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アナウンサー「警視庁が働き方改革を実施します。」
桔梗「この4月から機動捜査隊の全部隊を三部制から四部制に変更することになりました。」
「これまで3日に1度だった24時間の当番勤務が4日に1度になります。」
記者「手薄になる地域が出るんじゃありませんか?」
桔梗「体制変更に合わせて機捜の隊員を増員しました。不足分は今後増やしていく予定です。」
記者「公僕たる警察が休み優先でいいんでしょうか?」
桔梗「警察官も人間です。」
記者「しかし、機動隊の場合急な事件に対応する必要がありますよね。」
桔梗「機動隊ではなく、機捜、機動捜査隊です。」
「頭文字のM・I・Uを取ってMIU と呼ぶこともあります。所属は刑事部。警視庁官内には第1機捜から第3機捜までおよそ300名の隊員を擁します。 各機捜の隊員は担当地域を24時間体制で密行。事件発生時には、いち早く現場に急行して、初動捜査に当たる。一般の方にはあまり知られていませんが、機捜がいない現場はほとんどありません。」
「愛知県警での話ですが……」
ネットでは
【隊長さん美人やな】
【美人。】
【美人すぎる隊長】
【美人だわw】
【お前らwwwwww】
志摩「暇な奴らだなぁ。」
桔梗「一般企業と同程度に増やした…」
警察官「おはようございます。」
我孫子「あぁ。おはよう。」
桔梗「仰せのとおり、記者会見に出席しました。これで承認していただけるんですよね?」
我孫子「今のままで何とかならない?」
警察官「おはようございます。」
我孫子「はい。おはよう」
桔梗「なりません。働き方改革をぶち上げておきながら、人員が足りないっておかしいでしょ。」
我孫子「頑張って集めたんですよ。私だって。」
警察官「おはようございます」
我孫子「おはよう」
桔梗「それでも足りないから、各機捜のヘルプのための臨時部隊が必要なんです。」
我孫子「私に言われても…」
桔梗「刑事部長の他に誰に言うんですか?」
【刑事部長 我孫子 豆治】と、書いてある札を手で隠す
桔梗「予算案も運用計画も全て提出しました。隊長は、私が1機捜と兼任。集める人員のめどもつきました。これ以上何をしたら承認してくれるんですか? 」
我孫子「許可は出た。」
桔梗「!!」
我孫子「だが、条件もでた。」
桔梗「また条件…。」
我孫子「いや、私じゃなくて上が言ってることだから。」
桔梗「なんでしょうか?」
引き出しを開けて、何かを取り出す。
我孫子「メンバーに彼入れてください。 いいですね?」
「承認おめでとう。」
【第4機動捜査隊隊長】
志摩が車に寄りかかっている
桔梗「志摩。ネクタイ、ボタン、前閉めて。きちんとしなさい。 」
志摩「さっき、昨日の記者会見流れてましたよ。」
桔梗「あぁ。」
桔梗が車に乗り込む
志摩「ネットで、”美人すぎる隊長”って言われてました。 」
桔梗「ネット?」
志摩「”美人すぎる”実況で 」
桔梗「暇なの?」
志摩「……」
桔梗「芝浦署。」
志摩が車のドアを閉める。
桔梗「……。」
志摩も車に乗り込む。
志摩「暇なのは俺が、運転手させられてるからですよね?こんなことなら所轄のままでよかった。」
「いや、運転手の仕事が悪いとは全く思いませんが、人間には向き不向きがあって、明らかに自分は向いてないと……」
桔梗「4機捜。承認されました。」
(振り返って)「!?」
桔梗「うだうだ言うならこの先ずっと運転手で…」
志摩「行きます。今、芝浦署へ。」
後部座席から覗くように
桔梗「もし今度、美人だなんだ言ってる奴を見かけたら言っといて。”顔で”隊長になってない。」
志摩「……。了解です。」
無線《はい、110番警視庁です。事件ですか?事故ですか?》
無線《現場に…。傷害事案、入電中》
無線《近隣住民からの騒音苦情、入電中》
無線《ケンカ口論中と、110番。入電中》
桔梗と志摩が芝浦署に着く。
警察官「おはようございます。」
桔梗「おはようございます。 」
志摩「おはようございます……。」
エレベーターへと歩いていく
警察官「おはようございます。」
桔梗「おはようございます。」
《エレベーターの到着音》
隊員「現状まで10分だな。」
隊員「行ってきます」
隊員「先ほど、準備完了しました。」
隊員たち「おはようございます。」
桔梗「お願いします。」
無線《墨田6 西錦糸町4丁目 どうぞ。》
陣馬「おぉ。ようやく始動か。」
桔梗「ようやくです。」
志摩「お久しぶりです。」
陣馬「よろしくな。相棒。」
志摩「こちらこそ、よろしくお願いします!」
桔梗「2人ね、コンビじゃなくなった。」
カバンから紙を取り出す
陣馬・志摩「えっ?」
桔梗「陣馬班長は、彼と組んでください。拝命して2年目になったばかりで現場経験は皆無。」
〈班長 陣馬 耕平〉
〈 九重 世人〉
志摩「九重世人?九重ってなんか聞い…。」
桔梗「警察庁の九重刑事局長の息子。となると、班長に組ませるしかないでしょ?」
陣馬「ちょっと待て、何でキャリアのボンボンが機捜に来んだよ?」
志摩「あの…」
桔梗「マメジのゴリ押し。 」
陣馬「刑事部長…。」
我孫子(電話しながら)「ふふっ。ノープロブレム」
桔梗「上から言われたって言ってるけど怪しい。自分都合を他人都合にする人だから。」
陣馬「やりにくい!!!」
桔梗「ごめんなさい。よろしく。」
志摩「あっ、あの!自分はどうなるんですか??俺と組む相棒。何にも書いてない。」
陣馬と桔梗が目を合わせる
桔梗「また、当分運転手でも…」
志摩「誰かいるでしょ!1人くらい、探せば。なんか…しらみつぶしに当たれば!」
桔梗「あっ。候補段階で落とした奥多摩の……」
志摩「その人!」
「その人、その人呼びましょう」
陣馬「いいんですか?いいんですね?”いいんですね?”」
桔梗「何よ。」
陣馬「いいならすぐに呼びましょう。」
志摩「ちょっと待ってください。どういう人なんですか? 」
振り返って
陣馬「足が速い。」
志摩「……足?」
志摩「伊吹 藍っていう人なんですけど。どういう人でした?蒲田東署にいたと思うんですけど、刑事課に。」
刑事「あぁー!一瞬ね。」
志摩「どういう人だったかって」
刑事「いやいや、いやいや」
志摩「麻布中央署に伊吹藍っていたと思うんだけど。」
刑事「あぁ…。」
志摩「仕事ぶりはどんな?」
刑事「ごめん。俺の口からは…。」
志摩「俺の口からは?」
警察官「伊吹?”二度とツラ見せんな”っつっとけ!」
志摩「彼は一体どんな問題を?」
「いや、あの。警察官たるもの口が堅いのはわかるんですけど。 」
刑事「はは…」
志摩「なんか1個くらいいいとこないの…?」
志摩「良ければ、強いていえば何か……。 強いていえば…」
刑事「あっ。でも、足が速かった。」
志摩「足?」
刑事「足は速い。」
志摩「足?」
刑事「足くらい。」
志摩「足くらい?」
警察官「足…」
志摩「ですよね。もういいです!」
志摩「隊長、やっぱり考え直した方が…」
桔梗「え〜っ。異動の辞令、出ちゃったよ。」
志摩「おぉ……」
刑事「おはようございます。」
志摩「おはようございます。」
ドアを開ける
九重「この”仮”って何ですか?」
壁には、【第4機捜(仮)】と書かれている紙が貼ってある。
志摩「え?」
九重「あっ、九重です。第5か第6になる可能性もあるということでしょうか?」
志摩「あぁ。分駐所がまだ仮で。」
