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伊吹「えー、機捜404から1機捜本部。担当区の密行終了。分駐に戻りました、どうぞ。」
無線《1機捜本部、了解 》
志摩「っしゃあ」
伊吹「あ。大事なこと思い出した。」
志摩「あっ?」
伊吹「ここんとこさ、毎晩寝る前、あれを志摩に言っとかないとって思ってたんだよな。」
志摩「毎晩思いながらも忘れるってことは大したことないんじゃないの?」
伊吹「毎晩思い浮かべるんだぞ、毎晩寝る前その顔を。」
志摩を見て
伊吹「嫌だろ? 女の子の”きゅる”っとした顔思い浮かべながら寝たいだろ。」
志摩「まず、その”きゅる”がよく分かんない。」
伊吹「いや、例えばほら…」
志摩「だからそういうふうに話が脱線するから、言い忘れんじゃないの?」
伊吹「あっ…あっぶね、あっぶね。」
志摩「で、何?」
志摩が車から出る
伊吹「謝ってもらってない。」
志摩「は?」
伊吹「俺を殴ったよな」
〜蘇る記憶〜
志摩「やめろ!!!!」
伊吹にかけよる
ステッキ《はばたけ空に!チェンジあんどソウル!!》
突きつけていたのは拳銃ではなくおもちゃのステッキだった
伊吹「懲りたって言ったじゃーん!もう銃は抜かないよ。」
志摩が伊吹を殴る
〜〜〜〜
伊吹「暴行障害。あ〜痛かったなぁ、」
志摩が目をそらす
伊吹「食いもんがしみて飯も食えない。3キロは痩せた。」
志摩「夜、めちゃくちゃつけ麺食ってた。」
伊吹「”ごめんなさい”は?”殴ってごめんなさい”セイ!」
振り返って
志摩「俺も言い忘れたことがある。」
伊吹「ん?」
志摩「俺たちはどうしてこんな車に乗ってるんだ?」
可愛らしい緑色の”まるごとメロンパン”の車に乗っている
桔梗「あれね、張り込みに時々使ってた警察車両。他に余ってる車ないんだから、しかたないでしょ。」
伊吹があくびをする
伊吹「てか、4機捜の車って他にもありますよね?」
《当番》 岩坂 乾 鈴村 鈴木
《非番》 陣馬 志摩 九重 伊吹
伊吹「それ、俺たちが当番の時貸してくださいよ。」
桔梗「志摩ー。」
志摩「はい。」
桔梗「他のチームが車、貸してくれると思う?」
〜蘇る記憶〜
車が衝突して一回転する
〜〜〜〜
志摩「……。俺なら絶対貸さないっす。」
伊吹「何でだよ。」
部屋に入る
伊吹「いや、あのメロンパンスピード出ないんですよ。」
桔梗「おはようございます。」
陣馬・九重「おはようございます。」
伊吹「おはようございま〜す。」
志摩「お疲れした。」
伊吹「いざって時に犯人が追えない。何のための機捜ですか?」
桔梗「あのね、うちは交通機動隊じゃないの。刑事部の機動捜査隊。事件発生時はいち早く現場に到着して、初動捜査にあたる。機動力は必要だけど、交通法規は守らなきゃいけないし、スピード出して走ればいいってもんじゃない、志摩! 」
志摩を見つめる
桔梗「文句は…ないよね?」
間が空いて
志摩「ありません。」
伊吹「うわぁ〜、ふつーに嘘ついた。さっきまであんな文句言ってたじゃん。”どうしてこんな車なんだメロンパンだぞ、メロンパン”ってメロンパン100回ぐらい言ったじゃん。」
志摩「メロンパン10回程度しか言ってない。」
伊吹を見る
志摩「俺が言いたかったのは、どうして俺たちはこんな車に乗っているのか。お前と組んだせいであのメロンパン号…」
伊吹「ほらまたメロンパン。メロンパン魔人」
志摩「お前と組んだせいであの車に乗るはめになったという事実を述べただけだ。」
伊吹「それ文句でしょ?」
桔梗「仲が良くて何より。」
志摩「仲良くないです。」
桔梗に近づいて
志摩「車という密室で長時間2人っきりでいる以上円滑なコミュニケーションを心掛けないとさらに苦痛になるので多くの問題点はある程度目をつぶって妥協点を見いだすべく努力している最中です。」
桔梗「そう。」
伊吹「朝からよくそんなに口回るよね」
志摩「”ね”じゃねぇよ。隊長だ。 」
伊吹に向かって
桔梗「口回るよね。」
伊吹が桔梗に近づいて
伊吹「ね〜」
志摩「隊長、伊吹を甘やかさないで。」
桔梗「問題を起こさず仕事してくれれば何でもいい。」
九重「あの…」
志摩「問題起こします。」
九重「お話中に横から失礼します。先ほどから仕事外の雑談をしているように見受けられますが、少し…」
伊吹「出た、口回るパート2」
桔梗「どうぞ。」
伊吹に
陣馬「桔梗に持ってって」
九重「この部屋はなんですか?」
辺りを見渡しながら
桔梗「何って、4機捜の分駐所。」
「芝浦署のすぐ裏なんて、いい立地でしょ?今建て替えのお金が無いから、しばらくこのまま。」
九重「こんなにラフでいいんですか?本部の方がよかったです。 」
桔梗「”あそこはもう使わせません”って総務から怒られたの。窓からうどんの湯切りした人がいたって。」
陣馬「誰だそんなけしからんことをしたやつは! 俺だぁ。ハハハハハッ」
伊吹「ハハハハハッ」
桔梗「贅沢言わずに使えるものは使う。無線も、保管庫も、必要最低限のものは入れたから。あとは、創意工夫でやってください。」
志摩に近づいて
桔梗「”安全に”よろしく。」
