第2話:「帰り」
春の風が心地よい、ある放課後。私は小夏と一緒に帰ろうとして、ふと涼の姿を探した。彼は校庭でサッカーをしている。小夏が私の肩をトントンと叩く。
「奈子、今日も涼を探してるんでしょ?」
「うるさいー、小夏!!」
私は顔を赤くして、少し足早に歩き出した。小夏がニヤリと笑いながら後ろから追いかけてくる。
「まさか、奈子が涼のこと…好きとか?」
「えっ、ちょ、ちょっと、何言ってんの!」
私は慌てて小夏の顔を見て、心臓がドキドキしてきた。
小夏は私が慌てるのを見て、満足そうに頷く。
「ほら、やっぱり!絶対そうだ!」
「違うよ、そんなわけないって!」
「そうだよね、奈子がそんなこと言うわけないもんね。でも、涼もなんだかんだ奈子のこと気にしてる感じだよ。」
小夏はそう言いながら、涼がサッカーをしているグラウンドを見つめた。
私の胸がまたドキドキしてきた。涼が私に気を使っているのはわかるけれど、それが「好き」って意味なのかは、全然わからない。だって、私たちは幼馴染だし、そんな関係にはならないって思ってる。
その時、涼がこちらに走り寄ってきた。
「奈子、小夏、今日も帰り?」
涼が爽やかな笑顔で声をかけてきた。ヤバい。なんも返せない。小夏は二人の間に割り込むようにして、「うん、帰るよ。涼も一緒にどう?」と言ったけど、涼は少し考えてから答える。
「今日はちょっと別の用事があるから、また今度な。」
「そっか、じゃあまたね!」
小夏が手を振りながら先に歩き出す。涼も小夏を見送ると、私に向き直った。
「奈子、ココナッツ、気をつけて帰れよ。」
「ちょっとー!誰がココナッツよ!小夏って呼びなさいよっ」
ちょっと嬉しかったけど、それは幼馴染としての気がして。
「うん、ありがとう。」
涼がもう一度「じゃあな」と言って、私はその背中を見送った。彼がどこまで私を気にかけているのか、まだわからない。でも、涼が言ってくれる「気をつけて」の一言が、今は何より嬉しい。小夏もだけど…
「次ココナッツって呼んだらボコボコにするからー!」
小夏がそう叫ぶ。
小夏に振り返ると、彼女がニヤニヤと見ている。
「どうだった?心の中で「ありがとう」って言ったでしょ?」
「言わないってば!」
私は小夏の肩を叩きながら、恥ずかしさを隠そうとした。
でも、リピートされる。脳内で…
私、顔赤くなってないかな?恥ずかしさを隠すように私は走り出した
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