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「佐野くん、お疲れ様!」
「あ!お疲れさまです!今回はすごく勉強になりました!ありがとうございました!」
話しかけてくれたのは今日のバラエティでご一緒した、博多出身の芸人の方だった。
「いやいや、こちらこそありがとうねー。
これ、みんなにも配っとるんやけど佐野くんも好きって聞いたから。」
はい。と渡された紙袋の中には有名なあの店の明太子…。
「うわ!いいんですか?俺本当に好きなんですよ。ありがとうございます!」
「良かったばい。美味しく食べんしゃいね。」
うわー。普通に嬉しい。どうやって食べようか?やっぱり明太子パスタかな?物が良いからシンプルに米だけでもいいなぁ。
心なしか帰りの足取りが軽い。家に着いての楽しみがあるっていいものだな。
ふ、と料理好きのメンバーの顔が浮かぶ。
「…あいつなら何作るかな?」
『おつかれー。さて問題です。明太子があります。あなたならどう料理する?』
ちょっとうざいとか思われそうだけどメッセージを送る。この時間ならまだ起きているし、律儀だから既読スルーはしないだろ。
ブブッ、とスマホが震える。
『は?うざ。何急に?』
思われるじゃなかった、言われたわ。
相変わらずお口悪いねぇ。
『明太子いただいたんだけど、そのまま食うとかパスタ以外におすすめ料理あるかなーって思ってさ。』
『へー。いいね。お前あれも好きじゃん。明太だしまき。』
なるほど。確かに好きだわ。でも作るのシンプルにむずくね?
と考えていたら続けてメッセージ。
『俺雇う?必要な材料買ってきたら作ってやるよ。』
…なんかもうだし巻きの口になっちゃったし。お願いしちゃおうかなー。
「おじゃましまーす。」
「はい、いらっしゃい。」
あの後買い出しの指示があったからスーパーに寄って卵一パックと大葉、とろけるチーズを購入。
それらが入ったレジ袋と明太子の紙袋を手渡す。
「おゎ。これめっちゃいいとこのじゃん。もったいなくね?」
「いやー、でもだし巻きも食いてぇし、そのまま食う分も残してくれれば。」
むい #推し様大好こ星人
365
あめ
5
ふーん。と軽い返事をすると踵を返してさっさと家の奥へ向かってしまった。俺一応客だけど?置いて行かないでよ。
洗面所で手洗いとかを済ませてリビングへ入ると、もう既にキッチンに立って料理をし始めていた。
こんっ、ぱきゃ、とぅるん、
手際よく卵を割っていく手元を見ながら、
「卵って何個使うん?」
邪魔にならないようにキッチンカウンター越しに問いかける。
「一個でもできんことはないけど、今日は3つずつかなー。んで3種類作る。」
話しながらも手は止めず、溶いた卵に白だしと…みりん?それと塩?分量を把握しているのか計ったりせずにどんどん入れていく。すげぇな。
かちゃん、コンロに卵焼き器を置いて点火して、薄く油を引いて卵液を1/3くらい流し込む。
その上に明太子をどん、と一本。
「うわっ、贅沢。」
思わず声が出るとこちらをみてにやり、と悪い顔で微笑む。
くる、くる、手前に巻いて端に寄せたらすぐに卵液を追加。またくるくる巻いて寄せて、卵液。流れるような調理に魅入ってしまう。
「はい、まずひとつ。明太だしまき。」
大きめの平皿にぽふん、と乗せられた綺麗な黄色のだし巻き。うまそー…。
出来立てほかほかのだし巻きに見惚れていると、今度は包丁で大葉を千切りにしている。
それと…明太子を縦に半分に切るの?
そしてまた先程と同じように卵3つに調味料を入れてチャカチャカと溶いている。
卵焼き器にじゅわっと卵液、半分に切った明太子、大葉を散らしてくるくる、卵液、大葉、くるくる…。
「手際よすぎん?」
「そう?慣れたらこんなもんだろ。」
慣れるって、そこそこの回数をこさないとないとだろ?俺には無理だわ。
「ふたつめー。明太大葉だしまき。」
先程のだし巻きの横に並べられる。
「ってことは、3つ目は明太チーズ?」
「正解。こってりも上手いよなー。」
あっという間に3種類の綺麗なだし巻きが並んだ。
あぁー…腹減った。
「「いただきます。」」
俺が到着するまでに米も炊いて味噌汁も作ってくれていたらしく、テーブルの上がにぎやかだ。
ばくっ、
じゅわっ、と口のなかに広がる優しい出汁の味と、ピリッと刺激と塩分のある明太子。
めちゃくちゃ米が進む。
「うまぁー。あー最高。」
「ほんとうまいなこの明太子。取り寄せできんのかな?」
「ぁ、今日のお礼で俺買ってやろうか。」
「まじ?じゃあ遠慮なく。冷凍もするから量多いやつ買ってくれ。」
「マジで遠慮ねぇな!」
軽口を叩き合いながら食っていって、次々消えていくだし巻きたち。
出来立てのあたたかい食事って腹を満たすだけじゃなくて、何ていうか、気持ちも満たしてくれるな。
誰かと一緒に何気ない日常の会話をしながらだと、尚更。
「美味かった!ごちそうさま!」