「セラフ、驚かせちゃダメ、でしょ?」
「、、すいません。そんなつもりはなかったんですけど」
「そうだけど、無闇に魔術使っちゃダメって言ったでしょ〜?」
「、、今後気をつけます」
「で、大丈夫?君は」
これは、俺が見た生涯忘れることのないだろうとある記憶だ。
「綺麗、、」
俺はその綺麗な”魔法”に心を奪われていた。
「これ?もぉーっと綺麗なやつ、みたい?」
その綺麗さに心を奪われた俺はもっと綺麗なのを見れるのかと胸を驚かせながら彼を見つめた。
「ふふっ、素直な顔をしてるね。いいよ、こっちにおいで」
彼は黒いフードをかぶっていた。彼はまじゅつし?というらしく本を使って魔法を出してるらしい。すこやさんによるととても賢い人で才能がある人にしかできない貴重な職業らしい。
「ここの湖にご注目くださーい。今からこの私がとても美しいショーをお届けしましょう!ではご覧ください」
俺は湖の前にある草原に体育座りをして目を輝かせていた。彼はまるでマジシャンのように礼をして本を取り出した。その瞬間俺は歓声をあげた。
「うわぁ、、、」
湖の水は鯨のような形になったり噴水のように形を変えたり。はたまた、いろんなところから光が溢れてまるで海の中にいるようだった。色が変化するにつれて水の色も変化する。その空間だけまるでこの世のものじゃないみたいだった。
「どうだった?うまくできたか不安なんだけど」
「めっちゃ綺麗、だった!なんか、すごい!お兄ちゃんすごい!」
俺は近寄ってくる彼に向かって拍手をした。
「はは、照れくさいな」
彼は赤く頬を染めて、髪を手でかいた。
「あ、ちょっとこら!そこの薬草に触っちゃダメー!」
「ご、ごめんなさい!」
俺は興味旺盛な少年だとよく言われる。その癖で見たこともない薬草に触ってしまいそうになったのだ。どうやらこれは触ったらいけないものだったらしい。
「君はこっちで遊んでてね。見てるのはいいけど、触ったらこわーいことになっちゃうものもあるから絶対に触ったらダメだよ?」
「はい!」
「よしよし、いい子」
すこやさんは魔法使いというものらしい。毎日薬草を採りに行って、薬草を煮詰めてお薬にしたり。魔法を使って水と炎とか出してる。毎日見てるけどとても綺麗なんだよ!
お兄ちゃんのまじゅつしと違って、本を取り出さないでなんか杖から魔法を出してるらしい。お兄ちゃんによると魔法使いは大人たちから嫌われてるらしい。お兄ちゃんはすこやさんに助けてもらってまじゅつしになってるんだって。不思議なことに魔法使いは嫌われてるのに、まじゅつしは好かれてるんだって。どっちも綺麗なのに大人って不思議だね。
「いい子に待ってた人手あげて」
「はーい!」
「じゃあおやつの時間にしようか」
「俺お兄ちゃん呼んでくるね!」
「わかった。湖のほうにいるはずだよ」
「わかったー!」
俺は小屋を飛び出して、湖の方まで走った。俺たちが暮らしてる小屋と湖はそんなに遠くないから息切れする前に湖についた。そこには大きな木の麓で本を読んでるお兄ちゃんがいた。
「お兄ちゃーん!おやつだってすこやさんが言ってたよ!」
「わざわざ呼びにきてくれてありがとね。一緒に行こうか」
「うん!!」
お兄ちゃんはほんとに身長が高いんだ。だから俺と手を繋ぐときは少し屈んでくれるの!優しいお兄ちゃんなんだ。俺もこんな人になりたいんだ!
