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信一郎達が乗った車は
丘の上に立つ大きな私道に
立ちはだかる門の前に
車を寄せた
運転手の信一郎の叔父が
小さなセキュリティボックスの
傍まで行くと
彼はウィンドウを
開けて体を乗り出し
ボタンを押した
「いらっしゃいませ」
丁寧な声が答えた
門がゆっくりと開いた
屋敷は煌々と
灯りがともっていた
ベランダの低い壁にも
観賞用の庭の
小道沿いの木々にも
ランタンがずらっと並んでいた
信一郎の車他
海盛丸の
乗組員を全員乗せた
車が4台続いた
約3ヶ月の航海は
特にフィリンピン沖の
シラス捕りは大成功だった
彼らは魚の鱗と血にまみれ
日焼けし上機嫌で
夕べ陸地にもどった
丘の上から港を見下ろすと
海盛丸が港の
ど真ん中に停泊し
寄せる波に乗って
ゆっくりと揺れていた
まるで長い勤めを
終わってゆっくり
くつろいでいるようだ
波の揺れに慣れている体は
陸地においても
かすかに揺れている
どうやら平衡感覚が
陸地に馴れるのも
暫くかかりそうだ
潮風に顏をなぶられながら
船や魚やタールの匂いを楽しんだ
魚の積み上げにセリにと
忙しく思考を巡らしていると
叔父が明日
打ち上げをやると言った
そしてなるべく
良い服装をしてこいと
そんなわけで
信一郎は持っている服の中で一番
清潔に見える
白の綿のシャツに
明るい黄色の
スラックスという
出で立ちをした
だが驚いたことに
他の乗組員達は
信一郎が今まで
見たことが無いくらい
シャレこんでいた
なんとそこには
三助爺さんもいた
剥げて数少ない髪を
後ろにまとめて髪の毛に
なにやら塗っているので
テカテカしている
そのほかにも叔父は
長い航海でもしゃもしゃになった
髭をすっかり綺麗に剃り
趣味の悪いスーツを
着てどこぞの金融だ
とても船乗りには見えない
それ以外にもみんな
こざっぱりしてニヤニヤしている
信一郎は彼らのどこか
そわそわして心なしか
サメを捕獲した
時より興奮している
だがみんなその興奮を
押さえているように感じた
砕いた貝殻を敷き詰めた
駐車場についた頃には
訳が分からず
信一郎は聞いた
「ねぇ・・・・
ここ・・・
どこなの? 」
丘の上の屋敷を
見上げて言った
すると信一郎の親戚の
幸雄が彼の肩を後ろから
がっしり組んで来た
「いいか!
外人の女は乳首を
たいがい赤く塗っている」
信一郎のもう隣を陣取っている
船乗りの洋平も言った
「赤く塗っている女は
いきなり突っ込んだら怒るぜ」
「やっぱヤルなら日本人の女だ」
そのまま
肩を抱かれたまま
ズルズル引きずられながら
信一郎は他の乗組員たちに
ありがたい事に色々と
性の指南をいただいた
信一郎はつかまれてる幸雄達の
手を振りほどき
大声で言った
「もしかして
ここは風俗なの? 」
その途端憤慨した叔父から
頭を軽く叩かれた
「風俗とはなんと低俗な言い方だ」
その言葉に
信一郎はホッとした
ああ やっぱり自分の
勘違いだった・・・・
叔父はにやっとして
信一郎に言った
「彼女達を敬え 」
「ようこそいらっしゃいました
海盛丸の皆様 」
深々とお辞儀をする
迫力ある美人を筆頭に
これほどの大勢の女性を
信一郎は見たことが無かった
迫力ある美人が
叔父と目くばせをしている
この二人が深い関係なのは
一目瞭然だ
その後ろの大勢の女性は
髪や肌の色もだが
体のほとんどが
透けて見える服を着ている
赤白黄色と
まるで色とりどりのオウムだ
海洋高校は男子校だった
信一郎は圧倒されていた
こんなに女がいては空気が薄く
感じる
このような場所を表現するのに
屋敷という言葉が適当かどうか
わからないが
ここは「楊貴館」
と言われる館で
船乗りならだれもが
憧れる竜宮城
そう・・・
ここは女性と
「そういうこと」
が出来る館らしい
そして毎年長期航海の後には
ここで労をねぎらう
宴会が行われるらしい
いかがわしい
イメージとは裏腹に
裏庭からテラスまで
どこも堤灯で明るく
照らされて
屋敷は美しかった
信一郎は幸雄に引っ張られて
大広間まで行く間
キョロキョロあたりを物珍しく
見渡していた
前には美人が
道先案内役をかっている
前を歩く女は金髪で背が高く
そして・・・・
短いスリップに
なんとTバックだ
少し垂れた尻が歩くたびに