志摩・伊吹「はい。」
桔梗「おやすみなさい」
伊吹「おやすみなさ〜い」
夜
無線《警視庁から墨田酩酊状態の男が寝ているとの通報 》
無線《近隣住民からの騒音苦情 入電中》
無線《…路上にて、ケンカ口論中との110番 入電中》
次の日
女子高生1「えっ、見て見て。まるごとメロン!」
車に近づき
女子高生1「まるごとってなにごと!?」
女子高生2「ハハハハハッ」
車を叩く
女子高生1「あのー!1ついくらですか?」
伊吹「え?」
女子高生1「1ついくらですか?」
志摩「反応するな」
女子高生1 「メロンパン!」
伊吹「えっとね…」
志摩がメロンパン号の窓を開けて
志摩「ごめんね、今ね売り切れなんだ。」
女子高生1「あっ、いちご味でお願いします。」
志摩「いちご売り切れなんだ。」
伊吹「いちご味いいね〜」
志摩が信号を見て
志摩「おい、青 青 青…早く早く」
伊吹「分かってるよ」
女子高生1「食べたかったね」
女子高生2「次食べる?」
志摩「はぁ…」
伊吹「メロンパンいくらにする?1個1000円かな?」
志摩「高いだろ」
伊吹「えっ、だってメロンまるごと入ってんだろ?」
志摩「いや、入らない。メロンまるごと入るパンってどんだけでかいんだよ。かばんの中に入んないよ。」
伊吹「どゆこと?」
志摩「だから、まるごとっていうのは雰囲気、例えだよ。比喩。」
伊吹「え〜!ガッカリ。」
志摩「お前にガッカリだよ。」
伊吹「もう、夢見ちゃったな。おばちゃん!メロンまるごと入ってないんだって!!」
志摩「誰だよ、誰に話してんだよ」
伊吹「えっ、隣の車さっきからずっとこっちみてんの。うーん…」
伊吹「おばちゃ〜ん!」
志摩「おいおい」
伊吹「おばちゃん、今日メロンパン売り切れ」
伊吹の肩を叩きながら
志摩「やめろやめろ、もう」
伊吹「だってめっちゃ目合うんだって」
志摩「いや、パン屋じゃねぇよ」
伊吹「何が?」
隣の車を見ながら
伊吹「ん?」
隣の車の女性が伊吹に目で何かを訴える
信号が青になり、車が進む
その時車のトランクから女性を掴む黄緑色のジャンバーを着た男の手が見えた
伊吹「…」
志摩「前、動いてる、伊吹」
伊吹「あっ、うん。」
志摩「310円」
伊吹「何が?」
志摩「メロンパンに400円以上は出せない。」
伊吹「いつまでメロンパンの話してんの?」
志摩「お前がメロンパンの話したんだろ、おい!」
左車線にいたが右車線に移動する
無線《警視庁から各局、品川区西森で発生した殺人事件の容疑者が現状から逃走。》
志摩「近いな」
無線《容疑者は28歳男性、黄緑のジャンパーにジーパン。痩せ型。凶器を所持してるもよう》
部屋の色々なところに血の手形がついている
伊吹「前の車」
志摩「ん?」
ちょうど赤信号になる
伊吹「あっ、ダメだ逃げられる」
伊吹が急発進しようとする
志摩「おおっ待った待った待った…」
それを志摩が止める
女性が乗っていた車が進んでしまう
伊吹「もう何すんだよ!」
志摩「赤だ。」
伊吹「逃げられちゃうだろ?」
志摩「前が詰まってる、平気だ。あの車がどうした?」
伊吹「容疑者が乗ってる。」
伊吹を見て
志摩「はっ?」
伊吹「さっき一瞬、おばちゃんのフード掴んだ腕が見えた。袖の色は黄緑。逃げ出した容疑者と着衣が一致。」
志摩「待て待て待て、見たのは袖だけ?」
志摩を見つめて
伊吹「だけ。」
志摩「一瞬。」
伊吹「一瞬だけ見た。」
志摩「袖だけ?」
伊吹「何?もう何度も聞くなよ。メロンパンの次は袖袖魔人かよ。」
女性の乗っている車
加々見「はぁ…はぁっ…」
女性に凶器を突きつけている
志摩「黄緑の服着たやつが都内に何人いると思ってんだよ。」
伊吹「…。」
志摩「一瞬見た袖の色だけで、容疑者が乗ってるなんて誰が信じるんだよ。 」
伊吹「様子がおかしかったの。おばちゃんも、運転してたおっさんも。マジで。」
志摩「袖だけだろ。」
伊吹「だけ。」
少し間が空いて
志摩「はぁ…」
「走る…人質監禁立てこもり?」
伊吹が志摩を見つめて
伊吹「うんうんうん…うん!」
前を向いて
伊吹「あっ。ちょっと…」
志摩が無線を手に取る
志摩「機捜404から1機捜本部。こちら志摩です。」
伊吹がにやける
志摩「隊長をお願いします。どうぞ」
桔梗「こちら1機捜本部、桔梗です。どうぞ」
志摩《西森の殺しの現場から逃走した容疑者が乗っているかもしれない車両を見つけたかもしれないって》
志摩「言ってる奴が隣にいます。」
伊吹「”かもかも”かよ。」
桔梗「ふんわりしてんな。」
志摩「対象車両は品川2文字。数字100平和の”へ”27-77。確認のため、追尾許可をお願いします。 」
伊吹「お願いします! 」
志摩「どうぞ」
伊吹「どうぞ」
桔梗《追尾を許可する。くれぐれも慎重に。》
伊吹「は〜い!了解ー!!」
志摩「くれぐれも慎重に。」
伊吹「合点承知の助」
隊員「陣馬さーん!」
陣馬「あっ、」
隊員「容疑者を見つけたかもしれないって?」
陣馬「いや、まだまだなんか、その…ふんわりした話なんで…」
「お前、九重!何やってんだよ!おい、」
九重「すいません」
九重「容疑者は専務の松村幸弘第一発見者は社員の仙田で、今朝いつも通りに出勤したところ…」
