う」
モカも頷く。
「ちゃんと時間たった方がぁ」
「会った時きゅんってするよぉ」
「なるほど」
気づけば。
目黒もかなり本気で話し合っていた。
途中、蒸かし芋を食べ。
また話す。
クッキーが。
「キス少なくない?」
と言えば。
目黒が。
「俺もそう思う」
と答える。
ココが。
「ここにも入れよぉ」
モカが。
「ここもできるよぉ」
目黒が。
「いいね」
と頷く。
天使が遠くから。
「強欲」
と呟いた。
でも、誰も気にしなかった。
どれくらい経ったのか。
夢の中では分からない。
気づけば、かなりしっかりした脚本が出来上がっていた。
紙の束。
表紙まである。
ココとモカが満足そうに並んで眺めている。
「できたぁ」
「映画になるよぉ」
クッキーも嬉しそうにしっぽを振る。
「まま、喜ぶかなぁ」
目黒は完成した脚本を見る。
「……喜ぶのかな」
どちらかというと。
最初は怒る気がする。
恥ずかしい。
無理。
聞いてない。
多分、全部言う。
でも、脚本そのものはちゃんと作った。
目黒の願望だけを詰めたわけではない。
二人が演じる意味がある話になった。
と、少なくとも目黒と三匹は思っている。
「じゃあ」
天使がいつの間にか近くまで来ていた。
「本人呼ぶ?」
目黒が顔を上げる。
「今?」
「今」
「心の準備が」
「昨日からしてたでしょ」
「でも」
魔王も書類から顔を上げる。
「呼んじゃえば?」
「軽いなあ」
天使はもう聞いていなかった。
ぱちん。
指を鳴らす。
次の瞬間。
少し離れたところに人影が現れた。
「……ん」
阿部だった。
寝起きのようにぼんやり目を開ける。
「……ここどこ?」
そして。
目黒を見つける。
「めめ?」
「おはよう」
「おはよう……?」
まだ状況が分かっていない。
そんな阿部へ三匹が気づいた。
クッキーの耳がぴん、と立つ。
「ままぁ!」
阿部がはっとする。
「クッキー?」
クッキーが走る。
本人なりには走っている。
かなり遅い。
その横をココとモカが追い抜いた。
「わぁ」
「ままぁ?」
「クッキーちゃんのままぁ」
「会いたかったぁ」
「ちょ、待って」
阿部の足元へ三匹が一斉に集まる。
クッキーは抱っこしてほしそうに前足を上げる。
ココは阿部の足へ体を擦りつける。
モカはその場でしっぽを振り続ける。
阿部は完全に囲まれた。
「え、待って」
「増えてる」
目黒が笑う。
「白い子がココ」
「こっちがモカ」
「昨日会った」
阿部が目黒を見る。
「昨日?」
「うん」
「俺知らない」
「言ってないから」
「なんで?」
目黒は少しだけ目を逸らした。
「これ」
完成した脚本を阿部へ差し出す。
「何?」
「映画の脚本」
阿部が止まる。
「……映画?」
「うん」
嫌な予感が顔に出ていた。
阿部はゆっくり受け取る。
「誰が出るの?」
「俺とあべちゃん」
「……」
阿部が無言で目黒を見る。
「めめ」
「うん」
「まさか」
目黒は答えず笑うだけ。
阿部はさらに嫌な予感を強めながら表紙を開いた。
読み始める。
全員がその反応を見守る。
阿部の表情が少しずつ変わっていく。
最初は怪訝そう。
少しして真剣。
次にほんの少し照れる。
さらに読む。
「……」
目黒は何も言わず待つ。
阿部がページをめくる。
止まる。
まためくる。
時々、目黒を見る。
また読む。
そして、途中で。
「……多くない?」
目黒は何が、とは聞かなかった。
「映画だから」
「答えになってない」
天使が後ろで笑う。
阿部はさらに読み進める。
「これ誰が考えたの?」
目黒が三匹を見る。
「みんなで」
阿部も三匹を見る。
クッキー。
ココ。
モカ。
三匹とも。
ものすごく期待した目で見上げている。
阿部は最後まで読み終えると、脚本を閉じた。
そして、かなり長い間黙った。
目黒が少しだけ不安になる。
「どう?」
「……ちゃんとしてる」
「でしょ?」
「思ってたより」
「うん」
「ちゃんと映画になってる」
ココとモカのしっぽが一気に揺れる。
「やったぁ」
「褒められたぁ」
阿部は脚本を見る。
もう一度、目黒を見る。
「でも」
目黒が少し身構える。
「俺がやるの?」
「できれば」
「……」
阿部はまた脚本を見る。
明らかに迷っていた。
クッキーがその空気を察したのか、トボトボと阿部の前まで来る。
そして、見上げる。
大きな目。
耳が少し下がる。
口元もどこか寂しそう。
チワワ特有の、ものすごくかわいそうに見える顔。
「ままぁ、演じてくれないのぉ?」
阿部が固まる。
「……」
その左右にココとモカが並んだ。
そして、二匹も同じ顔をした。
「やってくれないのぉ?」
「映画作りたいなぁ」
三匹。
全員うるうるした目。
阿部は目を逸らす。
少しして、また見る。
まだ、同じ顔。
「……ずるい」
目黒が小さく笑う。
「何が?」
「めめ、これ狙ったでしょ」
「狙ってないよ」
クッキーが、もう一度。
「ままぁ」
と呼ぶ。
阿部はしばらく耐えた。
でも、無理だった。
深く息を吐く。
「……分かった」
目黒が少し目を見開く。
「ほんと?」
阿部は三匹を見る。
そしてしゃがむ。
クッキーの頭。
ココの頭。
モカの頭。
順番に撫でる。
「みんなで」
三匹が一斉に阿部を見る。
「映画作り、頑張ろうね」
一瞬、静かになる。
次の瞬間。
三匹のしっぽがものすごい勢いで揺れた。
「やったぁ!」
「まま出るぅ!」
「映画ぁ!」
三匹が阿部へ群がる。
「ちょ、待って」
阿部が笑いながら。
三匹を順番に抱き上げる。
目黒は、その様子を見ながら少しだけ笑った。
眠る前。
叶うのは難しいと思っていた。
『二人でキスシーンがたくさんある映画に出たい』
それが、まさか。
チワワ三匹と天使と魔王の協力で。
本当に動き始めるとは思わなかった。
そして。
何より。
阿部が、自分からやると言ってくれた。
目黒は満足そうに完成した脚本を手に取った。
「じゃあ」
阿部が嫌な予感のする顔で振り返る。
「何?」
目黒は笑った。
「撮影、楽しみだね」
阿部は三匹を抱いたまま、少しだけ顔を赤くした。
「……脚本通りだからね」
「うん」
「勝手に増やさないでよ」
「分かった」
「絶対ね」
「うん」
クッキーが阿部の腕の中から目黒を見る。
「増やしたいのぉ?」
目黒が答える前に。
阿部が。
「クッキー!」
と声を上げた。
天使と魔王の笑い声が夢の中に響いた。
コメント
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どのシリーズも大好きです、3匹のチワワにウルウルのおめめで見られたら断れないよ💚ちゃんは、どんな映画になるのか、メンバー全員で鑑賞会する時の反応も楽しみ(/・ω・)/

だ〜い好き💖 読んでいてニヤニヤ😁が止まりません。 3匹のわんこ色んな意味で凄い👍 🖤の希望に満ちた映画 照れながら期待に応えようとする💚 どんな内容かな楽しみしかない🥰 続き待ってます♪
私も魔王マンションに住みたい🥺 1つの映画で何回キスするのか楽しみです😋