九重「分駐所?」
志摩「機捜の隊員がチームごとに使う部屋です。」
九重「でしたら”第4機捜分駐所(仮)“と書くべきでは?」
志摩「あぁ。そうですね〜」
「……。はじめまして。自分は…」
九重「あっ、知ってます。元捜査1課の志摩さん…。ですよね?」
志摩「……。」
九重「優秀”だった”と聞いています。」
志摩「あっ、どうも。」
振り返ってボソッと
志摩「過去形〜。」
陣馬「集まったか。」
志摩「おはようございます。」
陣馬「おはよう。」
陣馬「今日は2台とも1機捜のヘルプ。」
「はい、これ部屋の鍵。」
志摩に渡す
九重に向かって
陣馬「行きましょう」
志摩「あの…、例の伊吹は?」
陣馬「もう行った。」
志摩「行った!?」
警察官「弾倉改め」
伊吹「異常なし。」
警察官「玉を込め」
拳銃に弾倉を詰める
急いでいる志摩
志摩「お疲れっす。」
志摩「すいません、おはようございます。4機捜の伊吹は?」
警察官「あぁ、さっき出てったよ。」
志摩「また?!」
志摩「何なんだ、マジで。」
駐車場に着く。
誰かがタイヤの前でしゃがんでいる
(足音)
志摩「志摩一未です。伊吹さんと組む、404号車の。 」
伊吹「あぁ、どうもはじめまして。 」
立ち上がる
伊吹「伊吹藍です。機捜初めてなんで、いろいろ教えてください。よろしくお願いします。」
志摩「あぁ。」
伊吹「え〜っと、運転は?」
志摩「あぁ、道覚えるまでは自分が。」
伊吹「まっ。同じ階級同士、気楽にやりましょ。」
伊吹が手を差し出す
志摩が伊吹の手を握る。
志摩「よろしく。」
伊吹「はい、はい〜って」
握手したままふざける
志摩「あっ?」
伊吹「はいっ。」
志摩が持っていた鍵を取る
志摩「あぁ、鍵…」
伊吹「早く道に慣れたいんで、自分が。 」
「よいしょっ」
志摩「……。」
伊吹「いや〜。東京で運転、緊張するな〜。」
「奥多摩も東京ですけど、都心は8年ぶりなんすよね〜」
志摩「へぇ。」
エンジンをつける
伊吹「いや〜。」
ハンドルにうずくまる
志摩「え?」
伊吹「エンジン音、いいわ〜」
志摩「普通…ですけどね。」
伊吹「いや、向こうじゃ自転車か走りだったんですよ。 」
腕時計を見て
志摩「任務は24時間。明日の朝9時まで」
「機捜404より、1機捜本部」
無線《機捜404どうぞ。》
志摩「これより、1機捜ヘルプで墨田署管内 重点密行に入る。どうぞ」
無線《1機捜本部 了解》
伊吹「ふぅ〜。」
伊吹「よっしゃ、行きますか!!」
後ろの車が前の車に対して煽り運転をする
(クラクション)
前の車が後ろの車に道を譲る
???「チッ、ヘタクソ」
伊吹「志摩さん。機捜で、手柄あげれば捜査1課も夢じゃないっすよね。優秀な刑事しか行けないって考えると、憧れるよな〜。ねぇ、志摩さんは?」
志摩「俺は、あんまり。現場であればどこでも。」
伊吹「行けますよ」
志摩「うん?」
伊吹「志摩さんくらいの人だって、頑張れば捜査1課行ける。うん、一緒に頑張りましょう。」
志摩「……。」
陣馬「いや、運転うめぇな。どこで習った? あっ、教習所か。俺は高校の頃、親父の車勝手に乗り回して、ドライビングテクニックを磨いた。昔はガッバガバだったんだよ。ガッバガバのズルズル。ハハハハッ」
九重「ハハハ…大丈夫です。」
陣馬「うん?」
九重「気を使って意味の無い会話を していただかなくても。必要な話だけで。」
陣馬「……。」
志摩・伊吹「……。」
後ろの車との車間距離が縮まる
伊吹「うーん。近いなぁ。さっきから後ろの車近ぇんだよな〜」
「こういう時機捜ってどうするんですか?」
志摩「無視です。」
伊吹「ふ〜ん。」
後ろの車が煽る
伊吹「ハハハハッ。めっちゃ煽られてるw」
志摩「先に行かせましょう。」
伊吹「ハハッ。……」
後ろの車が追い越そうとする。
伊吹は後ろの車より前に出た
(クラクション)
志摩「いや、行かせてください」
伊吹「こういうのはね、舐められちゃダメ。」
志摩「いや、舐める、舐めないの問題じゃない。」
後ろの車がクラクションを押しまくる
伊吹「はい。道交法違反」
志摩「警告して止める」
窓からパトランプを出して車の上にのせる
(サイレン)
志摩《前の赤い車の運転手さん。前の赤い車。スピード落として。》
なかなか止まらない赤い車
(クラクション)
クラクションに驚いて、歩道にいたおばあちゃんが転ぶ
志摩・伊吹「!!!」
伊吹「この野郎」
志摩「…!」
伊吹「調子乗りやがって」
スピードを上げる伊吹
志摩「待て!」
「ちょっ、待て待て!おいっ!」
さらにスピードを上げる
志摩「バカバカ!!バカバカバカ!!!」
ドリフトして、赤い車の前ギリギリでとめる
志摩「危ないだろうっ!!!」
車からおりる伊吹
伊吹「おいっ!ほら開けろ、開けろ。」
赤い車の窓ガラスを叩く
水島「何なんだ、おめぇ」
伊吹「ほら、開けろって」
伊吹「ほら、降りてこいよ」
水島「ふざけんな」
水島「なんだてめぇ、この野郎」
さっき転けたおばあちゃんのもとへ行く志摩
志摩「起きられますか?」
何かを探す様子で
ふみこ「ないわ」
志摩「何が?」
ふみこ「ステッキ」
志摩「ステッキ、ステッキ…」
杖を見つけて
志摩「杖ならここに」
ふみこ「ううん、違うの」
「おもちゃの…千砂ちゃんの。」
伊吹「いいから、開けてくれ」
水島「叩くなっつってんだ、この野郎」
伊吹「何が”コラ”だ、コラ お前」
水島「なんだてめぇ、この野郎」
伊吹「運悪かったな。俺は警察だ」
水島「はぁ?」
伊吹「”はぁ?”じゃねぇだろ。ばあちゃん転ばせた罪で逮捕すっから 」
服を引っ張りながら
水島「こんな警察いるか」
伊吹「は〜い。いました〜」
ポケットから警察手帳を取り出す
伊吹「残念でした。はい、出ろ。」
水島「ウソつけ、ニセモンだこんなの。」
警察手帳を叩き落とす
煽るように
伊吹「はい、公務執行妨害ね」
水島「なんだてめぇ、この野郎」
後ろを振り返って
志摩「ちょっと、おばあちゃん、ちょっと待って」
伊吹「車から離れろ」
言い争している伊吹と水島にかけより、間に入る
志摩「はい、やめてー!」
水島「誰だてめぇ、この野郎」
水島「警察手帳持ってんのか?お前見せろ、この野郎」
警察官「110番警視庁です。事故ですか、事件ですか?」
警察官「墨田区、北向島交差点で喧嘩。」
「男性同士の喧嘩ですね。」
無線《警視庁から各局。墨田署管内、交通上のトラブルからドライバー同士のケンカ口論 入電中。現状は北向島交差点…》
陣馬「行くか」
陣馬「機捜401 西駒形から向かいます。」
無線《警視庁 了解》
(サイレン)
窓からパトランプを屋根に載せる
黒田「あの〜。お名前…」
伊吹「4機捜だって言ってんじゃん」
黒田「だから、あなたが…」
伊吹「あっあっあっ!」
陣馬と九重が現場に到着する
陣馬「あれっ?」
黒田「だから、それを確認してるんですよ。何を慌ててるんですか?」
伊吹「慌ててないですよ、全然」
陣馬「あっ、ごめんなさいね!ちょっと車道に出ないで。下がって!警察です。」
伊吹「陣馬さん!陣馬さん!」
「陣馬さん、ちょっと全然話し通じない。」
伊吹にかけよる
陣馬「どうした?」
黒田「お疲れ様です。」
陣馬「どうも。」
黒田「あぁ、大丈夫です。」
「こちらは、大丈夫です」
伊吹「4機捜です。」
黒田「はい。いや、だから…」
陣馬「歩道出ないで。ちょっと、カメラ撮らない!」
ロン毛の男がカメラで撮影している
