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あの頃の『私』は本当は誰かに気が付いてほしかったんだろう。
待ち合わせの場所まで向かう電車に揺られながら、私は昔にふと思いを馳せる。
…思い出していたのは『本の虫』と呼ばれていた時の私のこと。
当時の私は本の中という空想の中に飛び込むことで、私というものを見ないでいた。
見ないでいられたというのが正しいかもしれない。
周りが誰かと自分自身を比べて、羨むように、
私は私を見ないことであの頃を過ごしていたのだろう。
思春期という独特のあの時期…、
いや、これから先もきっとあるのかもしれない。
誰かと比べて、羨んだり、勝手に誰かを下に見て自分自身を保ったり…
それはきっと、背の高い視界の遮られた葉の中だけで過ごしていたら見えない世界。
少しだけ歩みを進めて足を伸ばせば届きそうな、
もしくは
少しだけ頭を持ち上げて背伸びをすれば見えそうな
となりの芝生は青々と繁って見えるのかもしれない。
けれど、私から見れば青々と繁って見えるとなりの芝生も本人から見たら悠々自適な快適な環境とは限らないのだろう。
あの日、勇気を出してあの子が私に
『貴女は私の憧れです!!』
と息を弾ませながらいった言葉を懐かしく思い出しながら、今のあの子が待つ場所へと歩みを進める。