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早く終わんねぇかな。
月曜日の4限目。
先生の話を右から左へ聞き流しながらノートにペンを走らせる。
“浦田わたる”
俺の、世界で一番好きな名前。
そっと隣の席に座る彼を盗み見るとパチっと目があった。
その瞬間、一気に顔に熱が集まって来て、走ったあとのように心臓が脈打ち始める。え、うらさんも俺のこと見てたってことよな?
一瞬キョトンとしたうらさん。ほんっっっまに可愛いっ!
「うらさん、うらさん!」
少しイタズラがしたくて、うらさんを笑わせたくて机をトントンしながら小声で名前を呼ぶ。
「ん、なに?」
こてんと首を傾げる姿がほんまに女子も勝てんぐらいに可愛い。
「今日の俺、いつもと違うと思わへん?」
「えぇ〜?いつもと一緒じゃねぇの?」
「いや、今日の坂田明はいつもとちゃうで」
「うーん……分からんなぁ」
うーんと悩むうらさんに笑みがこぼれる。
「正解は、いつも以上にイケメン、でした!」
「えぇ〜、そんなん気づかんわ!」
眉尻を下げて笑ううらさんに胸が締め付けられる。
「あははっ、うらさんかーわいっ!」
「おい坂田」
うらさんをツンツンしてたら後ろから先生に声をかけられる。
あぁ……そういや今授業中やったなと頭の片隅で思う。
「授業中に遊ぶな。浦田も坂田に乗らないように」
「はぁーい」
「すみません」
周りのクラスメイトはこっちを見てクスクス笑ってる。
くそっ、俺はうらさんを笑わせたかっただけなのにっ!あー……ダサい。
ちらっとうらさんを見ると小さなメモを渡してきた。
“先生に怒られちゃったね。今日の坂田もいつもの坂田もかっこいいよ”
うらさんの可愛い字で書かれたラブレター(のはず!)を見ると、口角が上がるのを抑えきれなくなった。
えへへと笑ううらさんが可愛い。きっと、宇宙で一番、誰よりも可愛い。
なぁ、うらさん。一体うらさんは俺をどんだけ好きにさせたら気が済むん?
そんな想いを込めてうらさんに同じようにメモを返しながらうらさんと出逢った日からのことを思い出す。
うらさんに出逢ったのは、ちょうど半年ぐらい前。俺が落とした生徒手帳を拾ってくれたのが出逢いだった。
『あの、坂田明さん、ですか?』
『え、?』
『あ、あの、これ、落としてましたよ』
『あ、ありがとう、ございます……』
『いえいえ、気をつけてくださいね』
うらさんはにっこりと優しく笑ってくれた。
あの笑顔に触れた時、引き止めなきゃ、という感覚に襲われた。
『あの、名前はっ?』
『え、名前?』
キョトンとしたうらさんに、全身で好きだと感じた。
『あ、いやっ、拾ってくれたし、お礼したいし……』
『お礼?別に大丈夫ですよ。あ、浦田わたるって、言います……』
『浦田、わたる……』
『はいっ、!あ、俺今日早く帰んないといけないんでっ、。じゃ、じゃあまた……』
顔を真っ赤にさせながら走って行ったうらさん。
『またって……』
またあの子と話せるってことよな……?
次の日から俺は朝早くに登校するようになった。理由はもちろん、うらさんと話したかったから。毎朝の「おはよう」の一言だけで、どんだけでも頑張れる気がした。
仲良くなるに連れて距離も縮まり始めた。
『坂田、教科書貸して!』
『はいよ』
『ありがとー!まじで助かった!』
うらさんがパッと笑う度に、もしかして俺のこと……なんて勘違いもした。……いや、今も勘違いしまくってるんやけど。
やって可愛いんやもん!しゃーなしよ!
うらさん、俺はこんなにもうらさんに溺れてるんよ?ギリッギリ頑張って理性保ってるんよ?うらさんもはよ俺に溺れてや……。
そう思いながらもう一度うらさんに視線を向けると、メモを両手で持ったまま楽しそうに笑っていた。