陣馬「ちょっとカメラやめてくれる?」
陣馬がカメラのレンズを掴む
ロン毛の男が陣馬の足を踏む
陣馬「アイテッ」
九重「車道出ないでー!」
陣馬「ちょっと、歩道に行ってください!」
ロン毛の男がどこかへ歩いていく
九重「どうしたんですか?」
志摩「もう終わるー」
警察官「了解しました。すいません、確認取れました。」
志摩「こっちこそ、すいません。」
九重「下がってください。 」
警察官「黒田さん、黒田さん」
九重「ここ、車道ですので。」
水島「あいつほんとに警察なの?」
警察官に向かって万遍の笑み
警察官「はい。」
水島「警察だからって、横暴だろ!」
志摩「煽り運転した自覚ありますよね。」
水島「それは、あんたらがちんたら走ってっから、たまたま車間が縮まった…」
伊吹「たまたまじゃねぇだろ、常習だろ、運転見ればわかるよ」
伊吹が近づいてくる
それを志摩が止める
水島「言いがかりだ。”つぶったー”に書いてやるからな。 」
伊吹「おぉ〜。つぶったー?」
志摩が赤い車を覗く
志摩「あ。この車、ドライブレコーダー付けてますねぇ。」
伊吹「えっ?」
志摩「納得できないなら署に行って、一緒に録画見ましょっか?」
水島にむかって
志摩「たまたま車間が近づくことがうちの車の前にもあったのか、なかったのか。 」
水島「ふっ。ふふっ。」
志摩の肩を軽く叩く
水島「ここは警察の顔を立てようかな」
水島「ハハハッ」
志摩「あっ、そうですか。ありがとうございます」
「ナンバーは控えたんで、今後の運転は慎重に。」
横から伊吹が
伊吹「慎重にな」
志摩「はいはい…」
水島「ぜってぇ書いてやるからな」
志摩「早く行って」
伊吹「だったらイケメンって書けよ。」
志摩「早く行って〜。早く行って〜! 」
九重「下がってください!! 」
一般人「どうしたんですか?」
伊吹に近づいて
志摩「伊吹さん。」
伊吹「はい」
志摩「相手を刺激して、揉め事を起こさないでもらえますか?」
伊吹「あいつ、ほっといたら危ないでしょ。」
志摩「それを上回る危ないことをするな」
伊吹「上には上がいるって見せていくスタンス〜」
サングラスを外して息を吹きかける
伊吹「あれ…。ばあちゃんは?すっ転んだ…」
志摩「あっ。 」
伊吹「ばあちゃん!ばあーちゃん!!」
「あれ?」
地面におもちゃ屋ラビットの袋が落ちている
伊吹「無事帰れたかなぁ?」
志摩が袋を拾う
志摩「おい」
伊吹「うん?」
志摩「これ、後で墨田署に届けろ」
袋を差し出す
伊吹「うん?何、これ。」
中には魔法少女メロりんのステッキが入っていた
伊吹「何で俺が…」
志摩「おばあちゃんの落とし物。 あんたが道を譲っていればおばあちゃんは転ぶこともなく、誰かにあげるはずだった大事なおもちゃも落とさなかった。」
伊吹「……。」
伊吹「オーケー。じゃあ、ちゃんと届けるよ。」
車に戻りながら
伊吹「ほいほいほい。お疲れ様で〜す。」
「ほいほい、はぁほいほいほい」
志摩が呆れた目で見つめる
伊吹「よいしょ。志摩さん!行くよー」
陣馬が麺を茹でる
志摩がネギを切る
志摩が周りを見ながら
志摩「いいんですか?会議室で。」
陣馬「今ここは4機捜の分駐所だ。」
伊吹「あんな、始末書を書くコツ。なるべく字をおっきく書く。すると、少ない文字数でも紙が埋まって見える〜。まっ、わかんないことあったらなんでも聞いて。」
九重「始末書の書き方は私には必要ないと思います。」
陣馬にむかってコソッと
志摩「こいつ、マジでただのヤンキーですよ。隠れヤンキー。しかも、マウントとらないと死ぬ病に侵されています。」
伊吹「遠慮すんなって〜」
陣馬「だったら簡単だよ。 」
志摩「えっ?」
陣馬「マウントを取り返せ!」
志摩が呆れた目で見つめる
志摩「どうしてチーム内でマウント取り合わなきゃいけないんですか。そういう不毛な争いが一番嫌いなんですよ。」
陣馬「単純バカでよかったじゃねぇか。」
志摩「いや、陣馬さん。シンプルなバカが一番怖いんですよ。何をしでかすか見当がつかない。」
陣馬「隊長はお前に一任すると言っていた。」
志摩「えっ?」
陣馬「伊吹が機捜隊員としてやっていけるかどうか。適性がないんなら、秋の移動で奥多摩に返す。」
志摩「俺の判断でいいんですか?」
陣馬「あぁ。」
伊吹「よーっしゃ!」
陣馬「桔梗はお前の見る目を買ってる。今でもな。」
志摩「……。」
伊吹「う〜っ!」
「ごーっし!!」
(アラーム音)
陣馬「おし!できた! 」
「よし。志摩!ザル持て、ザル持て。」
窓を開ける
陣馬「いくぞっ!」
志摩「うわ〜外から丸見え。」
陣馬「いいんだ、いいんだよ。せーの、よーいしょー 」
志摩「アツツッ!!アツツッ!アッツ!!!」
陣馬「ハハハハ…」
「流しがねぇんだからしょうがねぇだろ!」
志摩「それでも作る根性がすごい」
陣馬「初日なんだ、食わせにゃならんだろう!」
伊吹「完璧っしょ」
九重のパソコンに【警部補】と書いている
伊吹「えっ、マジ?警部補?俺より上?」
九重「そうですが単なる階級なので、気にしないでください。」
伊吹「早く言ってよ。だったらタメ口でいくよ。」
九重「はい?」
伊吹「肩書きに屈しないスタイル〜」
陣馬「昼飯だ〜!!」
陣馬が伊吹の始末書の上にざるうどんを置く
伊吹「あーっ!!ちょちょちょ…!濡れちゃったじゃん!!!」
陣馬「知らねぇ、書き直せ!」
志摩「はいはいはい…」
志摩に向かってガッツポーズをする陣馬
呆れた表情になる志摩
陣馬「お前ら、これが機捜名物”機捜うどん”だ。」
伊吹「えっ、名物?」
九重「何うどんですか?」
伊吹「いや、機捜うどんって言ったじゃん」
九重「いや、そうではなくて」
志摩「今日のは讃岐うどん。麺つゆは市販の濃縮3倍。 」
伊吹「うわ〜。美味そう」
陣馬「さぁ!喰らえ〜」
伊吹「いっただきま〜す!」
アナウンス《警視庁から各局。墨田署管内、重傷傷害容疑者事案 入電中。現場は、曳島一丁目2番3号先の路上。通行中の男性が男に殴打され転倒…》
伊吹が立ち上がる
陣馬「行くぞ」
九重「えっ、うどんは?」
陣馬「腐りゃしねぇ。放っておけ。」
伊吹「よいしょっ。」
伊吹が部屋を出ようとする
志摩「待て。」
伊吹「えっ?」
志摩「戸締まり」
伊吹「はっ?」
陣馬と九重が部屋を出ていく。
志摩「俺たちは、戸締まりをしてから行く。」
伊吹「いや、盗むヤツなんか居ないでしょ。警察署の中に。」
志摩「規則だ。分駐所を離れる時は鍵を閉める。車を離れる時には鍵を抜く。 」
サングラスをかけながら
伊吹「はぁ〜。もしかして、規則にがんじがらめになっちゃう頭固いタイプ?」
志摩「規則は必要だからある。」
鍵を差し出す
伊吹「…。オーケー」
伊吹「チェック、チェック。よし、はい〜」
扉を閉めて鍵をかける
志摩と伊吹が現場に着く
志摩が伊吹に指をさしながら
志摩「あらかじめ言っておく。」
伊吹「うん?」
志摩「勝手なことはしないでください。」
志摩「失礼します。404現着、初動捜査始めます。」
サングラスを外しながら
伊吹「はいはい」
振り返って
後ろを通った車からなにか違和感を感じたが、気にせず志摩について行く伊吹。
志摩「ちょっと、すみません。失礼しま〜す」
九重「どうぞ。」
靴カバーを渡す
志摩「被害者の状態は?」
九重「さっき、救急車に。」
志摩「いや、それは見ました。」
九重「あぁ、顔面血だらけで、話しかけたらかろうじて反応。殴ったのは知り合いかと聞いたら首を振りました。それ以上は聞けませんでした。」