〜〜〜〜
仙田「お前…」
血だらけの加々見が慌ただしく部屋から出ていく
〜〜〜〜
階段を降りながら桔梗に電話する
九重「逃走したのは加々見崇。入社は8年前。」
階段にいる鑑識さんにぶつかりそうになる
九重「すいません、遅刻や欠席もない真面目な社員だそうです。荷物はそのままで財布も中に入ってました。」
桔梗「加々見は車の免許は?」
第一発見者の仙田に聞く
九重「車の免許は持ってましたか?」
仙田「いえ、運転できないって言ってましたよ。」
スマホを耳に当てて
九重「運転はできません」
谷山「桔梗さん!登録者わかりましたよ。」
桔梗「財布を持たずに飛び出して、逃げるために通りがかりの人を車ごと拉致した可能性はある?」
谷山「うん。」
桔梗「404が追ってる車、ナンバーから登録者が分かった。近くだから行ってきて。」
九重「404が追ってる車の持ち主の家へ行きます。」
陣馬「あぁ…」
九重「何ですか?」
陣馬「いや、血が付いてねぇなと思ってさ」
九重「血?」
陣馬「遺体の周り。掌紋がベッタベタ付いてる。見たところ両手ともある。」
何かに気がついたように
九重「加々見の手はドアを開ける時は汚れてなかった!」
陣馬「何でだろうな。」
九重「言わなくていいんですか?」
陣馬「機捜も捜査1課も見りゃ気づく。」
九重「加々見が犯人じゃない可能性があるんじゃないですか?」
階段を降りながら
九重「第一発見者は加々見が刺すところは見ていません。」
陣馬「じゃ、誰がやった?」
九重「加々見の前にいた人物。血の掌紋も、その人物のもの。」
陣馬を見つめながら
九重「初動は大きく見ろって、陣馬さんがおっしゃいましたよね。」
陣馬「血の掌紋が誰のものかだな。鑑識に任せとけ。」
陣馬が外へ出ていく
陣馬「どうもありがとうございました!!」
九重が陣馬について行こうとするが、
仙田の前で1度立ち止まる
凶器を向けて
田辺「あの…!妻を放してやってもらえませんか。」
加々見「着いたら放すって言ってんでしょ!」
早苗「あっ!ああっ!」
田辺「すいません!すいません。やめてください。」
早苗「あっ…あっ」
伊吹「ねぇ、やっぱ乗ってるよ、3人目。頭がちらちら見える。」
志摩「服の色までは見えねぇな。」
伊吹「前出て止める?」
志摩「どうやって?」
伊吹「ぶつければ止まる。」
志摩「次はないって言われたろ」
伊吹「だよね〜」
志摩「まだ犯人かも分かんないのに。」
伊吹「だから犯人だって言ってんじゃん」
志摩「仮に犯人だとしても人 1人殺してるんだよ。刺激しないほうがいい。車から降りるまで待つ。」
伊吹「超消極的解決」
志摩「安全な解決」
伊吹「あ。安全って言えなくなってきたな。」
志摩「マジか…」
伊吹「検問だ。」
慌てた様子で
加々見「曲がれ!早く!」
田辺「もう無理です…!」
加々見「余計なこと話したらこの人刺す!!」
車のトランクから後部座席に移動する
伊吹「お〜。ほら、ほらやっぱ乗ってる。 」
志摩を見つめながら
伊吹「ねぇ、ちょっと無線送る?」
志摩「間に合わない。すぐ出られるよう待機。」
警察官「ご協力感謝します。」
小さな声で
加々見「おかしなことしないでください。」
後部座席で寝たフリをする
(ノック)
窓を開ける
田辺「何でしょう。」
警察官「近くで事件がありまして、免許証を見せてください。」
頷きながら
田辺「バックの中、免許証。」
早苗「はい。」
警察官に免許証を渡す
田辺「事件ってどういう?」
警察官「殺人です。容疑者が逃亡してます。」
少し緊張した空気が流れる
警察官「後ろの方は?」
伊吹「ねぇ行く?行かない?行く? 」
志摩「落ち着け」
伊吹「行かない?行きたい!ねぇ!」
志摩「落ち着け」
容疑者が乗っている車の検問が終わる
伊吹「あ。終わった。」
メロンパン号の窓を開ける
伊吹「前の車、容疑者乗ってたよ。」
警察官「えっ?」
志摩が警察手帳を見せながら
志摩「すいません、機捜です。ちょっと急いでて。」
伊吹「あの後部座席の黄緑の男。」
警察官「いえ、息子さんでした。」
伊吹「息子?」
警察官「はい。話も具体的で。」
〜〜〜〜
警察官「後ろの方は?」
緊張した空気が流れる
田辺「私の息子です。具合が悪くて病院に。 」
警察官が少し怪しむ
田辺「名前は、秀則…田辺秀則。1991年4月14日生まれ。今年で…28歳になります。 」
早苗が少し悲しそうな表情をする
田辺「中学の時の写真ですけど、」
〜〜〜〜
志摩「すいません。ありがとうございました。」
警察官「ご苦労様です。」
伊吹「う〜ん…。 」
窓を閉める
伊吹「いや、俺はそれでも犯人だと思うんだけどな。」
志摩「だから。行くぞ」
伊吹が志摩を見つめる
志摩「早く出せ。見失う。」
伊吹がにやにやする
伊吹「いいね〜!」
車が出発する
田辺「はぁ…」
早苗が財布を手に取る
田辺「はっ。息子…。”息子の秀則です”ははっ。」
笑い出す
加々見「何?」
田辺「いや、すまない」
財布に入っている家族写真を見て悲しそうにする
志摩「東京を出ちゃうな。」
伊吹「えっ、越えたらダメなの?」
