トランプパロ
(※pixivで見つけたものの設定を元に書いております。すなわち三次創作の完全なる自己満です)
「ジャック?」
「はい、クイーン」
ハートの国、すなわちこの国はみな花の洗礼を受け長く生きることが出来る。ただその強力な魔力を持つのはクイーンである菊という存在だ。
生まれつきであろう強力な魔力はこの国の花の洗礼のために使われ部屋に放ち、外では魔力不足に苛まれ倒れることもしばしばある。そのためあまり外に出ないよう言われたクイーンは度々ジャックと話をするのだ。
ジャックとは元々ナンバー持ちだったフェリシアーノという男が昇進したものだった。菊は昔フェリシアーノの怪我を治したこともある。
フェリシアーノはそもそもハート国出身では無い。だがフェリシアーノの執着は凄いもので他国アレルギーと言ってもいいほど他国を嫌う。
「私はあなたが大切です」
「! クイーン!」
菊は優しく言うとフェリシアーノは他人行儀にそう言った。
「名前で呼んでください」
にこりと微笑みながら菊はそう言った。城の中でおやつを食べる菊の口は小さく、お茶を飲んだりなどで間が空いてフェリシアーノへの返事が来る。それ故にフェリシアーノはただ菊の顔を見ていた。
「菊」
「はい」
フェリシアーノは高揚感で溢れていた。名前を呼ぶことがこれほどまでに心を躍らせる。フェリシアーノの願い、それはまさにクイーンへの忠誠心が酷くクイーンが幸せになることであり、恋心に気が付かぬまま菊がキングのルートと結ばれることを望んでいた。
だがスペード国のアルフレッドに言われてから自分自身がそばにいたいだけなのだと知った。
「……食べ過ぎ」
「ややっ、言われてしまいました」
そんな会話にくすくすと笑う優しい菊。窓を見つめ外に出たいという願いが酷く伝わる。
「この前スペード国に行ったばかりだよ」
「分かってますよ」
ムスッとした顔をこちらに向け、はいはいと適当に流す。無理矢理辛い仕事をさせられ無理矢理かも忘れ、国民を守り、ハート国の歴なぞ無かったかのような平和国を作り上げた存在でもあるこのクイーンに忠誠を誓う。これは間違いでは無い。
ジャック自身本当は外に出してあげたい、でなければ過去に哀れに思いインクなどを渡し文通なんてしなかっただろう。
「倒れられたら困るよ」
心の内を菊に話す。そうだ、こんなにも大切な人が倒れられたら困る。
「それは私がクイーンであるからですか?」
「なっ」
菊が何を言っているか分からなかった。違う、そんな理由じゃない。
菊は淋しそうに笑うのだ。故に胸騒ぎが収まらず否定したい感情が一気に湧き出ては焦りで言葉を選べず言葉を発するのに時間がかかった。
(嗚呼、そんな顔をするなんてずるい)
「何を言ってるのか分からない、そんな訳!」
コンコン
言葉を紡ぎ終わる前に窓から音が聞こえ、二人してそちらに注目する。そこにいたのは鳥だ。嘴で窓を叩き音を出す。首元にはスペード国のものだと示すものがあった。胴体には小さな鞄。丁度便箋が入るくらいの。
「おや、これはこれは」
菊はそう言いながら窓を無断で開け鳥を入れる。
「どっから入ったわけ……スペード国のものなんてろくなもんじゃないよ! ね、クイーン」
他国アレルギーなフェリシアーノはつらつらと菊に言い訳をきかせる。
「おやおやまあまあ」
完全に鳥に懐かれた菊は肩に乗った鳥とじゃれあい笑っている。それを見たフェリシアーノは呆れた顔をして無理矢理鳥が持っている手紙であろうものを取りだした。
「ほらやっぱり……」
案の定手紙がなぜだか三通あった。
(俺宛てが一通……げっ、アルフレッドからだ、クイーンへのがアルフレッドからと耀、ジャックから?)
クイーンがじゃれあっている間に綺麗になんて考える間もなく手紙を開け読み進める。
「ちっ」
小さく舌打ちをしたフェリシアーノはクイーンの前ではいい子でと思いパッと前を向いた。
内容はまたフェリシアーノとガチで殺りあいたい等というどうでもいい前置き、それからクイーンをスペード国へ招きたいという事への了承を貰うような内容だった。文面は最悪で来たくないなら来なくていいクイーンだけで十分だと書かれている。
(はあ? クイーンを一人で行かせるわけないでしょ!?)
煽るような言葉で明らかに一緒に来いと言わんばかりものだった。
「クイーン」
「っは!すみません、あまりにも可愛くて」
はっとした菊は素早く手紙を読み進める。丁寧に便箋の上の方を切ってあける。育ちの違いがこういうところに現れるのだろう。
無言で座る菊の頭の方をぼうっと眺める。
菊の表情はコロコロと変わりアルフレッドの手紙を楽しそうに読み進め、耀の手紙をどことなく切なそうに読んだ。この話は解決しているのに、未だに悲しそうな表情をするのだ。
「菊」
名前で呼んでも振り返ってはくれやしない。
(あいつの方がいい?)
どことなく、これがイラつきの感情だと知っては嫌に思う。
「菊!!」
「ああ、すみません」
謝らないで、俺でそんな顔しないで、なんであいつの方が
「スペード国に行くの?」
「ええ、少し大事な話でして」
「遊びたいだけじゃない?」
「!断じて違いますよ!!もう!」
なぜだかからかってしまう。好きでたまらない証のように。
「ついて行く」
「……いいのですか?」
「もちろん」
だってクイーンが好きだから。
この感情は変わらない、愛しくあいつにだけは取られたくない。絶対ついて行く。
──────その後スペード国へ行ったフェリシアーノは無論他国アレルギーを発症し物凄く嫌な顔をしながら街を歩いた末アルフレッドに会った瞬間睨みつけ態度を悪くさせた。
終
コメント
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設定ミスってるかもです。