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1 - 迎えに行くから待っていて

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2022年12月02日

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ラギーが植物園にレオナを迎えに行く話


・二章後、謎時間軸

・色々捏造してます

・CPなし




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


初秋の涼し気な風が頬を撫でた。今年の夏は長く、最近になってようやく秋が顔を見せはじめた。ラギーは授業終わりのその足で植物園へ向かっていた。何せトレイン先生から直々にレオナを次の魔法史の授業に引っ張ってこいという面倒事を押し付けられたからだ。メインストリートをずんずん進みながらラギーはある違和感に気づいた。


「やっぱりオレ、避けられてるッスねぇ…」


あからさまに他の生徒が目をそらして寄り付こうとしない。逆に恨めしそうに睨みつけてくる奴もいる。口にする気はないがやはり気分は良くない。いつものラギーなら文句の一つでもつけてやるところだが今回は違った。例のマジフト大会でラギーの属するサバナクロー寮は寮ぐるみで不正を働いた。それに加え寮長、レオナキングスカラーはオーバーブロットしてしまったのだ。その件について被害者本人との和解…というより仕返しによりチャラにはなっている、がしかし周りの連中は中々納得しなかった。今でも遠巻きにされるか、わざと聞こえるように噂する奴らはあとを立たない。それについてラギーは渋々受け入れている。やってしまったことは事実だし弁解の余地もない。外野が文句を言うのは気に入らないが。自然と忘れられていくのを待つのみだ。

ラギーの頭は先程まで今日のバイトとまかない、あとトレイン先生からの依頼で埋まっていたがそれは自然と隅に追いやられていった。


ラギーはレオナのことが気がかりだった。あの日、レオナがオーバーブロットした日、ラギーはレオナの言葉に酷く驚いた。傷ついたんじゃない。自分がハイエナであることも、レオナが永遠に第二王子であるのだって始めっから分かってたのだ。別に親近感を持っていた訳じゃない。ただ単に、傍から見れば恵まれすぎてるような人でも絶対に手に入れられないものがある、そんな事実が嫌だっただけなのだ。だからこそ分かりきったことを呪いみたいに言うレオナに驚いた。あのときのレオナの顔は世界への憎しみに満ちていて、まだ幼かった頃の自分にそっくりだった。絶対に変えられないもの、手に入れられないものは確かにこの世に存在する。

だったら、あの夜、オレたちと共犯者となったレオナさんの言葉はでまかせだったのだろうか。

「世界をひっくり返す」

その言葉はオレたちの望む言葉だった。レオナさんは、オレたちのことを手のひらで転がして笑っていたのだろうか。本当はそんなことは不可能だと決めつけ、初めから全部諦めていたのだろうか。それが彼の本心なのかどうか、今のオレには分からなかった。


秋風が強く吹く。オレは思わず顔を上げた。優しい太陽の光が午後を照らしていた。イチョウ並木から風で飛んだ葉が黄金の雨を振らせている。


「あっ…」


思わず、泣きそうになった。去年、なんにも持たず学園に飛び込んでったオレをレオナさんが拾い上げたときも、ちょうど今と同じくらいイチョウが色づいていた。制服すら揃っていなくて、勉強にもついていけなくて。レオナさんはそんなオレに目をつけて拾い上げた。利害の一致と言うにはオレに有利な条件だったし、意図が分からなくて最初は混乱していた。ちょうど今と同じように。


でも、分からなくたっていいじゃんか。

レオナに貰ったものが全てだ。制服とか、居場所とか言葉とか。レオナにとって打算込みの行動だったとしてもそれに全力で食いついて、この人についてってやると決めたのは自分だ。ハイエナは強欲。手に入れたものはタダでは手放さない。

もうすぐ植物園だ。早くオレの王様に会いに行こう。きっといつもの場所でいつものように昼寝しているのだろう。そうしてオレはいつものように起こしに行って、小言を言う。いつも通りだ。あんなことがあってもオレたちは変わらなくていい。先輩と後輩、相棒、悪友、少なくともオレの知っているどんな言葉でもオレたちの関係は表せない。この歪で愛おしい言いようのないナニカがオレとレオナさんを結んでいる。今はそれだけで構わなかった。


植物園の扉を通って通路を進む。かぎ慣れた匂いに思わずニヤつく。姿が見えると、オレの気配に気づいたのか長い尻尾がゆらりと揺れて、翡翠の瞳がオレを見る。

いつものようにオレは名前を呼んだ。


「レオナさん!!」



迎えに行くから待っていて《I love you》

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