志摩「機捜404から1機捜本部。国道15号で神奈川へ入る。捜査共助課への報告と通信情報部への広域通信リンク依頼を願いたい。」
機捜401が田辺家へ着く
ピンポンを押す
(チャイム)
誰も出ない
陣馬「隣に聞こう」
九重「伊吹さんが見たのは容疑者が着ていたのと同じ色の服の袖。それだけですよ。信憑性があるとは思えません。」
陣馬「容疑者が乗ってたらどうする?」
九重「99パーセント無駄です。」
陣馬「ハハッ、分かってんじゃねぇか。俺たちの仕事は99パーセント無駄だ。」
隣の家のピンポンを押す
(チャイム)
窓から
女性「はい。」
陣馬「あっ。あの、警察官です。」
警察手帳を見せる
陣馬「ちょっとご近所のことでお伺いしたいんですが。」
女性「はい。少々お待ちください。」
陣馬「すいません。」
九重「志摩さんがどうして伊吹さんの暴走に付き合うのか理解できません。」
陣馬を見る
九重「優秀だったって話ですけど。」
陣馬「”優秀だった”?」
九重「失敗したんですよね。捜査1課で。それで飛ばされた。」
陣馬が遠くを見つめる
九重「私だって、来る前に情報収集くらいしましたよ。」
陣馬「失敗の内容は?聞いたのか?」
九重「志摩は、相棒を殺した」
志摩が窓の外を見ている
伊吹「俺のこと、信じてくれるわけ?容疑者が乗ってるって話。」
少し間が空いて
志摩「あっ、信じてない。 」
伊吹「何だよっ!」
志摩「さっきの警官も信じてない。可能性がゼロになるまで確認はする。」
伊吹「あぁ。”他人も自分も信じない”だっけ?」
志摩「…。」
伊吹「俺さ。昔からめっちゃ職務質問されんだよね。」
志摩「だろうな。」
伊吹「学生の時も、学校で備品がなくなったっていやぁ、教師が”伊吹じゃねぇか”っていっつも俺が疑われてさ。」
「もう言い訳すんのも嫌んなって、信じてくれなくていいや。だったら俺も、誰も信じない。」
志摩が伊吹を見つめる
伊吹「でもさ、いたんだ。たった1人だけ、信じてくれた人がさ。」
志摩を見つめながら
伊吹「志摩ちゃんも、俺のこと信じてくれてもいいんだぜ。」
志摩「結構です。」
伊吹「何だよ!」
志摩の携帯が鳴り出す
(携帯電話の着信音)
伊吹「”結構です”すっごい嫌。」
スピーカーにして電話に出る
志摩「はい。」
陣馬「田辺夫妻には確かに息子がいた。」
陣馬《名前は田辺秀則。だけどもう死んでる。》
志摩「死んでる?」
陣馬《高1の時に自殺した。12年前の今日だ。》
加々見がウエットティッシュで血まみれの自分の手を拭く
ティッシュで擦るが、なかなか取れない
田辺「今日は息子の命日なんです。十三回忌。これから2人でお墓参りに行くとこでした。」
加々見「そんな話されたって解放したりしない。」
田辺「生きてたら、君と同じくらいの年なんだよ。」
加々見「はっ?」
田辺「改めて見ると、少し似てるな。」
早苗「ほんとね。目の辺りと、この辺も。」
田辺「なんだか運命みたい。」
加々見「やめろ!!」
凶器を早苗にむける
加々見「僕は今、あなたたちを脅してるんだよ。」
志摩が犯人の車を見つめる
早苗「ホントに、人を殺したの?」
志摩が耳につけている無線を外す
伊吹「ん?どうしたの、志摩ちゃん。」
志摩「ちょっと待ってろ」
志摩が車から降りる
伊吹が志摩を見つめる
加々見が首を振る
加々見「僕はただ…毎日普通に働いて、今日だってただ…会社に行って、専務と話をして…」
〜〜〜〜
ベランダで体操をしている専務
加々見「みんな困ってるんですよ!今の人数で回るはずないのに。業績の責任を、社員とバイトのせいにされても困ります!」
〜〜〜〜
早苗が加々見をじっと見つめている
田辺「信じる。」
加々見が田辺を見る
田辺「私は君を信じる。」
頷きながら
早苗「私も。」
加々見「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
志摩が窓をノックする
早苗「誰?警察?」
田辺「私に任して。 」
早苗「見えないように寝たふりして。」
加々見が早苗の肩に寄りかかり寝たフリをする
田辺が車の窓を開ける
田辺「なんですか?」
後ろを指さして
志摩「バックドア。開いてますよ」
田辺「えっ?」
志摩「挟まったものが外に飛び出して、ベローンってしてます。」
田辺と早苗が困惑した表情をする
田辺「あぁ、急いでるんで、ほっといてくれませんか。」
志摩「そのベローンを後続車が巻き込んで、事故ったらどうするんですか。よかったら私が閉め直すんで。」
加々見が凶器を握りしめる
志摩「一旦、バックドア開けてもらっていいですか?」
田辺「あぁ。お願いします…」
志摩が車の後ろに回り、 バックドアを開ける
志摩「あぁ、これか!」
バックドアを閉める
志摩「こんなん挟まってました。」
万国旗を見せる
田辺「いや、うちのものでは。」
志摩「捨てときましょうか?」
田辺「あっ。ありがとうございます。」
志摩「はい。どうも」
後部座席の加々見を見ながら去っていく
加々見がちらりと後ろを見る
伊吹が怪しそうに見つめる
志摩が車に戻る
伊吹「どうだった?」
車のドアを閉めてシートベルトをつける
