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第一話:森のうわさ
ミオが「笑いの森」の話を初めて聞いたのは、夏休みの終わりの図書室だった。
古い郷土の本の端に、小さな手書きのメモが挟まっていた。
「森に入ると笑いが止まらなくなる」
最初は誰かのいたずらだと思った。けれど、その日の帰り道、幼なじみのタクミが同じ話をしたのだ。
「兄ちゃんがさ、あの森に入ってからずっと笑ってたんだって」
ミオは立ち止まる。
「本当に?」
「うん。なんか“草が動く”とか言ってた」
夕方の空はオレンジ色で、遠くに見える小さな森の影が少しだけ不気味に見えた。
そのとき、ミオの胸に小さな好奇心が芽生えた。
「行ってみる?」
タクミは少し驚いた顔をして、それから笑った。
「いいね。明日行こう」
そして翌日、二人は森の入り口に立っていた。
森の中は静かで、普通の森と変わらないように見える。
虫の声と風の音だけが聞こえる。
ミオが一歩踏み出す。
その瞬間だった。
足首にふわっとした感触が触れる。
「ひゃっ!」
思わず笑い声が漏れる。
「なにこれ…」
草が風もないのに揺れていた。
タクミも一歩踏み出すと同じように笑い出した。
森の奥から、小さな光が浮かび上がる。
冒険が始まった。
第二話:妖精ポポのお願い
光の正体は、小さな羽を持つ妖精だった。
「こんにちは!」
元気な声だった。
「ぼくはポポ!この森の妖精だよ!」
ポポは空中をくるくる回る。
そのたびに空気がふわっと揺れて、ミオの頬に柔らかい風が当たる。
「くすぐったい…」
ポポは少し困った顔になる。
「実はね、この森は“笑いの力”で元気になるんだ。でも最近、泉が弱ってて…」
森の奥にある「ティクルの泉」が止まりかけているという。
「泉が止まると森は普通の森になっちゃうんだ」
ミオはポポを見る。
「どうすればいいの?」
ポポは指を森の奥へ向ける。
「泉まで来てほしい!」
タクミは肩をすくめた。
「面白そうじゃん。行こう」
三人の小さな冒険が始まった。
第三話:風の草原
森を進むと、白くて柔らかい草が広がる場所に出る。
歩くたびに草がふわっと揺れて足に触れる。
ミオは笑いながら前に進む。
「これ、進みにくい…」
タクミはしゃがみ込んで草を観察する。
「風で揺れてるだけじゃないな…」
ポポが説明する。
「この草は笑いを集める草なんだよ」
タクミは草を少しまとめて道を作る。
「こうすれば歩ける!」
ミオは慎重に進む。
三人はゆっくり草原を渡りきった。
第四話:洞窟の音
次に現れたのは洞窟だった。
中に入ると、水滴の音が響く。
丸いキノコが並んでいる。
ポポが小声で言う。
「これ、触ると風が出るキノコ…」
ミオがそっと触る。
「ぷしゅっ」
空気が出て思わず笑う。
タクミが笑いながら言う。
「静かに進もう」
しかし途中で連続して音が鳴り、三人は笑いながら出口へ向かうことになる。
外の空気が気持ちよかった。
第五話:止まりかけた泉
森の中心に、小さな泉があった。
水はほとんど動いていない。
ポポが悲しそうに言う。
「前はもっと光ってたんだ」
ミオは水面を見る。
「静かだね…」
森の音も少し弱い。
タクミが言う。
「笑いが足りないってことか」
ポポはうなずく。
第六話:思い出の話
ミオが昔の出来事を話し始める。
転んだ話、失敗した話、友達との思い出。
タクミが大げさに反応する。
ポポが空中で変なダンスをする。
少しずつ笑いが広がる。
泉の水面が揺れる。
光が戻り始める。
三人は止まらず笑い続けた。
第七話:森の復活
泉が光を放つ。
水が流れ出す。
森に風が通る。
草も木も揺れる。
ポポは空を飛び回る。
「ありがとう!」
帰り道、森は優しい音を立てていた。
ミオが振り返る。
「また来たいな」
タクミが笑う。
「次はもっと準備して来よう」
森は静かに二人を見送った。