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クズ森だー!!だいっすきまじで!
思ったより何倍ももっくんのクズ度が凄くて笑
初コメ失礼します🙇 このお話、めちゃ好きです! 日常の方もひそかに読ませて頂いて、続き楽しみにしてます✨
「おはよ、若井。」
涼ちゃんがスタジオに入ってきた。
本日午前中はメンバーと、午後からバックバンドメンバーを加えてのスタジオ練習日。
「おはよ、涼ちゃん。」
「早いね?」
「そ?」
椅子に座ってギターの準備をしていると、
「若井、これあげるよ。」
そういって涼ちゃんは小さな箱を渡してきた。
「ありがとう。なにこれ?」
「チョコ。コンビニに寄ったら美味しそうなのたくさんあったから思わず買っちゃった。」
「そっか。もうすぐバレンタインだな。」
「すごいよね。チョコ菓子一色だったよ。」
箱を開けると、惑星を模した500円玉くらいの大きさのチョコが三粒入ってた。
一粒食べてみると
「うぉっ、中ラズベリーソース?甘いチョコと超合う!」
涼ちゃんも自分用に買った箱を開けて
「ん!こっちナッツとキャラメルソース入ってた。うっまー。」
「元貴には何買ったの?」
「買ってないよ?」
「え?」
え?
元貴にこそ一番に買わなきゃいけないじゃないの?
「元貴は涼ちゃんからこそ貰いたいんじゃ…。」
「元貴なんて知らないもん。絶対あげない。」
そういって頬を膨らませる涼ちゃん。
元貴が見たら「可愛いぃぃぃぃ!!」って絶叫しそうだな。
「元貴と喧嘩でもしたの?」
「……。」
夫婦喧嘩は犬も食わないっていうけど、これから練習だからなぁ。
このままじゃまずいよなぁ。
「…元貴…――してた。」
「え?」
「元貴浮気してた…。」
「え…?」
涼ちゃんにべた惚れのあいつがそんなことする?
「涼ちゃんの勘違いじゃない?」
「ううん。アイドルの子と…。」
次第に涼ちゃんの目に涙が浮かんできた。
マジ?なんかあるたびに惚気言ってきてた元貴が浮気?
「辛いかもしれないけど、見たこと話してくれる?」
涼ちゃんはズビッと鼻をすする。
近くにあったティッシュを数枚とって渡すと、ごしごしと涙を拭いた。
「そんなにこすったら目が腫れちゃうって。」
「うぅ~…。だってぇ…。」
すでにティッシュが意味をなさないくらいぐしょぐしょになっている。
どうしたもんかと考えていると
「おいすー。」
間延びした声が聞こえてきた。
「元貴…!?」
俺がびっくりした顔で元貴を見たもんだから、元貴もびっくりした顔をして
「え?何、どうした?・・・って涼ちゃん?え?!泣いてんの?!」
その瞬間元貴の顔が般若のようになってこっちを睨む。
「若井、涼ちゃんに何した?!」
「してねぇわ!」
「涼ちゃん、大丈夫?」
「…やっ。」
思わず、といった感じで涼ちゃんは伸びてきた元貴の手を払いのけていた。
「涼ちゃん…?」
「ご、ごめん。ちょっと落ち着くまで抜けるね。」
涼ちゃんはバタバタとスタジオを飛び出していった。
唖然とする元貴。
涼ちゃんに拒否られたことでショックにあまり灰になりかけている。
これはさっさと白黒つけた方がよさそうだ。
「元貴、浮気してんの?」
「あ“ぁん?!」
自慢の声量で地獄の底から聞こえてきそうなドスのきいた返事をしてきた。
怖ぇよ。
「涼ちゃん、元貴が浮気してるって言ってた。」
「はぁ?何それ!俺が涼ちゃん以外好きになるわけないじゃん!!」
「俺も詳しく聞いてないんだけど、てか聞く前に元貴が来たから聞けなかった。」
「なんて言ってた?!」
「『アイドルの子と』って言ってた。」
「どれだ?最近コラボ多いからわかんねぇな。面倒だから全部共演NG出しとくか…。」
「落ち着け。涼ちゃんだってたかがコラボで浮気と思うわけないだろ。」
「じゃぁ何?!」
「知らねぇよ。涼ちゃんが戻ってきたら落ち着いて話し合おう。」
「落ち着いて話できるかな…。」
元貴は頭を抱え、今にも泣きそうな表情になった。
それがなんとなく面白くて思わず小さく笑ってしまった。
「なに笑ってんだよ。こっちは一大事だってのに。」
「いや、学生の頃のクズっぷりからは考えられないからさ。」
「…涼ちゃんには絶対言うなよ。」
「さぁねぇどうしようかなぁ。」
「言ったら指もげるようなコード満遍なく入れるからな。」
「俺が成長できるからいいよ。」
「この陽キャやなんだけどー。誰か遮光カーテン持ってきてー。」
「クズよりマシだろ。」
「クズと比べんなよ。こっちがびっくりするわ。」
「クズの自覚あったんかい。」
「あの時はクズだったよねって自覚はまぁね。」
『元貴、もう彼女と別れたの?』
『だって音楽する時間削って自分の相手しろとか。馬鹿なの?』