志摩「服装一致。凶器らしきものを握っているのも見えた。恐らく加々見だ。」
伊吹「ほら見ろ〜」
志摩「車内にボイスレコーダー置いてきた。」
伊吹「ん?」
志摩「録音した音声をBluetoothでこっちに飛ばして同時に再生する。」
伊吹「盗聴?やるね〜違法捜査。」
志摩「違法じゃない。拉致監禁が現在進行形で起こってるとすれば、状況把握に必要な処置となる。」
伊吹「ふ〜ん。」
携帯を車の無線の前に置く
志摩「被害者の安全が確保できるまでこのまま尾行。追跡。」
伊吹「了解」
志摩「Bluetoothはクラス2だから、10メートル以内じゃないと接続できない。」
伊吹「はっ?もっと早く言えよ。」
速度をあげる
志摩「法定速度。」
伊吹「はいはい。」
志摩が少し伊吹に近づいて
志摩「伊吹、ちょっと電話貸して。 」
伊吹「うん?えっとね。ズボンの左ポッケ。」
志摩「左ポッケ?」
伊吹「うん。そうそう…」
伊吹の左ポッケを漁る
伊吹「あっ、ちょちょちょちょ…ちょっともう〜」
志摩が引き気味の表情で
志摩「何にもしてねぇよ。」
伊吹「触ったでしょ。今。 」
志摩「陣馬さん。対象の車両に紫色の花。恐らく菖蒲の花束です。購入店舗はフラワーショップ松木。前足、探ってください。」
伊吹の携帯をポッケに戻す
伊吹「あっ、ちょちょちょ!だから…」
加々見《父親は》
志摩「おっ、来た来た来た来た。」
加々見《僕が何をしても気に入らなかったんです。》
《親父の言う通りにしないと認めてもらえなかった。》
《自分が全て正しくて、反対する人間は全て間違ってる。親父はそういう人です。》
《だから高校卒業してすぐ家を出て、東京に出たんですけど。当てもないから、しばらくは日雇いでネットカフェに寝泊まりして、半年くらい経った頃、偶然… 》
加々見「岸に会ったんです。」
伊吹と志摩が携帯を見つめる
加々見「岸は僕の中学の同級生で、事情話したら”じゃあうちの会社来いよ”って、紹介してくれたんです。」
田辺・早苗「…。」
加々見「それでようやく月給もらえて、アパートにも住めて有給までもらえるようになって。」
伊吹が微笑む
加々見《人間らしい暮らしが出来るようになりました。》
加々見「岸は…僕の恩人です。」
伊吹「良い奴じゃん。」
ー警察署ー
谷山「岸という社員は確かにいたらしんですが、先週クビになってますね。」
桔梗が谷山を見つめる
谷山「クビにしたのは殺された専務。」
(ノック)
ドアから顔を出して
糸巻「失礼します。被害者を中傷するツイートを発見したんですけども。」
谷山「いいから、入れよ。ほら。」
糸巻を部屋に入れる
糸巻「”ウチクリンの松村幸弘はパワハラ野郎で天誅上等!”アカウントは”キシ”」
桔梗「岸はどこにいるの?」
谷山「実家に帰ると言っていたそうです。実家は山梨。」
桔梗「404が追ってる車の行き先って… 」
志摩「御殿場を超えて、国道138を富士山田方面へ向かいます。」
加々見《みんなパワハラの被害に遭ってて、あんまり酷いから岸が怒って専務を殴ったんです。》
伊吹「そりゃ殴りたくもなるわ。」
早苗《殴っていいわよ。そんなパワハラ上司。》
伊吹「いや、うん。だよな。殴っていいよ、いいよ。」
加々見《でもそれで岸はクビになっちゃって、》
伊吹「え〜」
志摩が腕を組みながら
志摩「上司殴ったらなるな。」
伊吹「いや、殴ってクビになるなら俺を殴った志摩もクビじゃないとおかしい。」
田辺《パワハラのこともっと上の人に話したの?》
志摩「この夫婦、ホントに人質か?」
伊吹「はい。話しそらした〜!」
志摩「凶器で脅されてるようには聞こえない。」
田辺「それで、岸君が専務さんを…」
少し間が空いて
加々見「”天誅だ”って。”あいつは殺されても仕方の無い人間だ”って。」
加々見《岸が…》
(通信の乱れる音)
伊吹「あっ!ご…あっ、油断した」
志摩「距離〜!」
伊吹「分かってるよ」
「まっ、今の聞いたよな。加々見は犯人じゃない。」
志摩が伊吹を見つめる
志摩「だったらどうして逃げてるんだ。」
伊吹「自分の無実を証明するために決まってんだろ。」
加々見が窓の外を見つめる
その目の先には富士山がある
加々見「…。」
花屋に401が到着する
九重「殺害現場から目と鼻の先ですね。」
陣馬「防犯カメラ、あるな。」
「すいません。あの、警察なんですけども。」
伊吹「いやさ、考えてもみろって。朝会社来て、上司が死んでたらビビるだろ。」
「そこへ他のやつが来て、自分が犯人だと思われる。そりゃぁさ、慌てて逃げたくなるよ。」
志摩「自分が来てた時にはすでに死んでましたって正直に言えば済む話だろ。」
伊吹「いいや、済まないんだよ。俺にはわかる。刑事になっても職務質問を受ける俺には分かる。 」
志摩「自慢げに言うな。」
「大抵の犯人はやってないって言うんだ。やってても。」
伊吹「中には本当にやってない奴だっているだろ。」
志摩「いないとは言わないけどさ…」
伊吹「志摩ちゃんさ、」
志摩「ん?」
伊吹を見つめる
伊吹「少しは人を信じてみなよ。」
志摩「バカか!ってバカなのは知ってたわ。」
伊吹「知ってたなら聞くな。」
ため息をついてから