志摩と伊吹が、靴カバーを付ける
志摩「了解」
陣馬「カレー食って、店出たところでいきなり頭を殴られたらしい。手分けして聴取!おい、ちゃんと規制しろっつってんだろ!何のための段取りだ!」
志摩が伊吹を見つめる
伊吹「うん?」
陣馬「下がってください!ホントごめんなさい!」
志摩「何かついてる」
伊吹「んっ」
伊吹が頭を下げる
志摩「取れたっ」
ちょっと嬉しそうに
伊吹「ありがとう」
(救急車のサイレン)
歩道を女の子が歩いている
女の子が交番に入る
千砂「おばあちゃん…」
警察官が女の子に気づく
警察官「どうしたかな?1人?」
千砂「おばあちゃん、いなくなっちゃった」
警察官「うん、うん?どうした?」
千砂「おばあちゃん、いなくなっちゃった」
警察官「えっ、どこで?」
女の子は魔法少女メロりんのリュックを背負っている
警察官「どこでいなくなっちゃったかな?」
「お家は?この近くかな?どこどこ行くよ〜とかって言ってた?」
九重がバリケードテープを貼る
《目撃者①》
陣馬「後ろ姿…」
九重「どういった服装でしたか?」
「スーツ。何色のスーツでした?」
《目撃者②》
志摩「犯行の瞬間って見ました?他に覚えてること…」
《目撃者③》
伊吹「例えば誰かと揉めてました?電話の内容は?」
店主「いらっしゃいませ〜」
《カレー店 店主》
店主「殴られた人は常連さんで、」
伊吹「うんうん、常連。」
店主「週1回来てたかなぁ。」
《カレー店 店員》
店員「いつも手ぶらで、なんかの鍵と小銭入れだけ持ってきてます。」
志摩「ありがとうございます。」
陣馬「頭部打撲で意識低下状態。 被害者は命に別状はないが、朝まで話は聞けそうにない。」
陣馬「持ち物は小銭入れのみ。カードの類いはなし。身元のわかるものはなかったそうだ。 」
九重「被害者の人定ができませんね。」
志摩「この路地に、防犯カメラはありませんでした。」
陣馬「聴取の結果は?」
志摩「被害者は13時頃、入店。注文を待つ間、被害者に電話がありました。 」
電話をしながら
男性「みゆきって誰だよw」
伊吹「目撃者は電話の内容を聞いてました。しょうもない痴話喧嘩。」
志摩「食事を終えた被害者は、会計を済ませて店を出た。」
九重「目撃者はスマホを見ながら歩く被害者とぶつかりそうになり、危ないなぁと思って振り返った。 」
男が被害者の男を殴る
九重「殴打をスマホで受けたため、壊れたようです。犯人の顔は見ていません。」
志摩「目撃者が通りに入ると、既に犯行の後でした。血溜まりに右膝をつき、被害者のポケットをまさぐっていた。何かを握ると、向こう側へ逃げた。犯人は大柄の男で、紺色のジャケットにグレーのパンツ。背中だけで、顔は見ていない。」
陣馬「犯人の前足は?」
伊吹「いや、見てないそうです。」
九重「前足?」
志摩「どこから来たのかってこと。」
陣馬「凶器の看板がどこのものか分かれば、たどれるかもな。」
山岡「鑑識作業、入ります。 」
志摩「4機捜の志摩です。」
山岡「鑑識の山岡です。」
志摩「よろしくお願いします。」
陣馬「お願いします。」
九重「盗んだのは財布?金目当ての犯行でしょうか?」
陣馬「決めつけんなよ。初動捜査は大きく見る。大きく見て、徐々に絞り込む。」
九重「被害者は電話で喧嘩をしていた。何かトラブルを抱えていて、その線でやられた可能性もありますよね。 」
伊吹「いやいや、その電話は女とのしょうもない痴話喧嘩。事件に関係なし。」
九重「関係ないと、決めてしまっていいんですか?」
伊吹「うん。あれは関係ない。」
陣馬「ちょっと待て。目撃者は?」
伊吹「えっ?」
陣馬「正確にはなんて言ってたんだ?」
伊吹「え〜っと…あっ。え〜、好きとか嫌いとか、そういうアレだったって。」
陣馬「どのアレだ、ちょっと見せろ!」
伊吹「えっ?」
陣馬「メモ。」
伊吹「あっ…」
メモ帳を渡す
メモ帳には何も書いてない
陣馬「おい!聴取のメモは?」
伊吹「えっ。書かなくても覚えられますよw。」
陣馬「現に説明できてねぇじゃねぇか! 」
伊吹「だから、問題なし。事件に関係なし。俺の勘は当たる〜。 」
陣馬「血圧が上がったまま死にそうだ…」
伊吹「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」
志摩が伊吹に近づく
志摩「伊吹さん。」
伊吹「うん?」
志摩「機捜は、初動捜査が仕事なんですよ。」
伊吹「はい。」
志摩「この後、所轄やメンバー課に引き継がなきゃならない。そのための報告書もこの後作る。」
伊吹「確かに。」
志摩「そこに何て書く?」
伊吹「えっ?」
志摩「”好きとか〜嫌いとか〜そういうアレで〜”って書くのか? 」
「バカか」
伊吹「ふふっw」
志摩「笑ってんじゃねぇよ!」
伊吹「そんな…w女子高生みたいな喋り方してないwwハハハッ、ねっ。 」
九重と陣馬が呆れた顔で見つめる
志摩「…。俺たち、パーキング見てきます。被害者はいつも身軽で小銭入れか鍵だけ持ってた。鍵まで店員が覚えてるってことは手に持ったまま入ってきた日が何度もあった。手に鍵を持ってるってことは、よっぽど家が近くか…」
陣馬「車で来ていた。車のキーか。 」
志摩が頷く
志摩「犯人は被害者のポケットから何かを握って逃げた。財布のような大きいものじゃない。」
陣馬「盗んだのが車のキーだとしたら、車を盗むのが目的か。」
志摩「車の中に何か置いてきた可能性もあります。この辺りにパーキングは1カ所だけ。しかも犯人が逃げた方角にある。」
伊吹「…。 」
志摩「行きますよ」
「失礼します」
バリケードテープをくぐる
九重「今でも一応、優秀なんだなぁ。」
警察官「道開けてくださーい」
伊吹「さっきの聴取の内容、報告書にはちゃんと書きます。だいたい覚えてるんで、記憶で。」
志摩「記憶を過信するな。記憶にはバイアスがかかる。」
伊吹「バイアス?」
志摩「電話の喧嘩は事件に関係ないって見立てたあんたが、記憶に基づいて文字に起こせば思い込みで話が曲がる。無意識のうちに」
伊吹「ふ〜ん。じゃあ、どうする? 」
志摩「はぁ。」
伊吹「んっ。おっ、何、何?うん?」
伊吹のフードから録音機を取り出す。
志摩「テッテレ〜」
(ボタンを押す)
男性《電話相手に対して、”ほかの女のところなんか居ない。ちゃんとすぐ帰る…”》
志摩「報告書書いたら返してください。」
伊吹「勝手に録ってたのかよ。信用ねぇなぁ。」
志摩「あぁ、ないですよ。俺は自分も、他人も信用しない。」
伊吹「ふ〜ん。難しいねぇ」
伊吹「凶器の看板、こっから持ち出したのか。 」
志摩「あぁ。」
パーキングを見て言う
伊吹「いやぁ、てかこん中から捜すの?車」
志摩「車ごと持ってかれてなければ。」
伊吹「いや、どんな車かも分かんないのに」
志摩「1台ずつ潰すしかない。とりあえず防カメ見せてもらおう。」
伊吹「あれっ?」
志摩「うん?」
伊吹「昼間のあいつの車じゃない?」
志摩「煽り運転の?」
伊吹「あっ、いや…。えっ、あっ。そうだよ、同じ車!」
伊吹「おぉ〜。」
志摩「ホントだ。ナンバー、一緒。」
伊吹「開いてる。」
志摩「うん?」
伊吹「ねぇ。ほら、せ…せ…」
伊吹「何?何?」
伊吹「ほら。手袋片っぽ貸して。 」
志摩「おい、持ってきてないのか?」
伊吹「うん。早く!」
振り向いて向いて
志摩「チッ!!」
志摩「はいっ」
