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やっちゃったよ!遂にやってしまったよ!いや、正直何処かで武力行使が起きるのは避けられないだろうなぁって予想はしていたよ?対話だけで地球と仲良くやれるなんて考えるほど能天気じゃないし。でも出来るだけそのリスクを減らすために人前に姿を見せたりして、たくさんの人と交流するように頑張ってきたんだけどなぁ。
某国の工作員さん達がばっちゃんの親衛隊になった時点で嫌な予感はしていたけど、ここまで事態が悪化するなんて考えていなかった。
いや、ばっちゃんやアリアはこの事態をある程度予測していたんだろうなぁ。凹むよ。
某国によるミサイル発射は前世でもたくさん経験したし、30年経っても変わらないってある意味スゴいなぁって呑気に構えていたら、アリアが正当防衛を開始。ミサイルを消滅させて、更に発射基地まで攻撃しようとしたから慌てて止めた。
甘いと言われるのは百も承知だけど、この段階でアード人が地球人を傷つけるような事は極力避けないといけない。まして死人が出たら最悪の結果になるのは目に見えている。だからアリアを止めた。アリアは私の気持ちを汲んでくれたみたいで、報復攻撃は無人の発射台を蒸発させるだけに留まった。
プラネット号、つまりハンマーヘッド級駆逐艦は大気圏内航行能力を持たないけど、地上への正確無比な攻撃手段はしっかりと備えていることを地球の皆さんに周知させる結果になってしまったのは不可抗力だ。そう言えば伝えていなかったなぁ。
日本も上から下まで大騒ぎになってるし、美月さんから直ぐに会いたいって連絡が来た。桜島観光は無期延期だね……残念。
現地の皆さんからも直ぐに首相官邸へ向かって欲しいと矢の催促だ。食休みの真っ最中だったけど、こんなことが起きたんだから呑気には出来ない。
フェルの力を借りて私達は直ぐに東京にある首相官邸へ転移した。その際ジャッキー=ニシムラ(空気を読んで下着を着用)さんにお願いされて、彼も一緒に転移した。どうやら異星人対策室も大騒ぎみたいで、直ぐに帰国するように指示が飛んできたんだって。
「では皆さん、また合衆国でお会いしましょう。どちらにせよ、近日中に来訪要請が出るとは思いますが」
ジャッキー=ニシムラ(蛍光色のスーツ)さんは爽やかな笑顔と共に空港行きのバスへ乗り込んでいった。
「ばっちゃん、これ大問題だよね?」
「地球からすれば色んな意味でね☆」
「……どうすれば良い?」
「ティナちゃんの気持ちを最優先に。少なくともこれで私達の立場が悪くなることはないよ。いや、そうならないように合衆国や日本が上手く立ち回るだろうからね。悪いのはミサイルを無警告でぶっ放したあの国なんだからさ☆」
「分かった……フェル、カレン。ちょっと待ってて。美月さんに会ってくるから」
「ん、分かったよ」
「気をつけてくださいね、ティナ」
「うん」
首相官邸にある執務室へ案内された私は早速美月さんと会えた。と言うより、部屋の中には美月さんだけだ。セキュリティとか大丈夫なのかな?いや、信用してくれるのは嬉しいけどさ。
さて、なんと言えば良いのか……間違いなく大問題だし、先ずは謝らないと。
「ティナちゃん、屋久島はどうだったかしら?」
どう話を切り出そうかと考えていたら、美月さんが笑顔で感想を聞いてきた。気を遣わせてしまったなぁ。
「とても素敵な場所でした!神秘的な森の中で癒されましたし、縄文杉は見ていて圧巻と安心感を感じましたね」
「ふふっ、気に入ってくれたなら良かったわ」
「私達アード人は自然と共に生きていますからね。豊かな自然は喜ばれると思いますよ?」
アードは宇宙進出するような星間国家なんだけど、住居は基本的にツリーハウスなんだよねぇ。中身は色々ハイテクだけどさ。
「あら、そうなの?意外だわ。高度な文明だから、あんまり自然は残されていないと思っていたの。ほら、良くあるじゃない」
SFで良くあるエキュメノポリス、つまり都市惑星だね。惑星全体に広がる超巨大な都市だ。遠い銀河で騎士さんがチャンバラする映画でも何ヵ所か出てきたなぁ。
「意外かもしれませんが、惑星アードにある建物は大半がツリーハウスなんですよ。うちの里にある集会所なんて、古代ローマ時代とかにありそうな石造りのアレですし」
「ますます興味深いわねぇ。文明レベルが突き抜けると生活は原点回帰するのかしら?」
「それは分かりませんけど、アード人は文化を大切にする種族なんです。最新のテクノロジーを利用しながらも古い伝統を守って生活しているんです」
いやまあ、空に浮かぶたくさんの浮き島、その間を飛び交う重力制御装置を動力にした車みたいなものがあるのに家はツリーハウス。転生した直後は色々あべこべで混乱した覚えがある。まあ、SFファンタジーな世界だよ。うん。
「見てみたいわね、アード。日本人として親近感が生まれたわ」
「今度動画を撮影してみますね」
「どうせなら動画サイトにアップしてみたらどうかしら?地球の皆さんに広くアードの事を宣伝するにはうってつけじゃないかしら?」
そうだよ!昔みたいに動画サイトは幾らでもあるんだから、有効活用すれば地球の皆さんにアードの事をもっと手軽に知ってもらえるんだ!
為政者の思惑だとかメディアの介入があるとどうしても歪んでしまうことがあるし。それなら私がアードの様子なんかを動画にしてサイトにアップすれば歪むこともない。視聴した人達それぞれが判断してくれたら良い。
アリアが介入すれば消されたり内容を弄られる心配も無いからなぁ。
「ありがとうございます!アードへ帰ったら直ぐにやってみますね!」
「ええ、楽しみにしているわ。
……落ち着いたかしら?」
「……緊張してるの、バレちゃいました……?」
「貴女はとっても素直だから、直ぐに分かったわ。大丈夫、今回の行動で貴女達を批判することはないわ」
「でも大問題になりませんか?」
「ティナちゃん、あの国はティナちゃんが生きていた頃と変わらないのよ。何度か変革のチャンスはあったけれど、それを掴めなかった。
つまり、たまに打ち上げられるはミサイルにうんざりしていたのよ。少なくとも日本は好意的」
「大丈夫なんですか……?私に出来ることはありませんか?」
「大丈夫、心配しないで。当事国である日本が気にしないのだから、ティナちゃんも胸を張って。彼らはやり過ぎたのよ」
「それを言ったら私だって……助けられてばっかりです」
美月さんは庇ってくれるけど、大変なのは間違いない。でもアリアを責めるつもりもないし……。
頭の中がグルグルするなぁ……ん?撫でられてる?
顔を上げると、笑顔の美月さんが私の頭を撫でていた。
「例え全世界が貴女を否定しても、私はティナちゃんの味方よ。だって、貴女は私を助けてくれた大切な恩人なんだから」
「美月さん……ありがとうございます……」
美月さんの優しさが心地良い……今は……好意に甘えて大人しくしておこう。今後も考えないと……ね。