志摩「違う。人間の野生の馬鹿なのは知ってた。刑事としてもバカなのか。」
伊吹「それ、ほぼ意地悪な。」
(携帯電話の通知音)
志摩がカバンからタブレットを取り出す
志摩「ひとつ言わしてもらう。」
伊吹「出た。」
志摩「俺たちの仕事は疑うことだ。」
伊吹「ハハハハッ…それ、誰が決めたんだよ。」
志摩「は?」
伊吹「加々見のこと信じる刑事が1人くらいいたっていいじゃんか。」
志摩「…。」
志摩「ダメだろ。」
伊吹「えっ、ダメ?」
志摩「ダメだよ。じゃあ誰が犯人なんだよ。」
伊吹「岸?」
志摩「証拠は?」
伊吹「じゃあ第一発見者?」
志摩「”じゃあ” じゃねぇよ。冤罪作ったらどうすんだよ。」
伊吹「えっ、そういうとこは志摩ちゃんが…細かいこと気にすんなよ。」
呆れたように上をむく
志摩「お前は頭がゆるふわなんだよ。マジで、もう…」
伊吹「ハハハハッ」
伊吹「まぁ、でもさ俺は信じてあげたいんだよね。」
桔梗《1機捜本部から機捜404。》
イラつきながら
志摩「はい、機捜404どうぞ。」
桔梗「は?何それ。」
志摩「声が怖いっ…」
しっかりした声で
志摩「機捜404どうぞ。」
桔梗「フラワーショップの防犯カメラの映像に、拉致監禁の一部始終が映ってた。マルヒが凶器を用いて、マルタイの車両に無理やり押し入るのが確認できた。」
「山梨県警に応援を要請。機捜132も向かってる。」
「合流して、マルヒを確保してください。」
陣馬が九重に
陣馬「無駄じゃない1パーセントのほうだったな。」
九重「…。」
陣馬「お願いします。」
九重「お願いします。」
桔梗《マルタイの現在地は?どうぞ。》
志摩「富士山田の道の駅に入ります。」
田辺夫妻が車から降りる
早苗の右ポケットに凶器を握った手を入れる
志摩「マルヒが凶器を手に車から人質を降ろしました。危害を加える可能性があります。」
伊吹「あ、それと確保の許可お願いします。」
志摩が伊吹を見つめる
伊吹「万が一だよ。」
シートベルトを外して
伊吹「変なこと起こす前に止めないと。」
志摩「…。」
富士山を見つめながら
早苗「綺麗に見えてる。」
田辺「前に来たな〜、3人で。」
早苗「あの時、うどん食べたっけね。」
田辺「うん。そうだ!飯食おう。3人で。」
加々見が田辺を見る
田辺「腹減っただろ。」
加々見「は?」
田辺「財布のことなら俺が出すから、食べよう。」
加々見「いやいや…」
田辺「食おう。」
加々見が混乱した顔で
田辺「その前に、まずトイレだ。さっきから我慢してて…」
その場でモジモジしだす
田辺「ちびりそうだ。」
笑いながら
早苗「やだ〜、もう。」
加々見が周りを気にする
田辺が近づき
田辺「心配するな。君に最後までつきあうよ。その、君が行こうとしてる場所に。」
早苗が加々見の腕に手を回す
早苗「そうよ。約束。」
田辺「約束だ。」
加々見が早苗と加々見を見つめる
トイレへ歩いていく
早苗「早く行きなさいよ。フフフッ…」
田辺「ハハハッ…いや、我慢我慢。」
遠くから伊吹と志摩が見つめている
加々見が手を洗っている
田辺「いや〜。終わんなかった。ハハッ」
加々見が田辺を見つめる
田辺「俺達のこと、変な夫婦だと思ってんだろ?」
加々見「僕は、あなたたちの息子じゃないですよ。」
田辺「うん。」
田辺が頷く
田辺「俺達は、あの子を信じてやれなかった。」
加々見「…。 」
田辺「学校で、クラスの子の財布からお金が盗まれた。うちの秀則が犯人だって疑われて、秀則はその頃反抗期だったから。”なんて馬鹿なことをしたんだ”って、俺は話も聞かずに怒鳴りつけて頭を下げさせた。でも本当に、あの子はやってなかった。無実だった。」
男子トイレから聞こえてくる田辺の話を聞いて、早苗が泣いている
田辺「死んでから分かった。犯人は別の子だった。だからってなんで死んでしまったのか…。疑われたことに耐えきれなかったのか、俺への当てつけか。」
志摩と伊吹がゆっくり近づき、田辺の話を聞いている
田辺「悔しかったのか、絶望したのか、あの子が何を思って死んだのか未だに分からない。もしも戻って…あの時に戻れるなら、俺は、お前を信じる。誰がなんと言おうと、信じる。」
伊吹がサングラスを外す
田辺「あの子に言ってやりたかった…」
田辺が顔を洗う
加々見が田辺の背中に手を置こうとした瞬間
伊吹「はい、ストップ。」
加々見「……。」
伊吹「加々見。ちゃんと話聞く。大人しく出頭しろ。な?」
加々見の息が荒くなる
ポケットに入れていた凶器を伊吹に向かって指す
トイレに行こうと人が入ろうとする
志摩「すみません、入らないで…。」
伊吹が加々見を取り押さえる
加々見「ああっ!あっ。」
加々見を捕まえようとする伊吹を田辺が邪魔をする
志摩「入らないで!下がってください!」
伊吹「俺、俺、警察だって!!警察!!」
田辺「逃げろ!!!逃げろ!!!!」
加々見に向かって叫ぶ
田辺「無実を証明しろ!行け!!」
加々見が伊吹から逃げる
伊吹「志摩!!志摩!!」
志摩が加々見を捕まえようとする
それを早苗が邪魔をする
志摩「や…!」
早苗「逃げてー!!!」
志摩「離してください!!!警察です!!」
