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緑谷が再び自分の手を胸に持っていって、そのドキドキを感じさせてくれる。爆豪は、緑谷の心臓の鼓動を手のひらで感じながら、自分の心臓も同じように激しく鳴っているのを自覚する。緑谷が「大好き」だと言ってくれた。「一生、君の隣を歩きたい」と言ってくれた。その言葉が、爆豪の胸を熱くする。今まで、誰かにそんなことを言われたことなんてなかった。でも、緑谷は違う。緑谷は、自分のことを本気で好きだと言ってくれる。
「…テメェ、本当に…。」
そう言いかけて、爆豪は言葉に詰まる。自分の感情を言葉にするのが、こんなに難しいなんて思わなかった。でも、緑谷には伝えたい。自分の気持ちを、ちゃんと伝えたい。爆豪は少しだけ深呼吸をして、緑谷の目をじっと見つめて、小さく、でも力強く言う。
「…俺も、だ。テメェに触れてると、心臓が爆発しそうなくらいドキドキする。テメェの声を聞くだけで、胸がむず痒くなる。テメェの笑顔を見るだけで、幸せな気持ちになる。
これが、恋ってやつなんだろうな。俺、テメェのこと、大好きだ。一生、テメェの隣を歩く。絶対、離さねえ。テメェは、俺のもんだ。」
そう言った後、爆豪は少しだけ照れくさそうに顔を背ける。しかし、いずくの手は離さない。その手を、ギュッと握ったまま、訓練場の方を向く。常闇と峰田のペア対、八百万と蛙吹のペアの戦いは、まだ続いている。常闇の黒影が八百万を追い詰めているが、蛙吹が舌で黒影を拘束しようとしている。一方、峰田がもぎもぎを投げて、蛙吹の動きを封じようとしている。
「…よし、ちゃんと分析するぞ、デク。あいつらの戦い方、しっかり見とかねえとな。次、俺たちあいつらと戦うんだから。…でも、テメェの手、離さねえからな。こうやって、手を繋いだまま分析する。それが、俺たちのやり方だ。」
そう言って、いずくの手を握ったまま、訓練場の戦いを観察し始める。八百万が新しい捕縛布を作り出して、黒影を拘束しようとする。しかし、黒影の力が強すぎて、捕縛布が引き裂かれる。蛙吹が舌で峰田のもぎもぎを弾き飛ばして、常闇に向かって突進する。常闇が黒影で蛙吹を迎え撃つ。激しい戦いが繰り広げられている。爆豪はその様子を見ながら、小さく呟く。
「…八百万の創造、やっぱり厄介だな。何でも作り出せるってのは、対処が難しい。でも、作り出すのに時間がかかるのが弱点だ。その隙を突けば、勝てる。蛙吹の舌も強力だが、射程が限られてる。遠距離から攻めれば、対処できる。…テメェなら、どう戦う?デク。」
「……//…、ふぅ……、集中!」
空いている手で自分の頬を軽く叩き、活を入れる。恋の甘い余韻を振り払い、分析の目つきに切り替える。胸のドキドキを抑え込み、モニターに視線を固定する。
「この訓練は、かっちゃんと僕が完全勝利を目指すものなんだ。しっかりしなきゃ。」
小さく息を吐き、ノートを握る手に力を込める。かっちゃんとの絆を力に変え、頭をフル回転させる。
「初手から続けている、峰田くんのモギモギを蛙吹さんが舌で弾き飛ばせたのは、恐らく唾液でコーティングしたと考えてる。本来ならば、峰田くんの個性モギモギは、彼のみくっつかず、蛙吹さんの舌にくっついてしまう筈だった。そこを蛙吹さんの個性、蛙由来の唾液で凌いだと考えるのが妥当だ…。」
指で画面をなぞりながら、瞬時の判断を再現するように呟く。興奮が抑えきれず、声に熱がこもる。
「そうなると…蛙吹さんの個性やその状況判断の高さ…八百万さんの策を練り上げる知識量…十分、厄介だね…。この試合から次の試合までに把握すべき事は、八百万さんが捕縛布を生成している頻度と、蛙吹さんとの連携、残りの体力とかだね。」
眉を寄せ、相手の強みを冷静に列挙する。尊敬の念と警戒心が交錯し、唇を軽く噛む。
「現状を整理と考察すると…現時点で捕縛布は数度生成されている。初戦だから、ということもあるけど、生成し過ぎているように感じる。今回の勝利条件が、ポイントか相手の無力化。ポイントを入れさせないためにも、黒影を捕縛したいのは分かるけど…明らかに悪手すぎる…。何か狙いがあるのか……。」
首を傾げ、八百万の意図を探るように目を細める。不確定要素に、わずかな不安がよぎる。
「また、蛙吹さんが二人をメインでいなしている。蛙吹さんは二人まとめて、いなせるだけのポテンシャルは確かにあるけど、完全な戦闘向きとは言えない個性で戦闘向き二人の相手を複数戦できるだけの体力はないと思う。…もしかすると、蛙吹さんの体力が尽きたら…この試合すら落とすかもしれない……。」
分析に没頭するほど、声が速くなる。相手の弱点を突く可能性に、わずかに瞳が輝く。
「ただ…これは八百万さんが策が失敗していた場合……、本当に八百万さんは未知数なんだ。ここからひっくり返せるだけの何かを持っているかもしれない……。僕とかっちゃんが戦う時も、八百万さんの不確定要素が一番危険だと感じている。僕すらも思い付かない事を彼女はしてくるから……。だから、創造の残りは把握してる。」
手を止めて深呼吸し、最大の脅威に視線を注ぐ。尊敬と畏怖が混じった表情で、戦略の核心を突く。
「僕たちの戦い方は変わらない。かっちゃんが僕の前を守って、僕がかっちゃんの後ろを守る。さっきの試合で、妨害やサポートを僕が拘束する動きは想定しているだろうから、かっちゃんが初手で八百万さんにフェイントをかけてくれるなら、僕はデラウェアスマッシュを撃てば、蛙吹さんはこちらに走るはず。蛙吹さんコンビと構成は似ているからね。先に潰したいのは、拘束のある僕の筈だ。そこを狙う。僕が回り込んで、かっちゃんの近くに行き、八百万さんを拘束できれば、蛙吹さんも問題なく拘束できる。」
指を絡め、爆豪との連携をイメージしながら身を乗り出す。信頼の熱が声に滲む。
「これは…八百万さんがかっちゃんの対策をしていない場合の話……、対策をしていて、且つこの考えすら、相手の誘導に沿っていた場合は…賭けになる…。」
言葉を切り、爆豪を振り返る。緊張が額に薄く汗を浮かべる。
「……、どうする…?」
息を潜め、相棒の判断を待つ瞳に、完全勝利への渇望とわずかな不安が宿っていた。