左右に揺れる
信一郎は無理やり目線を外した
玄関広間をでて
メインサロンに行くまでの
長い廊下の左側の部屋がフイに
目に止まった
おそらく驚きに信一郎は
2センチぐらい飛び上がったと思った
裸の男女が5~6人
絡み合っている
こちらではほとんどの
男女が肌を合わせている
ふたりの男がソファに座り
片方の男の膝に女が乗っかり
キスをしている
もう一人の方は女の脚を
撫で回している
「こちらは公開ルームと
なっております」
慎ましく案内人の女が言った
「このルームにいる人は
見られることを気にしません
むしろ見られることで
性的興奮を覚えるのです」
ピュ~♪
と幸雄が信一郎の耳元で
口笛を吹いた
「会員の多くの方が
ひんぱんにこちらに見に来ます
のぞき見というのは
性的な快楽を得る手段として
正当なものです 」
二人の男に乳首を
吸われている女が
チラリと信一郎を見てウィンクした
熱いものが首を這い上がり
耳を燃やした
「のぞき見」
という言葉が耳障りで
どこか不愉快に感じた
そんな信一郎の
思いを理解したのか
幸雄は陽気に言った
「なんせ
うちの甥っ子ちゃんには
まだ刺激が強すぎでね
今にも耳から湯気を吹き出しそうだ 」
横にいた洋平が言った
「鼻血もな」
キッと二人を睨んだ
二人は大げさに怖がって見せ
またそれが信一郎の癇にさわった
クスクスと案内役の
女も笑って言った
「本当に仲のよろしい事で
さぁまずはお食事を
用意しておりますので
大広間でおくつろぎ下さいませ 」
「それに酒もな! 」
「俺はいますぐヤレるぜ!」
兄貴分の船乗りの
浮かれぐあいをよそに
さきほど見た光景がショックで
呼吸が荒く口が
カラカラに乾いてきた
頭の中の何かが警告を放っている
こんなことは許されない!
一刻も早く家に帰らないと
信一郎は
幸雄達にズルズル引きずられながら
脱走計画を考え出した
そして大広間で
行なわれているであろう
乱ちき騒ぎを目の当たりにする
事を思い浮かべると
軽くめまいを覚えていた
案内人の女に導かれて
信一郎達は壁掛け燭台の
ろうそくに照らされた
廊下を進んだ
屋敷は見るからに
中世の雰囲気を漂わせて豪華だ
女が振り向き言った
「大広間にご案内する前に
少し寄り道しますか? 」
女は右の階段を指した
「二階はいわば
行動にうつす場所です
さまざまな種類の部屋があります
人目につかない部屋
公開されている部屋
この共通エリアでは
さまざまシーンを目に
することができます 」
「行こうぜ! 」
「その共通エリアでは
どんなことするんだ?」
幸雄と洋平はあふれる好奇心を
押さえられずに
身を乗り出した
女はにっこりほほえんだ
「どんなことでもします
ここ(館)はあらゆる
タブーを捨て去る場所です
ここから一歩中に
入ればまったくの別人に
なることも可能です
あなた方の場合でいえば
本当の自分を偽らずに
表に出すこともできます
ここではあなた方を
批判する人はいません
すべてがオープンで
どんな趣味嗜好も
受け入られます 」
さっきより大きな広間に入ると
そこには何人かの男達が
思い思いに立つなり
座るなりして話をしていた
よかった服を着ている
パーティのような
雰囲気だが騒々しくはない
小声で会話を話す
上品な集まりだと
信一郎は思った
ここへ一歩入ってから
初めて警戒を
解いたような気がした
落ち着いた
ピアノ曲が流れ
ひとりのウェイターが
客の間を縫ってワインの
グラスやオードブルを給仕している
何人かが信一郎の方を見て
にっこりしたが近づいてくる
者はいなかった
男達の間でひょこっと
顏を出した青年がいた
信一郎はその青年と目が合った
着ているのは水色のシャツに
下は白の短パンで
黒い巻き毛がゆるやかに
片目にかかっている
そして耳にはシルバーのピアス
むき出しの脚は
長く優美で白かった
少年ともいえる青年は
口元には笑いを浮かべ
こっちを見ている
じーっと見ている
見ている・・・・・
見ている・・・・・
黒く、長いまつげに縁どられた
青年の目に眺め回されると
どこか信一郎は落ち着かなく
汗がじわっと出てきた
暫くして気付いた
青年が見つめているのは
自分ではなく隣に立っている
幸雄だった
「行こうよ アンちゃん・・・ 」
親しみをこめて
幸雄をそう呼んだ
通りすぎようと
幸雄をひっぱるけど
