テラーノベル
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家を出る前、私は 玄関で立ち止まった。
教科書
ノート
筆箱
プリント——
鞄の中に 全部入っている。
分かっているのに、
もう一度だけ チャックを開ける。
…ある。
それでも不安で、もう 一回。
指で一つずつ しっかり触って確かめる。
時計を見る。
そろそろ出ないと 間に合わない。
「大丈夫。」
小さく言って 家を出た。
結局、
学校に 着いたのはチャイムが鳴る直前だった。
教室に 入る
いつもと同じ。
少し 騒がしくて、少し 眠そうで。
最近、空いている席が 一つ増えた気がする。
気にしない。特別なことじゃないから。
休んでる人が一人いるだけ。
私は 自分の席に座って、鞄を机にかける。
「芽衣ちゃん、おはよう」
声をかけてきたのは 舞田日和だった。
「おはよう」
自然に 返す。
日和は いつも一人でいることが多い。
誰とでも話すのに、
誰かの輪の中には 長くいない。
気づいたら、少し離れたところにいる。
二時間目の前、日和と 並んでプリントを見ていた。
「次の授業、プレゼンだねー…」
「あ、うん そうだね…」
「テーマ、これで合ってるよね?」
プリントを 確認する。
しっかり合ってる。
でも不安で、もう一度 見る。
「芽衣ちゃん、さっきも 見てなかった?笑」
「うん。でも、もし間違ってたらって思ってね。」
「大丈夫だと思うよ?」
「芽衣ちゃん、ちゃんとやってるし。」
日和の言葉に、少しだけ 安心する。
教室の後ろでは、
田仲君が 誰かを笑わせている。
大きな声。
クラスの空気が 明るくなる。
日和はそっちの方に視線を向けるけど、
その輪には 入らない。
入らないというより、
必要ないみたいに…少し離れている。
授業中も、私は 何度もプリントを見返した。
順番
時間
言うこと
もし失敗したら
もし止まったら
もし笑われたら——
考え始めると 止まらない。
隣を見ると、日和は 静かに前を向いている 。
時々、私の方を見て ほんの少しだけ頷く。
それだけで、呼吸が 少し楽になる。
昼休み
「芽衣ちゃん、ちゃんと食べてる?」
「…うーん、多分。」
「多分って何 笑」
「まぁ、無理しないでね。」
責める感じじゃない。
当たり前みたいに 言う。
どうしてこの人は、
こういう言葉を 自然に言えるんだろう。
私は 返事の代わりに、もう一口食べた。
放課後
鞄の中を 確認する。
鍵
財布
スマホ
全部ある。
それでも、不安は 消えない。
でも今日は
「大丈夫だと思うよ」
その言葉が、頭に 残っている。
空いている席が 一つ増えた気がする教室。
変わらないようで、毎日 少しずつ変わっている——
私も、その中の 一人 だ。
そう思いながら、家に向かって歩いた。
「だけど、本当に不安なのは——」
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