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11 - 秋のはじまり

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2025年10月02日

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風が窓をゆるやかに鳴らし、カーテンの端を小さく揺らしていた。十月の初め。昼間の空気はまだ夏を引きずるように少しだけ熱を残しているのに、夜が近づくと肌をかすめる風はひんやりして、首元を思わずすくめたくなる。

そんな季節の境目を、シェアハウスのリビングは穏やかなざわめきで満たしていた。




「なんか今日、花火大会やってるらしい」

テーブルに肘をついてスマホを眺めていたうりが、ぽつりと呟く。


「花火? 十月に?」

なおきりが眉を上げる。


「秋祭りてきな」うりは画面を見せながら説明した。


「えーまだ花火大会あるんだ、行こうよ!」

ゆあんがきらきらした顔で声を上げると、ひろが「さっきまで眠そうだったのに」と笑う。


「時間は?」

「祭り自体はもう始まってるっぽい、花火は21時頃からってさ」


自然と全員の視線がえとへ向かう。ソファに座って、ブランケットを抱えていたえとは一瞬戸惑ったようにまばたきをした。

「……え?」


「いや、行くならみんなで行こうかなって」じゃぱぱが頭をかきながら言う。


「別に強制じゃないけどねー?」

なおきりがわかりやすく軽く添えると、えとは、小さく笑って答えた。

「行っちゃうか」


その一言に、部屋の空気がわずかに弾む。準備を整える声があちこちで飛び交い、リビングが急に賑やかになった。


「半袖だけでいいかな」

「えー羽織り持っていっといたら?」

「持つのめんどいしいいや!」

「後悔するよー?」



会場の河川敷へ向かう道は人で溢れていた。夏の浴衣姿は少なく、代わりに薄手のカーディガンやパーカーを羽織った人たちが行き交っている。屋台から漂う焼きそばや綿菓子の匂いに混じって、夜風は少し冷たく頬を撫でた。


「思ったより混んでるね」

えとがぽつりとつぶやく。


「まぁ花火はどの季節でも人気だよねぇ。」とひろが肩越しに返す。


人波に押されてふらりと足を取られたえとをうりとひろが連れ戻す。


「えとさんちっこいから気をつけなー」

「おい」


さり気なく小さいいじりをしてきたうりに腕をぽんと軽く当てる。

すると気づいたらいなくなっていたメンバー達の声が聞こえてくる


「おーい!たこ焼き買ってきた!」

少し離れた場所でじゃぱぱが手を振る。背中には早速ラムネを抱えたなおきりがいて、「ラムネとかちょー久しぶりなんだけど」と楽しそうな様子。


ゆあんは射的に夢中で、「やっば惜しい」と真剣な様子。

「ゆあんくんもうちょい下じゃない?」どぬくが興味津々で覗き込む。

たっつんはゆあんに対抗し横で真剣そうに景品を狙う。


「からぴちってお子ちゃまだよね」

えとさんが呟くと、ひろとうりが横でうなずいた。

「まあ、そこがいいんじゃない」と3人で楽しむメンバー達を見ながら笑い合う。



河川敷の芝に腰を下ろすと、草の冷たさがじわりと広がる。えとは思わず膝を抱え込み、夜風を避けるように少しだけ身を縮めた。


「寒いんでしょ?」

隣に座ったなおきりが身を縮めているえとに気づき聞く。


「ちょっとだけ」


「だから羽織持ってきなよって言ったじゃーん」

そういいなおきりが着ていたパーカーをそっとえとの背中にかける。


それを見たメンバーたちが便乗してえとの背中に羽織を掛けていく。


「1人分で十分なんだけどなぁ、まあありがとう」

えとが少し笑いながらいうとメンバーは満足気な顔をした。



「てかりんご飴あったよ」

「え!わたし後でたべよーっと」

結局食べ物の話に溢れかえり、さっき見た屋台について熱く話していると、花火の合図が響いた。




夜空が大きく震えた。

赤、青、緑と次々に咲く光の花が、秋の冷えた空を鮮やかに染め上げる。

みんな花火に釘付けだ。


すると思い出したかのように

「動画撮んなきゃ」とゆあんがごそごそとスマホを取り出す。

それに続き「綺麗」うりが静かに呟く。

「夏より空気澄んでるからじゃない?」ひろが言うと、たっつんが「なんか詳しいな」と笑う。


えとはふいに 花火に照らされる仲間たちの横顔を見た。

明るく笑う顔も、無邪気に歓声をあげる顔も、全部がまぶしくて温かい。



来てよかったな なんて考えながら


また視線を上に戻し花火を眺めた。

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