手袋を片方投げる
伊吹「よしっ。お邪魔しま〜す。」
シートに血が着いている
志摩「血の跡。犯人がここでも膝をついた。」
伊吹「やっぱり、昼間のヒゲ男。」
志摩「あの男が被害者? もしそうだとすると、犯人がここへ来た理由は…。」
伊吹がドライブレコーダーの横に着いていたキーホールダーを見つめる
伊吹「なくなってるな。」
志摩「うん?」
伊吹「ドライブレコーダー」
ドライブレコーダーが盗まれている
伊吹「ビンゴ、ビンゴ、ビンゴ、ビンゴ!!」
志摩「駐車場の入口に置いたあった、防犯カメラの映像に被害者の車をつけてきた不審な白い車が映っていました。この白い車の男は水島の後を追って、ここで一旦フレームアウトしますが」
ホワイトボードの写真を指さす
志摩「この看板を外して持ち出し、また水島の後を追った。」
店主「いらっしゃいませ」
水島「ほら”みゆきの声じゃん”じゃねぇじゃん、ぜってぇちげぇじゃん」
志摩「食事をする水島を表で待ち伏せ、出できたところを看板で殴った。」
看板で水島を殴る
水島「うっ、ぅあっ!」
志摩「水島のポケットから車のキーを盗み出し、また駐車場へ戻り今度は水島の車からドライブレコーダーを盗み出し、自分の車へ戻った。」
「この後、駅前方面へ走り去ります。この足立ナンバーの白い車についてもう1つの映像を見つけました。」
お昼の煽り運転の映像を見せる
伊吹《後ろの車、さっきから近ぇんだよな〜》
伊吹「これ自分が運転してます。」
志摩「これは機捜404のドライブレコーダーです。背後から煽ってきている、この赤い車が被害者の水島です。これ見えます?」
画面を指さす
刑事「うん?どれ?」
伊吹「こ、これです。」
志摩「これをちょっとよく見ててください。」
《クラクション》
おばあちゃんが倒れる
伊吹「ばぁちゃん、」
伊吹が車をドリフトさせる
志摩《バカバカ、バカバカバカ!!!》
志摩「!?」
ノートパソコンを一瞬で閉める
志摩「え〜!!!今のは、本件に無関係でございます。」
伊吹「無関係です。はい、」
志摩「え〜、巻き戻すと。水島は後ろの車に前に行かれないようにけん制しながら走ってます。水島の後ろの車、それが…足立300”へ”の13-02。犯人の車です。 」
伊吹「水島の野郎は煽りの常習犯でした。俺たちの車を煽る前に、犯人のこともブイブイ煽ってた。 」
志摩「まぁ、恐らく犯人は煽られたことに腹を立て、犯行に及んだ。自分の犯行だとバレることを恐れてドライブレコーダーを盗んだと考えれば…筋は通ります。」
伊吹「よしっ!ナンバーから住所を割り出して、サクッと逮捕にいきますか。ねっ。」
刑事「あとは、こちらで。」
伊吹「うん?」
志摩「はい。」
刑事「初動捜査、ご苦労様でした。」
伊吹「ん?」
志摩「書類まとめたら戻りますんで、あとはよろしくお願いします。」
刑事「はい。」
刑事「よしっ、行くぞ!」
刑事「はい。」
伊吹「うん?」
志摩が片付けをする
伊吹「終わり!?」
志摩「…。」
伊吹「んっ?具合が全然わかんない。なんで?」
伊吹「パッとしない!」
警察署を出る
志摩「逮捕まで手伝ってくれって言われる場合もあるんだけどなぁ。」
伊吹「やりがいは?機捜のやりがい。」
志摩「これが仕事。職務」
伊吹「そんなんじゃやれねぇだろ」
車に乗り込む
伊吹「警察って命懸けっしょ?なのに給料高くない。捜査1課なんて行ったら、四六時中捜査に明け暮れて家にも帰れない。それでもなんでやるのかっていったら…」
「正義感。犯人を捕まえたい。 それしかないっしょ」
「なのに機捜はその前で終わる。もぉ〜!張り合いないっ!!もう…」
志摩「だからそういう仕事。当番勤務は24時間。24時間の間に、できうる限りを尽くして検挙率を上げるための”パーツ”として働く。 」
伊吹が志摩を見る
志摩「自分の満足のためじゃない。」
伊吹「パーツ?」
志摩「あと1つだけ言わせてもらう。」
伊吹「まだ言うの?」
志摩「俺は自分のことを正義だと思ってる奴が一番嫌いだ。 」
(無線の呼び出し音)
無線《警視庁から各局。墨田署管内…》
志摩「一度、分駐に戻る。」
伊吹「ちょっと!たんま、たんま…」
無線《83歳が行方不明》
志摩「徘徊老人の保護は機捜の仕事じゃない。」
伊吹「しーっ!しーっ…」
無線《着衣はグレーのカーディガン、ピンクのストール、花柄の杖。近い局、捜索願いたい。》
志摩・伊吹「……。」
伊吹「昼間のばあちゃん、家に帰れてない。」
警察官「一緒に買い物に出かけて、途中で疲れちゃって歩きたくないって駄々をこねたんですって。」
伊吹「……。」
お昼
千砂「行きたくない…」
ふみこ「歩きたくないの?おばあちゃんが、おもちゃ買ってくるから。千砂ちゃんは、これ食べながらここで待ってて。」
警察官「ところが、いつまで経っても戻ってこない。それで、近所の交番に。」
志摩「保護者はどこに?」
警察官「あっ。親戚の葬儀に両親そろって出ていて、ついさっき連絡が着きました。今、新幹線でこっちに向かってますから大丈夫です。」
千砂「おばあちゃん、帰ってこなかったらどうしよう。」
警察官「みんなで探してるから大丈夫。」
千砂「ほんと?」
伊吹「よしっ。行きますか!」
眠たそうにしている千砂を志摩が見つめる
伊吹「よしよし、よしよし…」
ステッキを手に取って
店主「はいはい。おばあちゃん、買っていきましたよ。それが…午後にもう一度来て。」
「”おもちゃ無くしちゃった”って 」
午後
店主「ごめんね、おばあちゃん。あれ、最後の1個だったのよ。」
「深川通りの”おもちゃキャプテン”」
店主「あんまり、悲しそうだったんで”深川通りのおもちゃキャプテンなら…まだあるかもよ”って」
志摩「おもちゃキャプテン?」
店主「うん。あっ、ちょっ…ちょっと待ってください。 」
おもちゃキャプテンへの地図を取り出す
店主「それでわかんないって言うからね、地図を渡してあげたの。」
志摩「これ、ちょっともらっても…」
店主「いいですよ。」
伊吹「行こう、行こう…」
(携帯電話の呼び出し音)
(電話の着信音)
志摩「誰も出ない。明日にならないと無理だな。」
伊吹「この通りにある防犯カメラの映像全部調べてばあちゃん探そうぜ。」
志摩「人探しは機捜の仕事じゃない。」
伊吹「冷たい!!!」
志摩「もしやるなら俺たちだけで勤務時間外に防犯カメラの映像を1つ1つ目で見て捜さなきゃならない。」
志摩に近づきながら
伊吹「そんなことしてたらばあちゃん死んじゃうよ。」
志摩「だからこそ、生活安全課に任せた方がいい…」
ポケットからステッキを取りだして
ステッキ《はばたけ はばたけ はばたけ空に 》
志摩が無理やり奪う
ステッキ《羽ばたけ空に!チェンジあんどソウル!》
志摩「早く帰って報告しよう。」
車に乗り込む
伊吹「もぅ〜!」
「何かなぁ、ピンと来ないなぁ 」
白い車が横を通る
伊吹「……。」
急いだ様子で外に出る
志摩「何?おいっ!」
前の白い車を見つめる
伊吹「ねぇ、今の犯人じゃない?」
志摩「車種は同じでも多摩ナンバー。犯人の車は足立ナンバー。」
伊吹「なんかそんな感じした。」
志摩「感じで言うな。同じステーションワゴンは都内に何万台も走ってる!」
伊吹「う〜ん」
志摩「行くぞ!」
(ノック音)
桔梗「おっ、雨やんだ。」
糸巻「先日の記者会見、ネットで大評判でした。 」
桔梗「マメジに無理やりやらされたの。」
糸巻「ふふふっ」
