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〜side伊波〜
小柳がいなくなって一週間
俺は小柳の部屋でぼーっとしている
家の事って‥‥自分の仕事だよな
帰るまでどのくらいかかるんだろう
そう言われると俺って小柳の事あんまり知らないのかも
アイツだって喋る方じゃないし
場所を移しバルコニーへ出る
下を見下ろすと門を開けて星導が帰って来た
小柳‥‥お前はいつ帰ってくるんだよ
じっと外を見ているといつの間にか星導が隣で俺の顔を覗く
「今日も帰らないね」
「そうなんだよね。ま、今月中には戻るだろ」
「んー、どうかな。俺たちのちょっとと君たちのちょっとは違うかもしれない」
「‥‥やめて?怖い事言うの」
「あ、ごめん‥‥」
「‥‥俺こそごめん。最後ちゃんと話し聞いてあげれば良かった‥‥」
「帰るって言ったなら帰ってくると思うよ。小柳くんは出来ない約束はしない人だから」
「‥‥分かってるんだけど」
分かっててもそばにいないと不安になる
俺は自分の胸に手を当てる
「‥‥お前ここにいんの?」
「‥‥‥‥なぁ、なんか言ってみろよ」
手を当てた胸は自分の暖かさとは違うふわふわとした何かに支配される
思い込みかもしれないが、なんとなく何かあるように思えてしまう
「なんだこの感覚。お前俺に呪術でもかけてったんか?」
「‥‥なんか大声で話してるけどヤバくない?」
「しっ!カゲツも早く部屋に行った方が良い」
星導とカゲツが後ろの廊下でコソコソと話してる
小柳のせいで俺が変人になりつつある
「‥‥会いたいよ小柳」
そして一週間
そのまた一週間
俺はすっかり自分の胸に手を当て、独り言を呟くのが習慣になっていた
「なぁ、長くね?一カ月って‥‥お前まさか負けてんのか?」
いつものバルコニーで外を眺める
すっかり外は寒くなり、息が白く消えて行く
「お前のモコモコダウンここに置いて行ってるけど大丈夫そ?」
「誰と会話してんの?怖いって」
「‥‥んだよカゲツ。俺は今、イマジナリー小柳と会話中だよ」
「‥‥‥‥え?小柳名前変えたの?」
「小柳抜きでお前と会話するのムズ」
「は?」
「もういいよ。寒いから中入ろう」
カゲツの背中を押して部屋に入る
もう一度振り返り外を見た
窓の外では枯れ葉が風に乗り揺れて落ちる
「‥‥狼なら帰ってくるよ」
「うん‥‥そうだな」
そっと胸に手を当てる
「早く帰って来いよ‥‥小柳」
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