びくともしない
「いや・・・・ 」
そう言った幸雄も
彼を熱く見つめている
まるで二人の間に
火花が散りそうだ
信一郎は二人の熱を
肌に感じた気がした
青年は廊下に出てきて
優雅に幸雄の前に来た
「女じゃないと立たない?」
青年が囁いて幸雄の
首に腕をからませた
「さあな
試したことがないから分からない」
「僕で試す? 」
「いいぜ 」
二人は熱いキスを交わした
すぐ近くに立っているから
二人の荒い鼻息が聞こえる
幸雄の唇が青年の
首を這いまわり
むきだしで無防備な
姿をさらけだした
幸雄は青年の尻を
両手でもみしだき
自分の一物を青年に押し付けた
この時点で信一郎は
きっと自分の目玉は
飛び出ているだろうと
思うほどそれほど驚いていた
人間あまりにも
ショックな出来事を
目の当たりにすると
ただ立ち尽くすもの
なんだと悟った
「部屋に行こう」
幸雄は青年の肩を抱いて
奥の部屋に向かった
途中で男達の拍手の祝福を受けた
「先を急ぎましょう」
案内役の女は何事も
なかったかのように
信一郎たちを導いた
「おったまげたぜ!
あそこはホモの部屋だ!
まさか幸雄がそのけが
あったなんてな 」
洋平が信一郎を
軽く小突いて言った
案内役の女が洋平を見て言った
「お次の部屋はそこの殿方が
きっと気に入られるかと思います 」
「俺?」
洋平が自分を指さして
キョトンとした
「いっいや~・・・・
俺は・・・
へっへっへ 」
洋平が照れて言った
次の部屋は今までの
屋敷の豪華さと変わって
質素でどこか古ぼけていた
壁一面に御影石が
埋め込まれて
松明が煌々と燃やされ
木々の焦げた匂いがした
まるで牢屋だ
信一郎は昔見た
映画の世界に紛れ込んだ
ような気分に襲われた
パシンッ
奥の方から
何やら音がした
今度の部屋は
とても暖かだった
松明に照らされた女性が
なんと手かせを
付けられていた
そしてその横には
ラバースーツを着た
女性が立っていた
ブロンドの髪をなびかせて
仮面で目を覆っている
そして銅の部分はラバースーツで
隠れているが
胸はむき出しだった
これまた上半身裸の
手かせを付けた女が
足置き台に足を添わせると
体がVの字を逆さにした
形になるようにのびた
信一郎の視線が
さっとラバースーツの女に戻った
ラバースーツの女が
鞭を手に取り
信一郎たちに手招きした
ぎょっとした信一郎をよそに
隣の洋平がフラフラと
引き寄せられるように
向かった
なんだか洋平の様子がヘンだ
案内人がクスッと笑った
「気に入ったんですね」
金属と皮で出来た
不思議な形の台に
洋平が近づいていくのを
信一郎は見送った
ラバースーツの女は
ゆっくりとしたたかな足取りで
洋平の背後へまわった
昔父に連れられた
競馬場で見た事がある
鞭を握りしめている
しかし
競馬場では鞭は馬を叩くもの
もちろんここには馬はいない
女は洋平の耳を噛むと
尻をゆっくり撫で回した
ここからでも見てとれるほど
洋平は息が荒い
女は鞭を振り上げると
洋平の尻に叩きつけた
激しい音が
周囲に響き渡り
信一郎は飛び上がった
まるで自分が打たれた
ように感じた
洋平もびくりとしたが
小さなうめき声をあげて
それでもじっとしていた
「声を出すな 」
女が命じた
女のきっぱりとした
口調に体が震えた
横柄な威厳のある
態度がどれほど洋平を
燃え上がらせているのか
女は知っているのだろうか
いや
知っているに決まっている
そしてもう一度
尻の反対側を叩いた
洋平の中で燃えるような
痛みが尻に走り苦痛に顔が
歪んだと思うと
やがて微笑んで
それはぼんやりした
満足感となって全身に
広がったのが信一郎にも手に
取るようにわかった
うっとりとする
洋平を見ていると
信一郎の頭に血が上り
こめかみがズキズキし
脈打つ指が震えてしまい
ぎゅっと手を握りしめた
案内人の女が洋平にささやきかけた
「あなたは自分の
求めるものが
どこあるかを探しにきました
それには実際に
経験してみるのが
一番です 」
「い・・・いいのか?」
洋平は半信半疑で聞いた
「彼の腕を縛って」
洋平は驚き息を荒くしたが
抵抗はしなかった
すると手かせをつけた女が
皮の紐で洋平の
手首を台の脚に縛りつけた
そして彼のズボンと
トランクスをおろし
今やはちきれんばかりに
屹立しているものを
くわえた
「ああっそんな!!