桔梗「女性を積極的に使ってますアピール」
糸巻「評判が良かったために機動捜査隊の公式サイトのアクセスが増えて、ほら」
ノートパソコンを見せる
糸巻「404エラーになってます。存在しないページ。」
桔梗「サーバーがダウンしたということ?」
糸巻「今回はそのようです。」
桔梗「復旧するよう、担当者に伝える」
糸巻「あっあっ、もう1つトラブル発見しまして…」
桔梗「したなら仕方ない。どうぞ」
糸巻「”NOW TUBE“の動画なんですが…」
《どうも!ナイトクローラーチャンネル特派員のRECです。》
《本日お届けする、疑惑の独占映像はこちら!》
《な な なんと!警察を名乗る男が民間の車を逮捕しようとしてたみたいなんです。が…》
お昼の動画を流して
《伊吹「4機捜だって!」》
《はい、ここ。4機捜。男は自分を”4機捜”だと言っています。ところが警視庁には1機捜から3機捜までしかなく、あらゆる情報を探してもそんな部署はありません。》
伊吹がうどんを食べながら
伊吹「うめぇ!」
《ここでレック・ザ・チェック!摩訶不思議なことにこの事件の後から公式サイトが404エラーになってるんです。》
《この謎の4機捜は国家の秘密に関わる公安のような影の軍団なんじゃないか…》
桔梗「状況は分かった?」
伊吹「これ、圧力かけて消してもらえないんすか?」
桔梗「公権力をそんなことに使えるわけないだろ!」
《暗殺されないように気をつけます》
九重「今のチャンネル視聴者の登録数23人。」
志摩が伊吹を見つめる
伊吹「うん?のり、上手いねこれね。」
九重「いわゆる底辺ナウチューバーです。拡散力は極めて低いと言えます。」
志摩「ふ〜ん」
伊吹が陣馬に向かって
伊吹「あいつ何言ってるですか?」
桔梗「確認、ありがとう」
陣馬「ほいっ」
九重「いえ、」
桔梗「あぁ、私、帰るから。」
陣馬「4機捜は公表しないの?」
桔梗「あくまで、ヘルプの部隊だからね。」
「次の異動で人員に余裕が出れば解散。4機捜って名称自体が仮なの。コールサインが必要だからとりあえず”4”って付けたけど。」
伊吹「え、解散したら俺達どうなるんすか?」
桔梗「どこかの機捜に入るか、元の部署に戻るか、」
伊吹「なるほど…それまでに手柄あげれば、捜査1課も夢じゃねぇのか。チャンスあるなまだ、」
うどんをすすりながら
伊吹「うぅ〜っ!! 」
桔梗「とにかく、警察の信用を損ねないように。」
伊吹「はい。」
桔梗「志摩。」
志摩が桔梗を見つめる
桔梗「頼んだよ。」
少し間が空いて
志摩「はい。」
伊吹が志摩と桔梗を見つめる
桔梗「あっ。」
振り返って
桔梗「今日みんなが臨場した墨田区の傷害事件。容疑者の白い車、偽造ナンバーだったって。 」
刑事「このナンバーで登録されていたのは違う車種の別の車で、事件とは無関係だったんですよ。それで」
刑事《交通の方に照会したら》
陣馬「あおり運転の常習者?」
志摩「メール来ました。」
陣馬「はい。」
伊吹が九重にiPadを見せて言う
伊吹「ねぇ、これどうやって見るの?」
陣馬「この1年で、犯人と同型の白い車に煽られたという通報がこれだけあったそうだ。」
九重「どうして捕まってないんですか?」
陣馬「ナンバーがバラバラなんだ。 おそらく、複数枚の偽造プレートを付け替えて走ってる。」
「この犯人に煽られて煽り返した車の末路がこれだ。」
フロントガラスがバキバキになっている写真を見る
志摩「最悪」
伊吹「ひでぇな」
陣馬「執念深く家まであとをつけられたらしい。」
九重「つまりこの事件は、煽り運転の水島がより悪質で凶暴な煽り運転をするドライバーと出会い、殺されかけた。」
陣馬「ったく、マヌケな話だな」
志摩「不毛だな〜」
九重「どうして煽り運転をするんですか?」
伊吹「負けたくないからに決まってんじゃん。」
みんなが一斉に伊吹を見る
陣馬「車ってのは自分一人の空間だ。その中で気が大きくなるってのもあるんじゃないか?」
志摩「車の威を借りてマウントを取る。だけど、マウントの取り合いは悲劇しか生まない。」
伊吹を見つめる
志摩「おい、聞いてるか?」
伊吹「ねぇ。さっきの車さぁー。やっぱそいつじゃない?」
志摩「うん?」
伊吹が陣馬たちに言う
伊吹「深川通りのおもちゃ屋の前で白い車見たんすよ。その時はなんだっけな…あ、多摩ナンバー。」
九重「多摩ナンバーの通報はこれまでありませんけど。」
陣馬「どうしてそれが犯人の車だって思うんだ?」
間を開けて
伊吹「何となく。」
志摩「うわ〜…」
伊吹「いや、なんか引っかかってて、前に見た車と同じかも〜」
志摩「俺たちは映像で見ただけで、犯人の車を直接見てない。」
椅子から立ち上がって
伊吹「……。なんだろう。なんか感覚…?なんだろうな。なんかこの辺に、もや〜もや〜っと 」
志摩「勘とか、感覚とか、やめてくんないか…」
志摩が指を指す
伊吹が志摩の手首を掴む
そして昼間の違和感を感じた車と、さっきおもちゃ屋の前で見た車を思い出す
伊吹が志摩の肩を軽く叩きながら笑う
伊吹「あぁ、スッキリした。」
「エンジン音が同じだ。」
「おもちゃ屋の前で見た時、多摩のえっと…志摩さんなんだっけ?」
志摩「多摩300”し”の12-15。」
伊吹「やるじゃん、そのナンバーで緊急配備!」
陣馬「待て待て!」
志摩「百歩譲って犯人の車を見たとして、多摩ナンバーの車はエンジン音が似てたってだけだろ。」
伊吹「同じ。向こうがまた違うナンバーに変える前に緊急配備で捕まえないと!」
陣馬「別人だったらどうするんだ。 」
伊吹「俺の耳は正しい。」
陣馬「あのなぁ、」
志摩が伊吹に近づいて
志摩「緊急配備までして”間違いだった”じゃすまないんだよ!」
積み上げてあったダンボールを蹴り
伊吹に近寄る
志摩「私たち警察は権力を持っているからこそ、慎重に捜査しなければならない。そのための規則で、そのための捜査手続きだ。奥多摩の交番から来た素人が、野生の勘だけでしゃしゃってんじゃねぇよ!!」
「俺までマウント取っちゃったじゃないか!! 」
「もうっ!」
伊吹「なんだかテンション上がってきた!!!ねえっ? 」
伊吹が陣馬達を見る
志摩が壁に頭をぶつけながら
志摩「今の状況で緊急配備は無理。」
伊吹「じゃあ、どうする?」
伊吹を見つめて
志摩「やるなら、ルール内でやる。」
「班長どうしますかー?」
陣馬「いいだろう。隊長に一報入れて、当番勤務が終わる朝の9時まで俺たちだけで白い車の捜索に当たる。」
「ただし!」
「他の事件の呼び出しが入ったらそっちを優先。」
陣馬と九重が車に乗り込む
志摩と伊吹が車に乗り込む
伊吹「オーケー。」
陣馬「警察のものなんですけども。ちょっと、防犯カメラの内容調べたいんですよ。店長さんに許可もらっていいっすか?」
店員「確認してきます」
店主「はい、どうぞ。」
伊吹に防犯カメラの映像が入ったUSBを渡す
伊吹「ありがとうございま〜す。」
志摩「ご協力ありがとうございます。」
伊吹「ほいっ、」
伊吹が志摩にUSBを渡す
志摩「自分で持て、おい。」
伊吹「おいしょっ、しょ…」
伊吹「どうも、こんばんは。警察です。ちょっと、防犯カメラの映像見させてもらってもいいですか?」
店員「はい。少々お待ちください」
伊吹「は〜い。」
志摩「最後の1店、もらいました。今から戻ります。」
大量にあるUSBを見て
九重「これだけの量、どうやって見るんですか?」
陣馬「1機捜専属の解析チーム、スパイダーの手を借りる。」