田辺「行け!!」
伊吹「志摩!お前…!」
早苗「逃げて!!」
志摩「離して!!!」
加々見が逃げる
伊吹「逃がすんじゃねぇよバカ!!!」
志摩「お前こそだよ!!!!」
加々見が山道を走っている
桔梗「山梨の岸の実家には警官を手配した。田辺さん夫妻は無事なのね?」
志摩《はい。でも…》
志摩「人質ではなく、合意の上だったと言い張ってます。 」
早苗「加々見君は無実なんです!警察なら、ちゃんと捜査してください!」
伊吹「だからその捜査をするために、本人から話を聞くんですよ!」
田辺「警察は頭から疑ってかかるでしょ。」
伊吹「そっちだって頭から警察疑ってんじゃないっすか。」
田辺夫妻を見ながら
伊吹「俺は加々見派。」
田辺「加々見派?」
伊吹「加々見、無実派。」
志摩が間に入り
志摩「余計なことを言うな。」
伊吹「はぁ?」
志摩「彼は殺人事件の容疑者です。知っていて逃がしたのなら、犯人隠避で罪に問われる可能性があります。」
田辺夫妻「……。」
伊吹「はぁ?加々見が無実だったら隠避にならねぇ 」
志摩「犯罪の嫌疑を受けて捜査中なら隠避になるんだ。」
伊吹「これだから警察はよぉ…。」
田辺「この人ほんとに警察の人…?」
志摩「こいつの言うこと聞かないで。」
伊吹「はい。警察の人ですよ〜。」
志摩の携帯が鳴る
志摩「はい。」
志摩が電話を取り
志摩「岸を見つけた?どこで?」
伊吹「ほら見ろ。」
九重「まだ東京にいて、女の家で寝てました。」
陣馬「岸 拓哉さんで間違いないですね?」
岸「あっ、コンビニのお釣り多かったの持って帰ったやつですか?」
女性「だから言ったじゃん!」
乱暴に言う
岸「あぁ、もう、うっさいなバカ!」
岸「なんか、窃盗罪とかになるんすかね?」
志摩「……。」
田辺夫妻が志摩のそばに行く
志摩がふり返り
志摩「加々見はどこへ行ったんですか?」
田辺夫妻「……。」
志摩「何のために山梨まで来たんですか?やっていないのなら何故?」
伊吹「……。」
田辺「彼は岸君に会って自首を勧めようと」
志摩「彼が本当にそう言ったんですか?岸は東京にいて、事件を知りませんでした。」
伊吹「いや、ちょっと待てよ。ほかの犯人がいるかもしれないじゃん。第一発見者とか。」
志摩「人は、信じたいものを信じるんだよ。伊吹も田辺さんたちも加々見がやっていないと信じたかった。”俺はやってない”犯人がそう言うとき、多くは誤魔化すために言う。捕まりたくないから。だけどもうひとつ。犯人自身がやっていないと思いたい。」
加々見が走っているが、道端でコケてしまった。
志摩「自分のやってしまったことを認めたくないんです。できることなら、罪を犯す前に戻りたい。」
加々見が再び走る
志摩「無かったことにしたい。でも、時は戻らない!」
田辺「やってない。彼はやってない。無実だ。」
田辺の胸ぐらをつかみ
志摩「加々見は自殺するかもしれません!」
早苗が衝撃を受ける
伊吹が軽く頷く
加々見「はぁっ…はぁ…」
伊吹がそっぽ向きながら涙を拭う
志摩「どこ行ったんですか?」
伊吹「おっちゃん、おばちゃん。どこ行ったか教えて。ちゃんと教えて。」
早苗が泣きながら
早苗「”下富士町に、ラウンドホームっていう用品店がある”って。”その先は自分で歩いてく”って言ってました。」
伊吹が頷きながら
伊吹「うん。」
早苗「最終的にどこへ行こうとしていたのかは分かりません。」
田辺が早苗を抱きしめる
志摩「ありがとうございます。」
伊吹「ありがとう。」
用品店で 加々見がジャンバーを脱ぎ、脱いだジャンバーの中に包丁を隠す
店員「あ、ちょっと?」
店員に気づかれて走る
店員「ちょっと待って!」
志摩「その住所を調べてください。行き先はきっとそこです。」
志摩「えっ?そうですか。ありがとうございます。」
志摩が携帯をポケットに入れる
志摩「現場にあった血の掌紋、鑑定結果出た。」
伊吹「……。」
志摩「加々見の自宅で採取した掌紋と一致。」
伊吹が静かに悔しがる
加々見が走っている
家に到着する
さっき盗んだ包丁を向けながら
加々見「はぁ、はぁ…はぁはぁ、」
携帯電話が鳴る
電話は岸からだ
電話に出る
岸《加々見?何やってんだよ。逃げてないで自首しろって。》
加々見「はぁ、はぁ…」
加々見「あいつ殺して、僕も死ぬ。」
岸《あいつ?誰?今どこだよ。》
加々見「うち。10数年ぶりの、懐かしの我が家。岸も来たことあったよね?なぁ、覚えてる?2人で、ゲームしてたら親父にぶん殴られた。」
部屋を探索しながら
加々見「必ず反省文書かせたんだ。ゲーム壊されて、漫画も捨てられた。パソコンぶん投げたのだって、全部あいつなのに。僕が反省文書かされるんだ。”お父さんを怒らせたのは僕のせいです。ごめんなさい” 」
〜〜〜〜
幼い加々見の頭を押し付けて
加々見の父親「なぁ、”ごめんなさい”は?」
幼い加々見「ごめんなさい…!」
加々見の父親が加々見を殴る
幼い加々見「ごめんなさい!ごめんなさい!」
〜〜〜〜
加々見「あいつは一度も…。一度だって謝らなかった。松村そっくりだよな。岸をクビにした…あいつが悪いんじゃないか。」
岸《だから殺したのか?そんなこと頼んでねぇよ!》