ああっそんな!!」
洋平は叫んだ
「声を出すなといったでしょ!」
また鞭で尻を叩かれた
ラバースーツの女は
どこを叩くかを
計算しているらしく
同じ場所を二度
鞭打つことはなかった
女に口に含まれたまま
さらに二度立て続けに鞭が
振り下ろされた
洋平は身をよじり
苦痛と深い興奮の間で
宙づりになった
「痛みが好きなのね 」
洋平は答えるようにうなずいた
今にも死にそうに息が荒い
これ以上は見ていられないっっ
信一郎は吐き気を催し
部屋から出て行った
案内人の女は
洋平を女王と三人で
もてあそぶのに加わったらしく
信一郎を追ってはこなかった
そして
あそこにいる女はみんな
乳首を赤く染めていた
「こいつは上等の酒だ!!」
大広間では
海盛丸の乗組員が
呑めや歌えの
乱痴気騒ぎを起こしていた
ざっと見渡してみると
来た時と乗組員の
人数が会わない
幸雄達のように早々に
女とどこかにしけこんでいる
者も大勢いた
もっとも幸雄は女では
なかったけど
それでも中堅所などは
目の前に繰り広げられている
料理と酒を十分堪能していた
「ほうほう♪
長生きの秘訣じゃわい」
三助爺さんは代わる代わる
女の股に顔を突っ込んでいる
三助爺さんに
襲われている女達は
キャーキャー言っているが
嫌がってはいない
むしろ爺さんを可愛いと
自分の方から
抱き着く女もいた
野次と爆笑の渦の中
男達は乱暴に小突き合い
悪ふざけが度を超し
本物の殴り合いに発展するのは
そう長くはないと感じながら
信一郎はソーセージを
噛みしめていた
そこに信一郎の
叔父が戻ってきた
いかにも一風呂浴びたように
こざっぱりしている
「バカな奴らだ」
彼が言う
叔父はおどける子供を
おもしろがる甘い親のような顔で
海盛丸の乗組員を見回した
「俺たちの仕事は家族より
ここにいる者と共に
過ごす時間が長い 」
叔父は言った
やさしい口調だった
「ゆえに仲間同士の
信頼が何より大切だ
どんな素性で
どんな性癖があり
どんな気性をしているか
すべて知った上で
受け入れる
海では頼れるものは
ここにいる仲間だけだ
故に仲間意識に
偽りがあってはならない
ここには人間を丸裸にするものがある」
温和な笑みを浮かべて
船員達を見た
「お前が見てきたものは嫌悪を
表すものもあっただろう
気が進まなければ別にやることは
ないんだ
だがここにいる
連中の士気が下がる事を
するのだけは止めてくれ 」
壁にもたれかけ
腕を組んで言った
「このまま泊まる連中もいるが
俺はあと小一時間ぐらいすると帰る
その時一緒に帰ろう
それまで飯を食っててもいいし
そこらを散歩しててもいい
なに美しいのは女だけではない
ここの中庭も見事なものだ 」
叔父が信一郎の肩をポンと叩いた
「ここでは すべてが自由だ 」
信一郎は片手に持っている
ビールの入ったグラスを
力いっぱい握りしめていた
どう感じるべきか自分でも
決めかねていた
船の上とこの夜の
まったく異なる出来事と
感情を頭の中で整理することなど
それにシラフで
出来るわけがなかった
信一郎の意識は
先ほどの幸雄と青年のキスシーンと
洋平の拷問シーンとの
間を行ったり来たりしていた
「だた もう信じられねぇ・・・」
声に出して言い
言った事で少し気分が良くなった
ぐいっとビールを
一気に飲みほし咳き込んだ
時間をもて余したので
大広間を後にして
中庭に出て
新鮮な空気を吸った
夜空には星が明るく瞬いていた
潮の香りがここまで
のって運ばれてくる
ここは入江の丘の屋敷だ
すぐ近くに海があるのだろう
屋敷の中庭は叔父の
言った通りで
この世のありとらゆる
美しいものを
掻きあわせたようだった
