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空が薔薇色に染まっていく 。教室の窓から沢山の蔦が伸び 、眠ってしまいそうな居心地の良いそんな暗さ 。放課後の教室 、君の色なのか夕日に染まっているのか分からない君の真っ赤な頬 。そこで重なるキス … 。なんて 、そんなドラマチックな事はあったもんじゃない 。そう 、そのコンディションは最悪と言っても過言では無いほどに悲惨な物だったのだ __ 。
早朝 、僕は寝坊助な彼を起こすのが何時もの日課だった 。いつものように彼のベッドへ行き 、彼の寝顔を見るなり大声で「 エース 、起きろ 」と叫ぶ 。勿論 、1度では起きるはずのない彼 。腹立たしいが、ここで諦めてしまうのはなんだか気が引けて 、結局何時も起きるまで叫んでいる 。3 、4回程叫んだ頃に 、エースは眉間に皺を寄せながら渋々目を開き始める 。
♥「 んん゛…… お前朝から声デカすぎんだよ … もうちょい優しく起こせよなー … 」
グチグチ文句を言いながら体を起こすと 、僕の顔を見るなりキリっと睨んできた 。こっちは起こしてやっているのにと腹が立ってくる 。
♠︎「 なんだと 、僕は忙しい朝に態々どうでもいいエースの事を起こしてやっているんだぞ 」
僕の言葉は間違っていないはずだ 。忙しい朝に態々合間をねってエースの事を起こしている 。むしろ、感謝するべきだろと思いむしゃくしゃしながら制服のネクタイを結ぶ 。
♥「 デュース 、ネクタイズレてる 。治してやっから動かないで 」
嫌になる程 、エースは僕よりも器用だ 。本人には絶対言ってやらんが … 。そういえば 、この間クラスの友達にお前らの距離感がバグっているという話をされた事を思い出した 。自分ではそんなつもりはさらさらないが 、他から見たらそうなのだろうかと思い 、ふとエースの方に視線を向ける 。いつもの事で気になんてしていなかった 。が … これは確かに近いな 。別にこのくらい友達なら普通なのだろうと思っていたのだが 、何気にこの距離感はエースだけなのかもしれない 。そんな事を考えていると 。
♥「 ん?なーにデュース 。オレの顔になんか付いてる? 」
視線が合うと 、何故か瞬間的に目を逸らしてしまう 。特に意味は無いが 、目が合うと逸らすのは人間の本能というか 、まぁ 、そんな感じのものなのだと思う 。多分 … 。
♠︎「 い 、いや … 何でもないぞ 。ネクタイありがとうな 」
そう言ってエースから離れようとした瞬間 。何やら柔らかなものが唇に触れた 。
♥「 …… どう ? 」
意味がわからなかった 。どうってなんだ 、何故今エースは僕にキスをした?したくなったから?距離が近かったから?思考をグルグルと回転かせても結論には至らなかった 。無言で呆然としていると 、エースがまた口を動かす 。
♥「 デュース?なに〜?気持ち良すぎて声も出ない? 」
何時も揶揄ってくる時に使うその腹立つ声色を聞くと 、はっと我に返った様な気がした 。最初は吃驚し過ぎて固まってしまったが 、我に返った瞬間に僕は訳も分からずエースを押し飛ばしていた 。
♥「 っ 、た!!ちょ 、何すんの!! 」
♠︎「 何すんのはこっちのセリフだダァホ!!な 、何で今 、き 、キス何てしたんだ!! 」
痛そうに頭を抑えながら此方を睨んでくるエースに僕は睨み返した 。顔は赤くなり 、体温が上がっていくのがわかる 。それは照れているからなのか怒鳴っているからなのか 、どちらなのか分からない 。ただ 、さっき触れたエースの唇の感触と熱だけが鮮明に残っている 。
♥「 ん〜 、何となく?だって今そういう雰囲気だったじゃん 」
♠︎「 は 、はぁ …?僕は何となくでファーストキスを … ッ 、いや 、何でもない … 取り敢えず … 」
何となくという意味のわからない理由でファーストキスをエースに取られてしまったショックと 、此奴こんなにも阿呆だったのかという思いで混乱していた 。だが 、ふと視線を横に向けると 、底には同室の2人 、モブAとモブBがニヤニヤとしながら此方を見ていた 。
A「 あ〜 、俺らの事は気にしないで!ささ 、どうぞ続けて下さーい ッ 」
B「 遂にキスしたかエーデュース 。遅過ぎんだよな 、え 、てか今のが初めてだったの? 」
♠︎「 おい!モブAモブB!揶揄うな! 」
ハーツラビュル寮の1年生の部屋は 、4人が同じ部屋で過ごす事になっている 。だから勿論 、僕達以外にも2人 、人が居るのだ 。揶揄われた腹立ちと僕らだけならまだしも 、2人に見られた恥ずかしさから僕は怒鳴るしか無かった 。何故エースはキスをしたんだ 。何となく何てガキのような考えを持ってキスをしたというんだったらタダじゃ置かないからな 。もっと文句を言っておきたい所ではあったが 、時間的にもう行かないと朝食と授業に遅れてしまう 。溢れ出る感情をグッと堪えて食堂へ向かった __ 。