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その日の放課後、校内には吹奏楽部の音も生徒の声も残っていなかった。
夕焼けが差し込む音楽室の窓は、オレンジ色に染まって、やけに静かだった。
Hyeheheは、珍しく一人でそこにいた。
「……こんなとこ、俺が来るタイプじゃねーけど……」
彼の手には、例のハート型キャンディ。もう少しで、溶けてしまいそうなくらい手の中で温まっていた。
そんな彼の背後から、そっと扉が開く。
「……いた。アンタ、ここだったんだ」
振り返ると、Hoolaが立っていた。
制服のネクタイをゆるめ、リップの色は少し落ちて、目元には珍しく緊張の色があった。
「……なに、今日は音楽家にでもなっちゃうの?」
「うるせーよ。たまたま誰もいねーし、落ち着くなって思っただけ」
「ふぅん……そっか」
ぽつんと、2人。
ピアノの横で、距離がふたたび空く。
でも――
「……うちね、あのキャンディ、もらったときめっちゃ嬉しかったの」
Hoolaが、ぽつりと呟いた。
Hyeheheは驚いたように目を向けるが、何も言わない。
「だってさ〜、アンタっていつもふざけてばっかで、ほんとのこと言わないじゃん。からかってくるし、笑ってごまかすし……ずるいんだよ」
「……それ、俺に言う?」
「言うに決まってるじゃん。ずっと我慢してたし」
Hoolaは、口を尖らせながらも、声が少し震えていた。
「うち、アンタのこと……」
その先の言葉が、なかなか出てこない。
静まり返る音楽室に、2人の鼓動だけが響く。
「……だったら言わせて」
Hyeheheの声は、低く、でもどこか優しかった。
彼は、ポケットからもうひとつの飴を出して、そっとHoolaの手に乗せた。
「俺も、お前が好き。ずっと、ずっと前から。
でも、バカみたいにイタズラでしか近づけなくて……ごめんな」
Hoolaは、じわっと目を潤ませたまま、手の中の飴を見つめた。
「……なにそれ……ズルいの、そっちじゃん……」
そして――
「じゃあ、うちの分も、ちゃんと受け取ってよね」
自分の飴も差し出し、彼の手にそっと重ねた。
2人の手が、キャンディごしに重なる。
窓の外の夕焼けが、ゆっくりと夜に溶けていく。
「この飴、溶ける前にさ――
うちら、ちゃんと付き合わない?」
Hoolaの声が、今まででいちばんまっすぐだった。
Hyeheheは、ふっと笑った。
「……いいぜ。
お前にだけは、負ける気しかしねぇから」
⸻
そして、音楽室の外――
こっそり覗いていたPomily全員+Cherubble&Humbugは、まるでドラマの最終回を見終えた視聴者のように…
「ギャーーーーーーー!!ついに言ったァァァ!!!」
「尊い……尊すぎて泡吹く……」
「てか私たちのサポート完璧だったわね!?」
「……風が、祝福してる……」
「っていうかもう2人ともイチャつけよ!!」
と、ひとしきり盛り上がったあと、そっとその場を離れていった。
⸻
翌週 (エピローグ)
昼休み。教室の後ろの席では、HyeheheがHoolaの頭をくしゃっと撫でながら、プリントをすり替え――
「ちょ!またうちのノートいたずらしたでしょ〜!?バレバレなんだからね〜!?」
「へへ、でもお前、ニヤけてんじゃん」
「うっ……そ、それは……!しょ、しょーがないじゃん!!もう……!」
今日も2人は、にぎやかに、幸せに、笑い合っていた。
⸻
〜完〜