テラーノベル
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ライブ会場から車で数十分。
サングラスと帽子で完璧に変装したアイに連れられ、リムルは都内の高級マンションの一室にいた。
「ふぅ……! 今日もお疲れ様ー!」
アイがカバンを放り投げ、リビングのソファにダイブする。
そこへ、ヨボヨボと歩いてきた(フリをした)二人の幼児――アクアとルビーが、リムルを見てピタリと足を止めた。
(……誰だ、この美形?)
(ママ、男連れてきた!?)
「あ、社長には内緒だよ? 困ってるみたいだったから、連れてきちゃった!」
アイはニコニコしながらキッチンから飲み物を持ってくると、床に座り込んでいたリムルの目の前に座った。
「さて、と。……改めて、君。お名前はなんていうの?」
アイのまっすぐな瞳が、リムルを射抜く。
リムルは変に隠す必要もないと判断し、堂々と名乗った。
「俺はリムル。リムル・テンペストだ。……さっきは派手に乱入しちまって悪かったな」
「リムル君。……うん、すっごく綺麗な名前! 宝石みたい」
アイは嬉しそうに笑い、それから少し小首をかしげた。
「ねえ、リムル君。君は、どこから来たの? さっきのステージ、まるで『魔法』みたいだったけど……」
「……実は、別の世界から来たんだ。こっちにいる『シエル』っていう相棒の転送ミスでな」
「別の世界!? シエルちゃん?」
アイは驚きつつも、「あはは、面白い冗談!」と笑い飛ばす。
しかし、背後から鋭い視線を感じた。
幼児の姿をしたアクアが、じーっとリムルの手元を観察している。
(……別の世界? シエル? 嘘をついているようには見えない。だが、そんな話が信じられるか……?)
「とにかく、俺は記憶もしっかりしてるし、変な奴じゃない。……ただ、この世界のことはよく知らないから、少しの間置いてくれると助かる」
「いいよ! リムル君、歌もダンスも天才的だし、私、君のこと気に入っちゃった! 今日から君も、**私たちの『家族』**だよ!」
『告。マスター。個体名:星野アイの精神状態は極めて良好です。……ただし、マンションの周囲に、彼女に向けられた「歪んだ殺意」を感知しました』
シエルの声がリムルの脳内に響く。
アイの無邪気な笑顔の裏で、リムルはこの世界に潜む「闇」を、本能的に察知し始めていた。
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