糸巻「隊長から連絡もらいました。偽造ナンバーの車両。」
志摩「はい、深川通りのおもちゃ屋の前を21時頃通過した白いステーションワゴンで、この時は多摩ナンバー。」
昨日のお昼の写真を見せながら
志摩「付近一帯の防犯カメラ映像をできるだけ集めました。」
「この車両の前足と、後足。その他何か情報があれば。」
糸巻「速やかに発見します。」
志摩「お願いします。」
伊吹「あと、もし映ってたら、この人探して欲しいんだけど。西田ふみこさん。 」
糸巻「あっ、」
転んだおばあさんの写真を見せる
伊吹「このおばちゃんね、絶対映ってると思うから。ねっ。」
「まきまき。よろしくお願いします!」
糸巻「はい、」
伊吹「志摩さんいくよ!」
志摩「お願いします。」
車の中で
伊吹「見つけたいなぁ〜。いたら絶対音でわかんのになぁ。」
志摩「伊吹さんさぁ、」
伊吹「うん?」
志摩「もし容疑車両見つけても昼間みたいな無茶、やめろよ。」
伊吹「合点承知の助〜。」
志摩「古っ」
少し間が空いてから
志摩「麻布中央署にいた時、犯人タコ殴りにしたってほんとか?」
伊吹「うん、ありましたね。そんなことも」
志摩「やめろよ。 あんたが不祥事起こせば、俺も陣馬さんも、隊長にまで迷惑かかる。」
伊吹「俺だってもう懲りましたよ。始末書何十枚も書かされて飛ばされるわ、怒られるわ。」
志摩「いっその事、懲戒免職になればよかったのに。」
伊吹「しかも、あん時は拳銃まで出しちゃったんですよねぇ。」
伊吹を見て
志摩「はぁ?」
伊吹が舌打ちをして
伊吹「犯人がクソみたいなマネすっからもう、売ってやろうかと思って。」
志摩「思うなよ!!軽々しく!」
伊吹「えっ?銭形警部とか”あぶない刑事“とか憧れなかった?」
「ほら、バンバン打つのとかさ!えーっ?」
志摩がため息をつく
志摩「現実の刑事は、9割が引退まで拳銃を抜かない。”撃たない”じゃない、”抜かない”んだ。それが日本の警察。」
伊吹「ふ〜ん。もっとラフでいいのにね。」
志摩「”いいのにね”じゃねーよ。」
伊吹が信号を見て
伊吹「ほら、青だよ。ほらちょっと、あっち回って。もう全然来ないよ、車とかさ」
志摩「はぁ…」
横を黒い車が通る
伊吹「あぁ、違う。いいよ。」
志摩がエンジンをかける
伊吹「ゴー」
白い車の容疑者が赤い車の鍵を取り出し
川に投げ捨てる
朝になる
陣馬「お疲れー。色々買ってきた。何にする?」
九重「何でもいいです。」
陣馬「じゃあ、お茶!」
袋からお茶のペットボトルを取り出す
九重「どうも。」
陣馬「九重、お前その姿勢疲れねぇか?」
九重「いえ。」
陣馬「ずーっと内勤だったのか?」
九重「現場にも行ったことあります。」
陣馬「犯人と対峙したことは?」
九重「…。」
陣馬「誰だって最初はある。」
腕時計を見て
陣馬「あと1時間。今日は空振りだな。」
伊吹「朝ごはんっ。朝ごはんっ。」
紙袋の中からコーヒーを出し、志摩に渡す
(伊吹のせきばらい)
志摩「こぼれるだろう、 フタ。」
伊吹「え、じゃあ飲みきっちゃえばよくない?」
志摩が呆れた表情で伊吹から目をそらして
ハンバーガーを食べる
伊吹「志摩さんさぁ、何かほっとしてない?」
伊吹もハンバーガーを食べる
伊吹「俺は犯人の車に会えなくて超ガッカリしてんのに。」
ハンバーガーを食べながら
志摩「してません。」
伊吹「いいや、してるね。ほっとほっとの匂いがする。」
志摩「何がほっとほっとだ。訳が分からない。」
反対車線から来る白い車に気づく伊吹
伊吹「反対車線、白い車。」
急いで食べていたハンバーガーを片付ける
伊吹「はい。」
九重「後ろから白い車が来ます!車種は同じです。」
陣馬が振り返って
九重「偽装でしょうか? 」
陣馬「確認しよう。」
サイレンを鳴らしながら
陣馬《白い車止まってください。品川300”へ”24-01。その先の安全なところで止まってください。》
伊吹「よしよしよしよし…」
追尾する
伊吹「全然音も聞こえないし、見えねぇな。」
白い車が左に曲がる
伊吹「左、左。」
九重「機捜401から警視庁。 」
無線《機捜401どうぞ。》
九重「車両の所有者照会1件願います。」
陣馬「すみません、警察ですー。」
九重「ナンバー品川2文字、数字300、平和の”へ”24-01」
無線《警視庁、了解。》
志摩「車両の所有者照会 お願いします。 世田谷3文字 数字300」
伊吹「すいません、警察です。」
志摩「新聞の”し”10-28どうぞ。」
無線《警視庁、了解》
(携帯電話の着信音)
志摩「もしもし」
糸巻「糸巻ですー。白い車ですが、後足を追ってみたらナチュルシードという会社に入っていきました。ナチュルシードは健康食品の通販の会社で、調べてみたら同型の白い車を社用車として登録しています。」
志摩「社用車…ちょっと待って、犯人の本当のナンバーがわかったってこと? 」
九重が車から出てきて運転手の免許証を陣馬に渡す
九重「問題ありません。」
九重が車に乗り込む
糸巻《登録ナンバーは品川2文字。平和の”へ”24-01。》
陣馬「お待たせしました。」
安本「何かあったんですか?」
陣馬「えぇ、」
九重が車のナンバーを見て 止めた白い車のナンバーと犯人のナンバーが一致していることに気づく。
陣馬「この辺り、事故が多くて…」
九重「陣馬さん、 その車です!!」
九重が車から急いで出てくる
九重「品川300”へ”24-01!!!」
白い車が逃げる
急いで車に乗り込む陣馬と九重
陣馬「行くぞ!!」
(サイレン)
志摩が車を急発進させる
伊吹《はい、緊急車両出ます。緊急車両ー。》
伊吹「ほいほいほい〜」
陣馬《機捜401から警視庁。昨日、墨田署曳島で発生した重症傷害事件の容疑者車両が逃走。 》
陣馬「元墨田から兼平通り方向。」
陣馬《車両は白のステーションワゴン。品川300”へ”24-01。》
伊吹「緊急車両通過、緊急車両通過!」
スピードを出し、車が揺れる
伊吹「おいっ、おい!攻めるねぇ〜志摩ちゃん!」
(エンジン音)
伊吹「いたいたいた!」
白い車を見つけた伊吹
志摩「追いついた。」
伊吹「はい、品川ナンバー。白のステーションワゴン止まりなさい。はい、スピード落として!」
前にトラックが
伊吹「わっ!あぶないっ!」
志摩がギリギリで避ける
伊吹「よっしゃっ!」
伊吹《運転手さん、危ないですよ。事故起こしますから、止まってください。 》
安本「……。」
伊吹「あいつ聞いてんのかよ……」
白い車と横並びになる
伊吹《はい、白い車止まってください》
信号が赤になり、通行人が横断歩道を渡る
それに気づく伊吹
伊吹《赤だ!止まれー!!!》
さらにスピードをあげて、白い車を追い越す志摩
伊吹が困惑した表情で志摩見つめる
志摩も伊吹を見つめる
志摩の車が白い車の前に出て白い車が衝突する
志摩「あっ」
志摩「止まれぇー!!!」
さらに志摩の車が一回転する
通行人は呆然と見つめている
そこに陣馬達が到着する
陣馬「ブレーキ!おい、ブレーキ踏め!」
急ブレーキをしてギリギリで止まる
犯人の白い車は逃走する
陣馬・九重「はあっ…」
志摩「うぅっ…おい、生きてるか…?」
志摩は右手の甲を怪我している
伊吹のサングラスが転がっている
伊吹「ううっ」
陣馬が車から出てくると同時に
伊吹が車から出てきて、数回その場でジャンプし、安本の車目掛けて走り出す
陣馬「大丈夫か!?」
横転して、横になった車から顔を出す志摩
