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誕生日

1 - 誕生日

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2025年10月28日

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夜の空気はすっかり落ち着いていて、時計の針はもうすぐ12時を指そうとしていた。仕事終わりの疲れが体に残ったまま、2人はお風呂を済ませて歯を磨き、

照明を少し落とした寝室のベッドに潜り込んだ。


「……ふぅ。今日も一日おつかれ」

「おつかれ。なんかさ、誕生日っぽいこと、結局できなかったね」


仁人が、枕に頬を押しつけながら小さく笑う。

その横顔はどこか寂しそうで、けど無理に明るく振る舞ってるのがわかりやすかった。


「まあ、しょうがないよ。仕事あったし」

「……まあそうなんだけどさ」


布団の中で仁人がごそっと動く。

勇斗がその音に目を向けると、仁人はそっと体を寄せてきて、勇斗の腕を掴んだ。


「ねぇ」

「ん?」

「腕枕して」


ありえないくらい満面の笑みで言ってきた。あまりにも自然なトーンだったから、勇斗は一瞬聞き返しそうになった。

腕枕?腕枕痛いんだよ、朝起きたら腕びりっびりだぜ?とか思いながら思いついた言葉で返事をする。


「……腕、痛くなるから〜、、やめとく?」

「はー?無理なんだけど」


間髪入れずに返ってきた声。

いつもなら冗談まじりに「そういうの、ガキっぽくない?」とか言うのに、今日は違う。


仁人は少し唇を尖らせながら、勇斗の方を見て小さく言った。

「今日誕生日じゃん俺、わがままきいてよ」


その言葉があまりにも“お姫様”で、勇斗は思わず笑ってしまった。


「なにそれ、可愛すぎ」

「笑うな。……別に、今日くらい、いいでしょ」

「はいはい、いいよ。じゃあ、ここどうぞ仁人お姫様」


勇斗が冗談めかして腕を広げると、仁人は少し照れたように視線をそらして、

でも結局ふわりと勇斗の胸のあたりに頭を乗せた。


「こう?」

「うん」

「重くない?」

「全然」


仁人の髪の先が首筋をくすぐって、シャンプーの匂いがふわっと広がる。

静かな部屋の中に、2人の呼吸だけが重なっていく。


「幸せそうな顔してるじゃん」

「…」


「ほら、顔ゆるんでる!」

「うるさい!寝るよ、もう」


ツンとしながらも、仁人は勇斗の胸に顔を埋めて、

その声が少し震えてるのを勇斗はちゃんと感じ取った。


「お前ってさ、ほんと素直じゃないよな」

「別にいいじゃん、誕生日だし」

「はいはい、ツンデレお誕生日プリンセスちゃーん」


そう言いながら勇斗は、仁人の頭を優しく撫でた。

指先に触れる髪があったかくて、

自分の腕の上で穏やかに呼吸してるこの人が、

世界でいちばん大事な存在なんだとあらためて思う。


「……ありがと」

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