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……誰だ?
見たことが……
いや、知らないな。
なんだこいつ……誰だよ……?
目が覚める。
カーテンの隙間から差し込む日差しが、さっきのは夢だと訴える。
きっと知っているはずなのだ。
そんな確信はつくのに、あいつが誰なのか検討すらつかない。
気持ちがぐるぐると渦巻いて気持ち悪い。
気持ちを切り替えようと布団から出た瞬間
一気に冷たい空気が身を包む。
「寒っ….」
思わず声が出るほどの寒さに、昨日見たニュースを思い出す。
そういえば今日雪が降るらしい。
雪かきが面倒だからあまり積もらないで欲しいな。
なんて他人事のようなことを思いながら顔を洗い、食堂に向かう。
食堂の扉を開けると賑やかな声が聞こえてくる。
ut「おお!knやん!おはよー!」
utがこちらに気づいて手を振る。
今日は食害を受けていないのか、書類が終わったのか分からないが随分ご機嫌なようだ。
「はよー。」
さっきの夢のせいであまり気分が上がらない。
zm「どうしたん?テンション低いやん」
tn「具合でも悪いか?」
案の定、みんなが心配してくる。
ただ今はそれに返す元気もない。
「いや、大丈夫や、。」
そう軽く返してもまだ疑ってくる奴らがいるため、しょうがないから元気を装う。
「いやすまんな!なんか変な夢見てさ、ちょっと考え事してたわ!すまんすまん!」
正直に言えば納得してくれるだろう。
1番しつこかったzmが「そうか。」と言って引き下がったため、結構俺も演技派だ。
食事をする気にもなれなくて、鮭のおにぎりをひとつ頬張ってバレないようにそっと食堂を出る。
今日は午前に訓練があるだけで、午後は非番だったな。
今週までの書類はあるが、今日はダメだ。
午後はゆっくりしよう。
訓練場に行くと俺をまちかまえていたかのように整列している一般兵に指示を出す。
正直まだ頭が回っていないが、仕事に私情を挟む訳には行かない。
一般兵を走らせていると、雪が降り始めた。
「おい!雪降ってきたから室内練習にするか?」
「いえ!やらせてください!」
少し食い気味に、息のあった声が聞こえる。
自分の隊は積極的な奴が多くていい事だ。
それにしても夢で見たあいつ、どこかで見たことがある気がするんだよな。
そんなことを考えているうちに、雪が強くなってきた。
さすがにここで走りこみは危ないと考えて室内訓練にする。
戦争前だから風邪をひかれても困る。
それにしても寒い。
時間が経つにつれて下がる気温に合わせて、
不快感が大きくなっていく。
誰かに話したら、楽になるだろうか。
今日の訓練は俺が居なくてもどうにかなりそうなので、副隊長に任せて談話室に行くことにした。
ほんとうは仕事に私情を挟みたくないのだが、
今の俺で指示を飛ばす方が効率が悪い。
談話室の扉を開ける。
何やら楽しそうな雰囲気だと思ったらut軍団がソファに座ってトランプをしている。
shp「あ。部長。」
shpがこちらに気づく。
一瞬背筋が凍ったような気がした。
ut「おお!knやん!訓練終わったん?」
「あ、いや、まぁ、」
訓練はすっぽかしてきてしまった。
そんなことより、わかった気がする。
夢で見たあいつと、shpくんが一致する。
いや、でもshpくんなら分かるはず。
俺が連れてきたんだし、俺が色々教えて、1番近くにいたはずなのに分からないわけが無い。
shp「ぶ….ょ?」
shp「knさん?」
shpが俺の名前を呼ぶ声で我に返る。
ci「大丈夫っすか?」
ut「やっぱ具合悪いか?朝から元気ないよな?」
shp「医務室行きます?」
shpが、心配してくれている?
「いや、大丈夫やから、」
shpって、こんなんだったか?
shp「とりあえず座ったらどうです?」
そう言って俺が座れるくらいのスペースを開ける。
こんなに気遣いができる人だったか?
「すまん、あざす。」
ut「無理すんなよ?」
「わかっとるって。」
ci「部長もトランプやりましょ。」
そう言って配り直す。
「あざす。」
ci「うわ、」
ciが自分のカードを確認した瞬間嫌そうな顔をする。
ut「お前絶対ジョーカー持ちやんw」
shp「わかりやすすぎw」
そう言って笑うふたりをただ唖然としてみていた。
shpってこんなに笑う人だっただろうか。
こんなに楽しそうに笑えただろうか。
しばらくトランプをしていると談話室の扉が勢いよく開いた。
zm「雪積もってるって!!遊び行こ!!」
目をキラキラ光らせたzmが窓の外を指さしてそう言う。
言い終わったと同時に外へ走って言ってしまった。
ciは遊びに行くのかな。utとshpはいかないかな。
そんな予想を立てながら、2枚揃ったカードを机の上に置く。
ci「まじ?!いく!!!」
そう言ってciが立ち上がると同時にshpが立つ。
shp「ええやんいく。」
え?
理解が追いつかない。
ビックリしてshpの方をむくとciと一緒にutを連れ出そうとしていた。
ut「いやや!さむいやん!」
ci「いいからいいから。」
そうやって手を引く。
utがciとshpに連れてかれるのをただ見ていることしか出来ない。
するとshpがこちらを振り向く。
shp「どうしたんですか?部長。行きますよ?」
頭の中がグチャグチャで何も返せずにいるとshpに手を引かれて外に連れ出される。
外に出ると一気に冷たい空気が身を包む。
見慣れた道路も何もかも雪でおおわれて別世界のようになった街をただ眺める。
すると、視界の中にshpとciが入ってくる。
雪合戦をする2人。
ci「痛いっ!shp!もっと優しく!!」
shp「あははっw無理無理!ciが弱すぎるんや。」
そうやって笑いあう2人を眺めることしか出来なかった。
shpって、あんなに子供っぽく無邪気だっただろうか。
もっと冷たくて、
なんにも興味がなさそうで、
ずっと嫌そうな顔してて、
上手く人と付き合えなくて、
1人じゃ何も出来なくて、
俺がいないとダメではなかったか?
こんなに優しくて、
面白くて、
楽しそうで、
みんなに囲まれて、
みんなで笑いあってて、
こんなに遠い存在だったか?
こんなshp知らない。
いや、もしかしたら、俺が知らないだけでこんな人だったのかもしれない。
1番近くにいたはずなのに何も知らなかった。
もう、俺要らないじゃないか。
俺なんか居なくたっていいじゃないか。
「はぁ。」
感情が混ざり合わさってグチャグチャで胸の中をかき混ぜるように動く。
目元が熱くなるような感覚がして、
置いていかれたような疾走感がして、
何もかもどうでもよくて、
今すぐここから逃げたくて、
さっき通ってきた道を、また引き返した。
ちょっとした補足と謝罪
補足になっていない補足
最初の夢はknさんの知らないshpさんです。
結構なんでも知ってると思ってた友達の知らない1面を知ると、なんかとてつもない疾走感に襲われるんですよね。
まあ友達いないんでいいんですけど。
謝罪
全然季節外れですいません!!
ヤバい!最近なんも投稿してない!
と思って焦ってアプリ開いたら昔の下書きがあったのでそれをちょっと手直ししたのがこれです。
ほんと申し訳ないです。
こんな作品を最後まで見て頂きありがとうございました。