志摩「う…ううっ、」
(走る足音)
伊吹が走っているのを見つめる志摩
何かを思い出したように
志摩「あっ…足が速い。 」
伊吹が走っている
志摩が車から出る
志摩「事故車両、お願いします。」
陣馬が車に戻り
ハンドルにうずくまっている九重
九重「はぁっ…はぁっ」
陣馬「事故を起こさなかった、上出来だ。」
九重「はい…」
志摩も走りながら
志摩「今、どこだ!伊吹〜!! 」
走りながら
伊吹「亀谷町8-4、容疑車両は芝浦方面! 」
「志摩!」
志摩「何だ!」
伊吹「秘密の近道教えろ! 」
志摩「ねぇよ!!!!」
伊吹「はぁっ?お前、使えねぇなほんとに!」
さらにスピードをあげる伊吹
安本「あぁっくそっ!行き止まりだ!」
(サイレン)
前から伊吹が走ってくる
伊吹「おっ」
安本「何だよ!」
スピードを出して伊吹に近づく
伊吹と衝突する
伊吹「あ痛っ……あー、痛てっ!おい!ちょっと待て、コラッ!あ痛てっ 」
痛そうな声で
伊吹「芝浦大橋…正面の倉庫街に入った。」
志摩「余計なことするんじゃねぇぞ!」
安本が走って逃げる
1番手前の倉庫に隠れる
警察が通りすぎていく
伊吹「あぁ、痛ってぇな、ほんとに」
伊吹が1番手前の倉庫にいる犯人に気づく
安本「ふっ!」
安本が倉庫の中に逃げる
伊吹「おいっ」
倉庫に入る
伊吹「おい、ちょっと落ち着こうぜ。 」
警戒しながら
伊吹「これ以上、積み重ねんのやめようぜ、なっ?」
伊吹「大人しく出てきてくれよ。なっ?」
伊吹「ちゃんと話そう。おーい、聞こえてるか?なぁ、」
隠れている安本に気づく
伊吹「あっ、」
安本「あっちが先に煽ってきたんだ!」
伊吹「落ち着けって、お前何なんだよ 」
安本「たかが交通違反だろうが! 」
追いかけっこになる
伊吹「あぁっ、おい…!うわっ、」
金属を投げる
伊吹「おい、お前今の当たったら死ぬだろう。いい加減にしろよ、お前。」
伊吹に体当する
安本「ううっ! 」
伊吹「うっ、」
安本「ちょっと殴っただけだろう」
伊吹「お前これ以上ねぇぞ」
安本「うりゃっ!」
鉄の棒で伊吹に殴り掛かろうとするが逃げる
伊吹「お前!」
追いかける伊吹
しかし、足元にあったダンボールにつまづいて転んでしまう安本
安本を取り押さえる伊吹
立ち上がって逃げようとする安本
それを阻止しようと伊吹
(金属音)
通りかかった志摩が金属音がした倉庫に入る
志摩「おい、伊吹!」
暴れる安本に拳銃突きつける伊吹
伊吹「ほら、動くな。 」
安本「……!」
伊吹「ほら両手上げろ。」
怯えながら両手をあげる安本
伊吹「はい、素直でよし。」
伊吹たちを見つけた志摩
伊吹「苦しまずに殺してやる。 」
安本「はぁっはぁっ……!」
伊吹「なっ?」
志摩を見つめる
伊吹「もう〜、志摩ちゃん遅いよ〜。こいつ撃っちゃってもいいよね?」
志摩「銃下ろせ。」
伊吹「……。」
志摩「相手は降伏してる。」
伊吹「ひかれた、殺されかけた。正当防衛だよ。」
志摩「発砲の要件にかなってない。」
伊吹「規則なんてどーでもよくない?「」
「誰も見てない。防犯カメラもない。ここにいんのは俺と志摩ちゃんと、このクソ野郎だけだ。」
安本「許してくださいぃ!」
伊吹「お前みたいなやつが生きてるとみんな不幸になるんだよ。 許せるはずねぇだろうがよ。」
「はい。死んだら終わり。死人に口なしだ。」
志摩「やめろ」
伊吹「バイバイ。」
志摩「やめろ!!!!!!!」
ステッキ《はばたけ空に!チェンジあんどソウル!!》
突きつけていたのは拳銃ではなく、おばあちゃんが落としたおもちゃのステッキだった
志摩「……。」
伊吹「ハハッ、だーから懲りたって言ったじゃーん!もう銃は抜かないよ。どーせ撃ったって当たんないしね。だったら、走ってとっ捕まえて殴った方が早いよ。」
志摩が伊吹に近づき伊吹を殴る
伊吹「うっ、あっ!」
床に倒れ込む
逃げようとする安本を志摩が捕まえる
伊吹「あっ、あっ、痛ぇっ…?痛ぇ?何?」
志摩が腕時計を見て
志摩「あぁ、すごい。9時ちょうど。公務執行妨害、道交法違反、傷害に器物破損といろいろ。」
伊吹「何で?」
志摩「いいですね?」
伊吹「”いいですね”じゃないっしょ。」
安本に手錠をかける
床に倒れ込んでいる安本に
志摩「起きろ。」
伊吹が安本の前にしゃがみこんで
伊吹「あぁ。良かったな。」
志摩が伊吹を見つめる
伊吹「誰かを殺す前に捕まって。」
安本が伊吹に唾を吐く
伊吹「うっ、」
少し間が空いてから
伊吹「てめぇ、ぶっ殺してやる!!!」
志摩「はいはい…やめろ、やめろ」
糸巻「糸巻です。探してた西田ふみこさん、見つかりました。」
警察官「路地を歩いてるのが映ってたんです。防犯カメラのある場所で幸いでした。空き家に迷い込んで、立ち往生してたんです。」
千砂の母「ほら、おばあちゃん来たよ、おばあちゃん来たよ。」
おばあちゃんにかけよる千砂
千砂「おばあちゃん!」
それを静かに見つめる伊吹と志摩
千砂の父「ありがとうございました。」
桔梗「警察庁が道交法を改正して、新しくあおり運転罪が作られることになりました。摘発されれば一発で免許取り消し、懲役刑も有り得る。施行されるまで現在の法制度にのっとって安全に留意して対応してください。」
志摩・伊吹・九重・陣馬「「はい」」
伊吹「お疲れ様でした。」
立ち去ろうとする伊吹を止める志摩
桔梗「で?」
「なにをどうしたら1日で車が廃車になるの?」
志摩「申し訳ありませんでした。」
伊吹「でも、犯人は捕まえました。」
桔梗「今それ言う?バカなの?」
伊吹「うん?」
志摩「すいません、もう…めっちゃくっちゃバカなんです。 」
伊吹を指さしながら言う
伊吹「うん?」
陣馬「隊長、お土産がありますよ。犯人とお土産が。」
「犯人の会社はハーブと称してマリファナを扱っていました。運転時にも摂取していた可能性があります。」
伊吹「俺ら、お手柄っすよね?」
桔梗「人は足りないし、車も足りない。予算は限られてる。どんなに極悪な犯人を捕まえようと、1日で車を廃車にする人間は桔梗には置けません。次は無い。分かった?」
伊吹・志摩「はい。」
伊吹「引き継ぎを終えたら、帰ってよし。」
伊吹「お疲れ様でした。」
陣馬・九重「失礼します。」
志摩「失礼します。」
桔梗「志摩、残って。」
志摩「はい。」
隊長を見つめる伊吹
陣馬「ほら、行くぞ!」
伊吹を連れて部屋を出る
陣馬「山ほど書かなきゃならない書類があるんだ。」
伊吹「24時間どころか30時間以上働いてるんですけど。」
桔梗「志摩から見て、伊吹はどう?」
志摩「……。ただのバカだと思ったら、野生のバカでしたw 刑事の常識から教えなくちゃならない。」
桔梗「適性がないのなら外すけど。」
少し間が空いて
志摩「う〜ん…」
数時間前
おばあちゃん「刑事さんが見つけてくれたのよ。」
おもちゃのステッキを見せる
おばあちゃん「千砂ちゃんが欲しかったおもちゃ。」
千砂がおばあちゃんに抱きつく
千砂「おばあちゃん、ごめんね。」
おばあちゃん「どうしたの?謝ることないよ〜。なんにもないよ。ねっ。」
志摩を見ながら伊吹が微笑む
千砂がおばあちゃんと手を繋いで水たまりに飛び込み、笑い合う
伊吹「機捜っていいな。」
志摩が振り返る
伊吹「誰かが最悪の事態になる前に止められるんだよ。ちょーいい仕事じゃーん!なっ?ふふっ」
志摩が伊吹を見つめる
志摩「……。」
志摩「ひとまず…。保留でお願いします。」
微笑みながら
志摩「ひとまず。」