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わたしは屋上で弁当箱を広げて、箸をつけたが、半分以上残して蓋をした。食欲がない。食べなければいけないと思っても、胃が言うことを聞かない。

こんなに天気は良いのに、わたしの心は曇っていた。

スマホの写真フォルダーから妹とわたしのツーショットを探して表示させる。

今から十三年前の韓流アイドルのコンサート会場で撮ったスナップ。妹と撮った最後の一枚になった。

この頃から亜美はパパ活をしていたのだろうか?陸奥丈雄と出会っていたのだろうか?ストーカー被害を受けているなんて微塵も見せなかった亜美に、わたしは恨めしい気持ちだった。

そして、以前、内緒で撮った父親の絵の写真を開く。

そこにはシーツに下半身を包まれ、上半身裸の亜美が描かれていた。ティーン特有の未発達の乳房は少年らしさを思わせた。

バドミントンで鍛え抜かれた上半身は健康的で肉付きがよかった。サナギが蝶になる過程を見事に描ききっていた。

静物画や風景画を描いてきた父親にとって、亜美を描いたのには、何か心境の変化でもあったのだろうか。そもそも、亜美は父親の前でヌードになったことが信じられない。

でもと、思い直す。亜美は父親に甘えていた部分があった。わたしの周りでは父親を毛嫌いする人が多かった。父親の洗濯物とは分けて洗いたがる女子や、父親の入った後の風呂には入れない女子など結構いた。わたしもどちらかというと、父親は苦手だった。

だが、亜美は違った。母親を知らないのを差し引いても、父親にべったりなところがあった。

父親にはバドミントン大会で優勝したことを亜美は一番に報告していた。わたしは父親から聞いた。姉妹なんて、仲良く見えるだけで、実は腹の中では無関心なのだ。

亜美のことをわたしは、まったく知らない。いや、知らなすぎる。本当にひとつ屋根の下で暮らしてきたのか。

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