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静かな細道に一人、少女がしゃがみ込んでいる。
「う~っ…寒い‥」
寒い寒いと嘆く少女は腕をさすっていて、真っ白い息を吐いていた。
『あんた‥ここは危ないよ。』
少女は声のしたほうを見上げた。
そこには白く艶のある髪を持った、紫のパーカーを身にまとった少女がいた。
「‥誰、ですか?」
『‥私はね、レイラー。』
レイラーと名乗る少女はしゃがんで、互いに同じ目線になる。
「レイラー‥さん、ですか。」
『そ、レイラー。この辺は危ないから‥早く帰った方が良いよ』
帰る事を催促するレイラー。
少女は下を向いて言った。
「‥私、これでも怪異なので…帰らなくても良いんです」
『あ、そうなの?奇偶だね、あたしも。』
驚くでも揶揄うでもなく、賛同し自分の正体まで晒したレイラーは少女の横に座った。
「…大丈夫?スカート、汚れるよ」
『大丈夫大丈夫、どうせ汚れなんかは落ちるし。』
問いに対して笑って答えるレイラー。
レイラーは少女に質問した。
『あんたの名前は?』
「…雪女。」
「雪女」という答えに目を見開くレイラー。
雪女は声を震わせた。
「わた、し…名前が、ないんです。」
「昔…一度、仲良くしてくれた女の子が付けてくれたんですけど…」
続けて話す雪女。レイラーは背中をさすって、微笑む。
「何故か…何故か、記憶が、無くなっちゃって…っ」
「女の子の顔も名前も、わたしの名前も思い出せないんです…っ」
後悔しているような声で話す雪女の目からはぽろぽろと涙がこぼれていた。
『…そう。』
『じゃーさ…あたしが付けてあげ__』
「いいです、っ!」
レイラーの言葉を遮って、拒否する雪女。
レイラーは驚いたような顔をして言った。
『…なんで?』
「名前を付けられると…また、記憶が無くなっちゃいそうで…!」
怖いから、と放った雪女はレイラーの服の袖をぎゅっと掴む。
「あなたみたいな…あの時の女の子みたいな優しい人を、忘れたくない…忘れたくなかったんです」
『…ふふ、っ』
レイラーは思わず笑う。
雪女はなにか可笑しかったのかと目を見開いた。
「な…なに、笑って」
『あたし…心読めるんだよね』
「へっ!?」
上を向いて放たれたその言葉に雪女は驚いた。
『あんたはね…わざと忘れてるんだよ』
レイラーは質問の隙も与えず続ける。
『昔起こった事に怯えて、本当は記憶にきっちり残ってるけど…自分で記憶を消そうとして、隠してる。』
「そ、れ…どういう意味ですか」
雪女の問いに対し、レイラーは言った。
『単に、怖くて記憶をわざと忘れてるだけなんだよ、あんたは。』
『…少なくとも、読んだ限りはこうかなぁ。』
レイラーは雪女の頭を軽く撫でて、立ち上がった。
『あんたも、来る?』
怪異達の、シェアハウスに