「ほら、バウンドケーキだよ」
「「美味しそ〜!」」
少し大きめの机を三人で囲んで美味しいお菓子を食べる。二人とも優しい人ですごい俺は大好きだ。でも、俺はいつからここにいたのか、何1つ覚えてない。
俺はすこやさんと一緒に、いつも通り薬草を採っていた。森の中で今日は珍しく結構奥まで行っていた。そしたら小屋の方が赤く光っていた。
「、、ねぇなんで光ってるの?」
「っ、急ぐよ!」
すこやさんは、手に持っていた薬草を落として、風の魔法を使って小屋の方まで走っていた。俺も乗られて走っていたけどなんで急かしてるのかわからなかった。
「異端者!!」
「子供を解放しろ!!」
小屋が赤く燃えていた。
「いたぞ!!魔法使いだ!!」
「死ねー!」
小屋の後ろに隠れている俺らに大人たちは気づいてないみたいだった。
「、、ここで待ってて」
「で、でm__」
「シー、喋ったらダメ。いい子だからお願い」
俺は頷いた。そして口を手で塞いだ。そして、すこやさんは小屋の方へ歩いて行った。きっとお兄ちゃんは小屋の中にいる。熱いからすこやさんが助けに行ったんだろう。
なんで、二人が死ねって言われてるんだろう。いたんしゃって何?あんなに優しくて綺麗な魔法を出す二人がなんで嫌われてるんだろう。小さい俺にはわからなかった。
「だめ!!」
俺は、すこやさんの約束を破って、小屋へ走り出した。俺は、二人にまだ、まだ言ってない。なんとなく二人が消えてしまいそうだった。俺はまだ、二人に『ありがとう』って言えてない!!
「子供だ!生きてるぞ!」
燃えてる小屋の前にいる大勢の大人たちなんかより、小屋の中にいる二人の方が気になった。俺は小屋の中に入って行った。
「すこや、さん!!お兄ちゃん!!」
どこにいるんだろう。小屋の中が燃えていて何1つ見えない。歩いているうちにだんだんと見えてきた。そこには、二人の姿があった。
「セラフ、だいじょうぶ?」
「、、すみません。術が解けてしまって」
「そんなことより、生きれそう?立てれる?」
「大丈夫です。それよりも逃げましょう」
「お、お兄ちゃん!」
「な、んで君がここにいるの!待っててって言ったでしょ!?」
「やだ!俺二人にありがとうって言ってない!!」
意地を張る俺に観念したのかわからない。困ったような表情をした後俺に向かって言った。
「君は優しい子だね。ほら行って。そして大人たちに『俺は無事だよ』って言ってきてほしい。これが最後のお願い」
「二人は大丈夫、なの?」
「うん、私たちは大丈夫。だから、ほら」
「ね、ねぇほんとに大丈夫なの?だって、こんなに汚れてるし怪我しちゃってる、ちゃんと手当しないと、、」
「行けって!!」
「ビクッ。は、はい!」
俺は小屋を出て行った。そして大勢の大人たちに声を大にしていった。
「俺は無事だよ!!でも、二人が危ないかr__」
「子供だ!!子供の安全が確保できた!!突撃!!」
俺の声は届かなかった。そして、二人の姿をもう二度と見ることは無くなった。その代わり俺の親と名乗る人たちが現れた。
大人となり”長尾景”という名が与えられてもなお、あの二人の姿が忘れられない。いつか会えるだろうか。俺はあんな人たちになるために魔術を学んでいる。今でも忘れられない、あの二人は生きている。たとえ死んでいたとしても、もうあんなことを繰り返さないように俺は日々鍛錬に励んでいる。今日も机に向かい、本を解読し勉強する。
魔術本 著者 セラフ・ダズルガーデン
稀に見る天才とも言われるセラフ・ダズルガーデン氏が死んだ小屋に置かれてあった魔術本。多くの研究者が解読を進め現在では多くのものが閲覧できる。
異端の魔法書 著者 健屋花那
異端と呼ばれる魔法使いが残した本。現在でも魔法使いが嫌厭されるため魔法を使うものがいないが、知識として魔法を入れることで魔術が使いやすくなるため現在でも多くのものが閲覧する。
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