この庭には小さなラグーンがあり
月明かりに照らされた海面は
水銀をこぼしたように
キラキラしていた
小さな海は重い水質を思わせたが
真ん中にポツンを浮いている
灰緑色のずんぐりとした灌木は
なんとマングローブだった
とてもここが
日本の敷地内とは思えない光景に
信一郎は感動して身震いした
海面から突き出た
指の骨みたいな根っこは
まるで大きな手が何かを
掴んでいるように見える
水面の根っこには
海藻がからんで
ゆらゆら揺れている
その揺れを見ていると
船上を思い出した
揺れる船の上で長いこと暮すと
地面の上を歩くことが
どういうものか忘れてしまう
船員達は船の上をよろけずに
歩けるようになることを
「海の足を手に入れる」
と言う
この足を手に入れるのは
オタマジャクシがカエルに
なるようなもの
でも大地の匂いを嗅ぎ
広大な自然を
目の当たりにすると
自分が陸の生物で
あることを思い出す
硬い大地を踏みしめたいと
足がウズウズする
信一郎は靴を脱ぎ
ラグーンの打ち
寄せる波に足をひたした
海は冷たくて
ここちよく
足の上を小さな蟹が走り去った
目の前でバタバタこする音に
信一郎は顔を上げた
自分の目の前の
大きな木の枝に
一メートルはある
色鮮やかなオウムが止まり
値踏みするように
こっちを見ている
胴体は赤褐色で
羽はコバルトグリーン
そしてくちばしは鮮やかな黄色だ
これほど自己主張の強い
色の鳥もこの屋敷の
美しさと淫らさにぴったり
合っているような気がした
オウムはうつむいて
艶やかな青い羽根をくちばしで
整え始めた
完璧に綺麗な自分と
冴えない信一郎を見比べて
悦に入っているようだ
オウムはむき出しの
太い枝につかまり
枝にはひっかき傷が沢山付いていた
信一郎は太いオウムの爪を
眺めて引っ掻かかれたら
出血どころではすまないなと思った
「お前・・・・偉そうだなぁ~」
少し笑って言った
人間が怖くないのだろうか?
オウムが好奇心いっぱいに
こちらに首を伸ばし
信一郎を見つめ
顏を右に思いっきり傾けた
信一郎もオウムを見つめ
顏を同じ方向に傾けた
オウムは瞳孔を
目いっぱい広げると
瞳が真っ黒になった
くちばしを大きく開けて
ひと吠えし信一郎を威嚇した
信一郎は驚いて後ずさりした
綺麗だけどこの鳥は
なんだか怖い
「おどかすなよ!」
信一郎が文句をつけても
オウムはそしらぬ顔で
翼を開いて羽ばたかせ
また一吠えした
「おなかが
すているんですよ 」
信じられないことにオウムが
しゃべった
信一郎は目をぱちくりさせた
それから振り向くと
声の主の女の顏が
そこにあった
身長はやや低め
シルエットが
月明かりと屋敷の
明かりに照らされて
オパール色にふんわり輝いて見える
そして肩の後ろで
揺れている髪も瞳の色も黒だ
日本人だ
信一郎はどこか安心した
さりげなく女を見渡してみる
歳は・・・
自分と同じぐらいだ
可愛い顏をしている
いや
可愛いなんてもんじゃない
彼女の顔立ちは
丸いフォルムで出来ていた
骨格の線は優雅で
良い形の顎がとがっていた
唇はみずみずしく
ふっくらとして
頬骨と眉が描く弓形は
両方対になっていて
見事に均整がとれていた
瞳の色は茶色がかかった黒で
睫は長くクルンと
カールしていた
さきほどの印象は真っ白い
肌だと思っていたが
近くで見ると
白にパールのような
輝きがあった
そして恐ろしいほどキメが細かく
シミひとつ無い
ノースリーブのワンピースから
形の良い腕と足が突き出ている
彼女ははだしだった
しばらく見つめていた事に
ハッと我に返った
「・・・えっと
この鳥・・・・
ここで飼ってるの? 」
声がかすれた
くそっはずかしいっ!