『それだけ元貴のこと好きだったんじゃん?』
『俺は好きじゃないからもういらない。』
『いらないって…子供のおもちゃじゃないんだから。』
『俺を楽しませられないからおもちゃ以下だよ。』
『お前さぁ…。』
ーーーーーーーーーーー
『あれ?元貴今日デートじゃなかったっけ?』
『曲浮かんだから行くのやめた。』
『ドタキャン?!ちゃんと連絡したよな?』
『してない。いつもだからそのうちあっちも帰るんじゃね?』
『いつも?!』
ーーーーーーーーーーー
『いつも若井君とばっかり!若井君と私どっちが大切なの?!』
『若井。』
『!?』
『彼女とか一過性のものだけど、友達は一生もんじゃん?ってことで別れよっか。』
『!!』
「友達として選ばれたことは嬉しいけど、彼女への言い方クズ過ぎ。」
「真正面から堂々と地雷踏み抜いてくるような奴に言い方もクソもねぇよ。」
「元貴が涼ちゃんとずっと一緒にいたいって思うように、当時の彼女も元貴ともっと一緒にいたいって思ったんだよ。」
「若井先生、僕には難しすぎます。」
涼ちゃんが来ないことには練習も話し合いも始められない。
元貴は椅子に座って地震が起きるんじゃないかってくらいの貧乏ゆすりをしている。
やばいな、探しに行った方がいいかな。
そう思い始めた時、スタジオの扉が開いた。
「涼ちゃん!?」
元貴が勢いよく立ち上がり、扉の所に立つ涼ちゃんに駆け寄る。
「涼ちゃん!100%誤解だから!!誓って俺は浮気なんてしてない!!絶対してない!!」
「…。」
俯く涼ちゃんと必死の元貴。
「とりあえず二人とも落ち着いて。ちゃんと順を追って話そう。」
二人をそれぞれ椅子に座らせようとするが、元貴はソファーに座る涼ちゃんにぴったりくっつくように座った。
「元貴、落ち着いて話し合うんじゃなかったのかよ。」
「やだ。絶対涼ちゃんから離れない!」
俺はため息をつき、ソファーに座る二人の前に椅子を持ってきて座った。
「で、涼ちゃんは元貴が浮気してるところを見たと。」
「涼ちゃん!俺浮気してないよ!」
「元貴ちょっと黙ってて。今涼ちゃんのターンだから。」
「……。」
「涼ちゃんは何を見て元貴が浮気してると思ったの?」
「―――…キスしてた。」
「え“、元貴がアイドルの子と?」
「してないしてない!そんなことするわけない!!
「涼ちゃんはいつ見たのその場面を。」
「…昨日TV局で仕事が終わった後元貴だけ別の仕事があって残ってたじゃん…?それで、若井とマネージャーと帰ろうとした時、楽屋に忘れ物したことに気づいて取りに戻った時…。」
そういえば帰る時に涼ちゃんが忘れ物したとか言って楽屋に戻ってたな。俺は別の用事があったから先に帰ってその後のこと知らなかった。
「角曲がったら楽屋ってところで、楽屋の前で…。」
「え?!楽屋の前でキスしてたの?!元貴お前マジ何してんの?!」
「してねぇんだって!!」
確かに慎重派の元貴がそんな大胆なことするとは考えられない。
「でもそうか。わかったわ、俺が浮気したって涼ちゃんが勘違いした理由。あれはキスじゃなくて「目が綺麗ですね」ってあっちが顔近付けてきたんだよ!」
「そしてそのままキスしたと。」
俺の言葉に涼ちゃんの顔が絶望に歪む。
「だからしてねぇって!!なんか俺の二重がアイドル的に理想なんだって。だから羨ましいってしげしげ見られたんだよ!」
「それを涼ちゃんが目撃してキスしてると勘違いしたってこと?」
涼ちゃんならあり得る。と思って涼ちゃんを見るとぽかんとした表情をしていた。
「え…?僕の勘違い?」
「そうだよ!顔近づいてただけでキスしてなかったでしょ?!てかあんなのとキスなんかするわけないじゃん!気持ち悪い!!」
吐き捨てるように言う元貴。いや、ちょっとクズ出てますよ。
「俺がしたいと思うのは涼ちゃんだけだから!涼ちゃんしかいないから!!」
「元貴…。」
二人の世界に入りそうだったので、パンパンと手を叩く。
「はいはい。問題解決したので練習に入ろうねー。」
我に返った涼ちゃんは茹蛸のように真っ赤になった。
「ご、ごめん!すぐ準備するから!」
涼ちゃんは慌ててキーボードところへ準備しに走った。
そんな涼ちゃんをデレデレした顔で見てる元貴。
「やきもち焼いてくれたんだ…、涼ちゃん可愛すぎる…。」
「やきもちとかそういうレベルじゃなかったけど…。」
本人たちがいいなら、もういいか。
「あ、若井。俺マネージャーに用事あったんだわ。ちょっと電話してくるね。」
席を立つ元貴に俺は声をかけた。
「元貴。」
「なに?」
「相手方潰すなよ。」
「……。」
元貴はそれはそれは素敵に微笑んで見せた。
「涼ちゃん悲しませるゴミクズなんてこの世にいらないよね。」