加々見「あいつのせいだ!!!」
机の上に父親の写真を見つける
それを投げ捨てる
加々見「こうなったのは、全部、あいつの…それを教えてやるために来た…!」
加々見「あいつがしたことを分からせて、僕がこうなった責任をあいつが取るべきなんだ!」
どこを探しても父親はいない。
加々見「どこだ…どこだ!!!」
コソッと隠れていた伊吹が
伊吹「お父さん死んだんだって。」
加々見「はっ!」
伊吹「2年前、交通事故だって。」
加々見がその場に尻もちを着く
伊吹「もうここには誰も住んでない。」
加々見が怯える
伊吹「今朝、上司を刺し殺したのはお前か?」
居間から逃げようとするが、志摩がやってくる
伊吹「違うよな?」
包丁を志摩に向ける
志摩が加々見の父親の写真を持ってくる
志摩「父親への当てつけで、上司を殺したのか?そんな事のために、自分の人生を棒に振ったのか?」
加々見が志摩が持っていた父親の写真を投げ捨てて
加々見「違う!!」
〜〜〜〜
松村が加々見の頭を机に押し付けて
松村「訴えても無駄だよ。お前もクビにしちゃうから。」
加々見が隣にあった道具箱に手を差し伸べる
松村「なぁ、”ごめんなさい”は?」
加々見の父親「”ごめんなさい”は?」
加々見が道具箱に入っていた工具で松村を刺す
松村「あっ…!!」
〜〜〜〜
加々見「僕はただ…」
その場に座り込む
加々見「許せなかっただけだ。」
〜〜〜〜
加々見が焦ってタオルを持ってくる
松村はベランダに横になる
松村「ううっ、ああっ…」
押さえて止血しようとするが血は溢れてくる
松村「うぅっ… 」
加々見「あっ、あっ…」
焦っているため、色々なところに掌紋がつく
加々見「どうして、どうして。こんなはずじゃない。」
加々見が必死に手を洗うが、血は取れない
加々見「こんなはずじゃない!」
床に座り込む
加々見「何でこうなった。」
加々見が泣いている
仙田「おはよう」
仙田が驚いて
仙田「おっ、おっ、お前…」
加々見が慌てて逃げる
〜〜〜〜
加々見「始まりは、こいつの…」
写真に包丁を突き刺す
加々見「こいつの。」
何度も突き刺す
加々見「こいつ、こいつ、こいつ、こいつの!こいつの!こいつ…こいつの!」
「それが事故で死んだ?自分の息子が人を殺したことも知らずに何の復讐にもならないよ!」
伊吹・志摩「……。」
加々見「まだ一度も謝ってもらってない!」
志摩が写真に刺さっている包丁を抜く
志摩「加々見さん。あなたは人を殺した。理由はどうあれ、命は、取り返しがつかないんだよ。」
伊吹「お前バカだな!」
伊吹が加々見の胸ぐらを掴む
伊吹「殺しちゃダメなんだよ!なっ?相手がどんなにクズでも、どんなにムカついても、殺した方が負けだ。」
加々見が泣く
伊吹「なぁ?」
伊吹が加々見の顔を触る
伊吹「無実でいて欲しかったな。」
志摩が手錠を取り出し、伊吹に渡す
伊吹が加々見に手錠をかける
田辺夫妻が車から降りてくる
早苗「加々見君。」
警察官「機捜車両現着。これよりマルヒ引き受けを実施します。」
志摩「お願いします。」
早苗・田辺「加々見君!」
田辺「ごめんね、最後までつきあうって約束したのに。ごめんね。」
田辺「いつかまた、3人でドライブしよう!今度こそ、うどん食おう!」
早苗「いつかまたね!」
田辺「おう!」
伊吹と志摩が見守っている
田辺「ごめんね。ごめんね」
加々見がパトカーの隣でお辞儀をする
パトカーに乗り込む
伊吹「あ〜。腹減ったなぁ。なんか食いにいくべ。」
伊吹がメロンパン号に乗る
伊吹「ういっしょ」
志摩も乗り込む
伊吹「山梨っていったら…」
店員「お待たせいたしました。」
伊吹「ありがとうございまーす。」
伊吹がうどんをすする
伊吹「美味っ」
志摩「あ〜。美味いな。」
伊吹「これ乾いたの売ってんのかな。」
志摩「乾いたの?」
伊吹「分駐のお土産」
志摩「乾麺か、乾麺のこと言ってんのか。」
伊吹「だからそう言ってんじゃん。」
志摩「1つ言わしてもらう。 」
伊吹「何?もう〜、飯中いいじゃん。」
志摩「殴って悪かった。ごめん。」
伊吹がニヤける
志摩が嫌な顔する
伊吹「志摩ちゃん?志摩ちゃん、よく出来ましたね〜。」
伊吹が志摩のことをよしよしする
志摩「触るな!」
伊吹「はい、うどん1本あげる。」
志摩「いらない、いらない…汁が飛ぶ、汁が飛ぶ。」
伊吹「何で?フフフッ」
伊吹がうどんをすする
伊吹「でもさ、俺たちいい相棒になれそうじゃん?」
伊吹が鼻歌を歌う
志摩と伊吹が見つめ合う
志摩「結構です。」
伊吹「結構するなよ。それ禁止ね。今度言ったらメロンパン10個ね。」
志摩「はっ。お前はメロンパンを10個食いたいのか。10個も食うなよ」
志摩が笑う
伊吹「いや、車に入れとけば、売るようにさ。」
伊吹が志摩に醤油を渡す
伊吹「はい、メロンパンデカ〜。ふふっ」
志摩「さっきの謝罪を撤回する。」
伊吹「はぁ?あぁねぇ、もう遅い遅い。時は戻らないよ。」
志摩の手が止まる
志摩「そうだなぁ。時は戻らない。」
伊吹「ん?」
志摩「人の命は返らない。どんなに願っても。」
「お前は長生きしろよ。」
伊吹「……。」
伊吹が鼻歌を歌う