テラーノベル
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「――なるほどね」
僕とさかえ義兄さんから話を聞いた鷹山さんは、ソファに座ったままのじっと鋭い目でジオラマをにらんでいた。
先ほど、鷹山さんたちの来訪からこちら、ジオラマから磯の臭いはしていない。しかし、僕の目から、僕がはっきりとこのジオラマに恐怖を感じていることが感じられたのだろう、鷹山さんは僕のことを痛ましげに見た後、視線を妹の巫湖さんに向けた。
「巫湖ちゃん、こちらうちで管理させていただきましょうか」
「はい、兄さま」
「あ、じゃあ、持ち帰る用の紙袋を……」
「あ、だめ、です」
巫湖さんは立ち上がりかけた僕の手をとどめ、はっきりとした口調で言った。
「こちらは神様がおわす場所です。これからこちらの神様と縁を切らねばならない方が、気軽に触れてしまっては、神様も縁を切りづらくなります」
「あ、……その、すみません」
とっさにジオラマに触れようとしていた手を引き、謝罪の言葉を口にする。彼女が気弱に見えて、実は芯の強い、そして信仰に敬虔な女性なのだということは明らかだった。僕などより、きっとこういった物品の取り扱いに対してはプロフェッショナルなはずだ。信頼して預けるのが、正しい判断なのだろう。
と、しかし巫湖さんは、はっと何かに気づいたように目を見張り、何を感じたのかほほを赤らめ、わたわたと手を振り回して慌てた口調でつづけてくる。
「あ、あああのわたしこそ、小鳥遊さんのご厚意を無為にするようなつもりは全くなくて……、ご、ごめんなさいごめんなさい……」
「あ、いえいえいえ、あの、僕のほうこそその、いらん手出しを……」
「い、いえいえいえっ、そんなことないですっ、あの、か、紙袋を頂けるのであればそのっ……」
「あ、はいもちろんです、えっとその、今持ってきますんで……」
「あっ、ありがとうございますその、お待ちしてますので……」
「あらー! 二人ったら春なんだから、もぉっ」
はねるような声色で鷹山さんが茶化してくるのを、僕は聞こえなかったふりをする。はわわわわ、と意味の取れない悲鳴を上げているらしい巫湖さんには申し訳なさを感じつつ、持ち帰る用の紙袋を探しにキッチンへ向かった。
コメント
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第18話、拝読しました。巫湖さんの「神様がおわす場所」という台詞から、彼女の信仰の真剣さがひしひしと伝わってきて、一気に空気が変わった感じがしました。でもその後の二人の謝り合いが不器用で可愛くて、鷹山さんの「春なんだから」で思わずにっこり。キャラそれぞれの距離感が絶妙で、続きがすごく気になります🍀