テラーノベル
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フワリと穴の底に降り立った瞬間、頭上から差し込んでいた日の光に影が射し、驚いたギレスラが見上げると、今まさに入り口を塞ぐように体を倒す二頭の長老の姿が見えた。
次の瞬間。
カッ! ドーンッ! ズッドーン……
カッ! ドーンッ! ズッドーン……
ほぼ同時に二つの音が響き渡り、それと同時にギレスラの居る場所の殆(ほとん)どが闇に包まれる。
『グガァッ!』
戸惑いとも躊躇いとも取れる声に答えたのは、今しがたと同じ音の連鎖であった。
百を超える衝撃音と爆砕音、そして重量を感じざるを得ない地響きと振動が間断なく繰り返した後、静寂を取り戻した穴の底は、漆黒の闇と化していたのである。
何も見えず何も聞こえなくなったギレスラは鋭敏になった嗅覚で、この時最も嗅ぎたくなかった臭いを感じ取ってしまった。
穴のそこかしこにタラタラと伝い、或いはポタポタと頭上から降り注いで来ている液体からは竜の血液の臭いが感じられる。
それも、優しい里の仲間達、一頭一頭の竜達の気配がはっきりと識別出来てしまっていたのだった。
何が起こったのか、正確では無くとも理解してしまったギレスラは全身から力が抜けてしまい、体を濡らし続ける仲間達の体液の中で蹲り動きの一切を止めてしまった。
――――何があったかは判らない、いいや、判る必要は無い…… 兎に角、皆死んでしまった…… ああ、もう誰もいない……
言葉にすればそんな気持ちだったのだろう、幼い竜はそれ以降、何を考えるでも思うでも無く、まるで死んだ様にその身を横たえ続けていたのである。
『もう大丈夫よ坊や、良く頑張ったわね』
『…………』
数時間後、赤い成竜に穴の底から救い出されても無気力で茫然自失のままでいた。
長い首を伸ばしてギレスラを咥え上げ、自らの背に乗せた成竜は、横に佇んでいた山の様な大きさの豚猪に話し掛ける。
『ヴノ頼めるかしら?』
灰色の豚猪は頷いて答える。
『ああ、彼等の埋葬なら任しておくがええ、それよりその子じゃよ、早くバストロの所に運んでおやり』
『ええ、そうするわね、さあ、坊やしっかり掴まっているのよ? ……ん?』
話し掛けられても答えを返すことが出来ないでいた稚竜が気になったのだろう、赤い成竜は長い首を自分の背中に回して金色の虹彩をギラギラさせながら再び問い掛ける。
『大丈夫かい坊や? こんな状況なんだ、ショックなのは判るけどしっかりおし、気をしっかり持たなきゃ駄目よ』
『…………』
『無理も無いか…… でも! アグギャアァァーッ!』
『ッ!』
呆然としていたギレスラが、表情を引き締めて周囲に警戒を示す。
それもその筈だ、今成竜が叫んだ竜語の意味する所は、『闘いの宣言』そのものであったのだ。
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