「ま、いきッ、ぐッ、!ごめんなざい、ッ!ごめんなさい、ごめんなさい…ッ!」
俺は、ぼろぼろ涙を流しながら謝るタケミっちの髪を引っ張っりながら引きずった。
髪が多少抜けようが関係ない。
俺はタケミっちのためなら何だってしてやりたいけど、今だけはどうしても許せなかった。
原因は、今から二時間前のことだ。
「タケミっちさ、今週末どっか行きてぇトコある?」
「う~ん…。そっすねー…」
そうだ。ここまでは普通だったんだ。
いつも通りの日常。なのに。なのに!
「…あ!そういや、この前千冬たちとここのテーマパーク行ってさー!マジで楽しかったなー」
この一言だ。
俺とタケミっちは、付き合う前に約束した。
出かける時は、誰と何処に行くかを伝えるって。
察してもらった通り、タケミっちは俺にそのことを伝えていなかった。
一人だったらまだしも、千冬たちと?
本当に、タケミっちは俺の地雷を踏みぬくのが上手い。
自分が言ってしまったことに気付いたタケミっちの表情が、みるみるうちに蒼白になっていく。
「……あッ、あ゛ぁ…ッ!ご、ごめん…まいきく、」
言い切る前に、俺はガッとタケミっちの口を右手で塞いだ。
「黙れ」
「ッ‼」
「タケミっちさぁ…、いつもすぐ謝るけど…。そうやってたら俺が許すって思ってる?」
「ち、が、」
「ううん、違わない。タケミっちはいつもそう。謝ってばっかでさ。謝るんならやらなきゃいいじゃん」
俺は笑いながらタケミっちの頭を持ち上げた。
「…もういい。直接身体に叩き込んでやるから。──── お仕置きね」
ギュッとタケミっちの細い首を絞め上げる。
タケミっちは一瞬、何をされているのか分からなかったのか、目を白黒させてたけど、すぐに抵抗し始めた。
でも、その力は可哀想なほどに弱々しくて。
「………や゛、め゛…で…ッッ!……ま゛いぎ…、ぐん…ッ!」
まーた、タケミっちが泣き出した。
すぐ泣くし、赤ん坊みたい。でも、タケミっちの泣き顔は大好きだ。
段々、タケミっちの抵抗する力が無くなってきた。声も小さくなっていく。
タケミっちの意識が飛ぶ直前、俺はパッと手を離した。
どさり、とタケミっちの体が崩れ落ちる。
タケミっちは、何度も呼吸を繰り返そうとしていたけれど、上手くできていなかった。
空気が抜けるように、ヒュー…ッヒュー…ッってか細い音が聞こえる。
これが噂の過呼吸か。
でも、俺はそんなことで情けなんてかけない。
過呼吸で苦しみながらうずくまるタケミっちに視点を合わせるようにしゃがみ込んで、髪を鷲掴みにする。
「何やってんの?タケミっち。まだ終わってないよ?」
「……ぅえ、?」
タケミっちが俺を見た瞬間。
俺は、タケミっちの足首を掴んで一気に折った。
はっきり聞こえる骨の折れる音。
その音と一緒に、ワンテンポ遅れて響くタケミっちの絶叫。
「確か、足首の骨折って二ヶ月くらい治すのにかかるらしいよ。…二ヶ月かぁ。まあ、それくらい外に出れなかったら、タケミっちも反省するよね?って、タケミっち聞いてる?」
タケミっちは気絶していた。
涙で顔をぐっちゃぐちゃにしたまま。
ちょっとやりすぎたか?…まあいっか。
タケミっちは反省するし、タケミっちを外に出させない。
一石二鳥だ。
タケミっちが約束破ったことには、俺にも反省点がある。
最近甘かったからなぁ。
タケミっちに不自由させないように、基本的には何でも許してたから。
甘やかしすぎるのも駄目なのか。
ん~、でも飴と鞭って言うしな~。
そうだ。タケミっちが歩けない二ヶ月間は甘やかしてやろう。
食事も洗濯も睡眠も、全部俺がやってあげよう。うん、そうしよう。
俺はこれからの生活が楽しみで、くすっと微笑んだ。
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