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マリーゴールドで繋がる恋~乙女ゲームのヒロインに転生したので、早めに助けていただいてもいいですか?~
第110話 - 第110話 「どんなエリアスだって好きだもの」
27
2,889文字
2024年08月25日
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数日後、ルーセル侯爵令嬢とアダン伯爵令嬢の処遇を記した手紙が、カルヴェ伯爵邸にいる私の元へ届けられた。
送り主は勿論、レリアだ。
あの時、フィルマンが答えなかったのは、他にも余罪があったからだ。
ロザンナを断罪した時、彼女たちもまた裁かれるはずだったのに、何のお咎めもなかったらしい。
故に、フィルマンはその罪状も加算させた処罰を下したかったのだ。
これから先もレリアを守るために。
「レリアは何て?」
「ルーセル嬢とアダン嬢の罪が確定したから、その知らせ。国外追放になったのね」
悪役令嬢、ロザンナ・ジャヌカン公爵令嬢はハイルレラ修道院にいるのに、取り巻きの二人は国外だなんて。
手紙を封筒の中に入れながら、私は溜め息を吐いた。
「王太子の婚約者を相手にしたんだ。妥当だろう」
「ロザンナより軽くても?」
「ジャヌカン公爵家が未だに力を持っている。その影響、としか言えないな」
「まだまだ気が抜けそうにない、というわけね」
私の言葉がおかしかったのか、エリアスが頭を傾けた。
「マリアンヌが?」
「レリアが、よ!」
もう、どうして今の流れで私になるの?
むくれそうになる気持ちを抑えながら、レリアからの手紙を引き出しにしまった。するとエリアスは、それを待っていたかのように、私の左手を掴む。
薬指にはめられた指輪に、そっとキスを落とした。
婚約式からずっと私の左手にある、マリーゴールドをかたどった指輪に。中央にはダイヤモンドが埋められた婚約指輪だ。
それを満足そうに見つめるのが、婚約式の次の日から始まった、エリアスの日課だった。
けれど今は、その続きがある。
エリアスは私の左手を引き、椅子から立ち上がらせる。
私の腰を左手で掴み、右手は首元へ。ネックレスに手を伸ばした。
舞踏会の日の夜、エリアスから貰ったマリーゴールドのネックレスに。
***
「もう夏に近いとはいえ、まだ夜は寒いんだぞ。それなのにこんな薄着で」
月明かりの元、庭園に姿を現した私を見て、エリアスが慌てて近づいた。
「ごめんなさい。今日、舞踏会で見たご婦人方を思い出したら、これくらいでいいかなと思って」
舞踏会用だからと肩を露出したドレスを着て行ったけど、ホールにいたご婦人方はもっとだった。
背中を大胆に開けたホルターネック。肩から胸元にかけて露出したビスチェ。
さすがにあれらを着れるほど、スタイルがいいわけじゃないから、高望みはしないけど。
それでも今、着ているのは丈の長いワンピース。夜だから、ショールを羽織って来たんだけど、エリアスからは寒そうに見えたらしい。上着を肩にかけられた。
「外に比べると室内は暖かいからな。さらにダンスもするんだ。参考にする前提がおかしい」
「ふふふっ。そうね」
ひより
9,830
#異世界転生
#じれキュン
当麻月菜
404
ムメイ
37
上着から感じるエリアスの体温に、不謹慎だと思いながらも嬉しくなった。
「温かい」
「っ……それなら良かった」
「ねぇ、話が長くなるのなら、ベンチに座らない?」
エリアスの手を引っ張り、庭園の奥を指差した。
何だかエリアスの様子がいつもと違う感じがしたのだ。
「いや……話は……その、用はすぐに済む」
けれどすぐには話してくれなかった。
言い辛いのなら、言い易い雰囲気にしてあげるのが、年上ってものよね。
ずっと、頼りっぱなしだったし。エリアスも私の内情は知っているから。
「エリアス」
私は俯くエリアスの体を抱き締めた。
「催促はしないからゆっくりでいいよ」
「ゆっくりじゃ、ダメなんだ」
「どうして?」
「……結婚する前に言わないと」
「何を?」
エリアスがこんな風になるほど、重要なことがあったかしら。
「……プロポーズ」
「っ!」
私は思わず、エリアスの体から離れた。
そういえば、日程は決まっているけど……さ、されて……ない……。
気にしてくれていたんだ。
「タイミングとしては、婚約式の前に言うのが筋なんだけど。……ごめん」
「ううん。色々やることがあったんだから仕方がないわ」
詰め込み過ぎる日程をこなしている最中に、そんな余裕など私もエリアスもなかった。
「違う。言う前に、聞きたいことがあったんだ。でも、答えを聞くのが怖くて……」
「私がエリアスを拒絶するとでも?」
「そういう話じゃないんだ。……その、ゲームをしたって言っていただろう。この世界が舞台の」
「うん」
「状況で俺を選んだのは分かるんだ。だけど、もしゲームをしている時から好きな奴がいるなら……」
あぁ、そうか。だからエリアスは怖かったんだね。
私の推しが、自分じゃなかったらって。いつも自信満々のエリアスでも、覆せない事柄だ。
「私がその人のところに行ってもいいの?」
「っ!」
「エリアスは手放しで喜んでくれるの?」
「できるわけがないだろう!」
上着が下に落ちてしまうほどの勢いで抱き締められた。
「なら、そんなことを言わないで。私はエリアスのことが好きなんだから。今も昔も」
「本当に?」
「これでも、エリアスしか見てこなかったつもりなんだけど」
「そうは見えなかった」
まさかの反論。何故に?
「リュカの要望はすぐ聞くし、ユーグには安易にプレゼントを渡す。ケヴィンのところに行くな、って言ったのに破るし、フィルマンを見る目が嫌だった」
「……ごめんなさい」
そんな風に見ていたとは思わなかった。
私の謝罪にエリアスは、溜め息を吐いた。
「こんな格好悪いところを見せるつもりはなかったのに」
「そういうところも、これからはたくさん見てみたいけど、エリアスは嫌?」
「俺はマリアンヌに嫌われなければなんだっていい」
私もエリアスに対してなら、同意見なんだけど。凄いセリフ。
そんな風に思っていると、エリアスは私の体を離して距離を取った。
「こんな俺でも、一緒にいてくれるか。生涯を共にしたいと思ってくれるだろうか」
「勿論よ。どんなエリアスだって好きだもの」
「ありがとう」
ようやく見せてくれた安堵の笑顔に、私も微笑んだ。
すると今度は、ポケットから箱を取り出して、私に見えるように蓋を開けた。
婚約指輪と同じ中央にダイヤモンドがはめられたネックレス。マリーゴールドの模様まで同じだった。
「これ、婚約指輪とお揃い?」
「うん。思い出の花だから。少しだけ早いけど、誕生日プレゼント。当日は多分、渡せそうにないと思うんだ」
「ありがとう」
私が手を伸ばすよりも、エリアスが箱からネックレスを取り出す方が早かった。
付けてくれるんだ、と悟った私は後ろを向いて髪をたくし上げる。
間があったのが少しだけ気になったけど、手間取らずに付けてくれたのは、さすがだと思った。
「うん、よく似合っている」
前を向くと、満足そうに微笑みながら、エリアスは再びネックレスに触れた。
鎖骨にエリアスの指が当たってドキドキする。
夜風はまだ肌寒さを感じるほど寒かったけれど、今はそれが心地よかった。