「餌をやると
居ついてしまったんです 」
歯切れの良い声だった
彼女は手の中の皿から
ピンセットで何やらつまみ
オウムに差し出した
オウムは待ってましたと
言わんばかりに
羽をばたつかせ
うまそうに餌を一飲みした
そして
おかわりの催促でまた鳴いた
「何をあげてるの? 」
興味をかられて
また質問した
彼女はオウムを愛しげに
見つめ言った
「とりにく 」
信一郎は面喰って言った
「残酷だな 」
「気づいていないと思うわ」
その声は少し低く
濃密な音色に甘く
かすれた響きが重なって
格別に女らしく聞こえた
その声で愛撫されたかのように
信一郎の股間が疼いた
その自分のあまりの
反応にショックを受けた
きっと・・・・
今日は色々見せられたから
興奮してるだけだ
仕事の事を
考えるとすぐおさまる
信一郎は自分に言い聞かせた
意識的に彼女を見ないように
今や豚並みの食欲を思わせ
自分が共食いを
してることなど微塵も
思っていないであろう
ガツガツ食べる
オウムを熱心に見ていた
「信一郎様!見て! 」
彼女が
ラグーンの奥を指さして言った
マングローブの根っこの間に
大きな灰色の体が暗く透明な
水の下を滑るように泳いでいた
水面に出て水を切る様は
まるで濡れた岩だ
その生き物から
息継ぎをする
「シューッ」
っという音と
遠くですすり泣いてる様な
仲間を呼ぶ不思議な鳴き声が響いた
「イルカだ!! 」
信一郎は嬉しそうに
彼女に言った
「はい 」
彼女も笑顔で答えた
直視した後では遅かった
その顔に心臓が早鐘を打ち始めた
二人はしばらく
イルカを無言で見つめていた
神経は隣の彼女に向かっている
極度の緊張状態で
五感が研ぎ澄まされていたから
実際に振れていなくても
彼女の動きを感じ取れていた
「ときどき入り江から
ここに遊びにくるんです 」
一頭のイルカがマングローブの
周りをのんびりと泳ぎ
その後に小さな
子供のイルカがついて回っている
「親子で 」
しばらく二人は無言で
とても可愛い親子イルカを
見つめていた
イルカは癒しの力が
あると言われているのは
本当のようだ
信一郎はすっかり
リラックスをしていた
ずいぶん時間が経ってハッとした
「今
俺の名前言わなかった?
どうして知ってるんだ?」
彼女がイルカから
信一郎に視線を移した
「さっき
大広間でそう呼ばれて
いたのを聞いたもので 」
「ああ あそこにいたのか?
全然気付かなかった 」
だとしたら彼女はここの住人だ
なんてことだ!
信一郎はあわてて言った
「あの・・・・
いいかい?
俺はここに叔父に連れられてきたんだ!
そう・・・
さっきまでここが
どういう所か知らなかった
だから俺は・・・・
その・・・・
そういうつもりじゃ・・・」
彼女が悲しげに言った
「・・・私とじゃ
お嫌ですか? 」
嫌なものか!
信一郎は心の中で叫んだ
「そうじゃなくて
その・・・
俺の信条に反するっていうか
そういうことは
お互い愛し合ってる者が
することで・・・
その・・・・
好き同士とか・・・
恋人とか・・・・ 」
言葉が最後まで
続かなかった
「そうだ!
話をしないか? 」
名案を思い付いたように
言った
イルカ達が信一郎の声に
びっくりして逃げだしたが
少し離れた所で
また腰を据え
ラグーンに生える
水草に体をこすりつけて遊んでいた
「俺は・・・・その・・・
まだ帰るまで時間もあるし
船から降りてまだ間がなくて
人としゃべるのが恋しいんだ」
肩をすくめ
彼女に顏を向けた
「君さえよければ・・だけど・・」
思わず唾を飲み込んだ
その音の大きさに驚いたが
彼女の表情は明るかった
「あちらにコテージがあります
イルカ達を見ながら
何かお飲物でもいかがですか?」
彼女のほほえみに
体の中の何かが緩み
暖かいものが流れた
そして聞いた
「君・・・・名前は? 」
彼女は花のように笑って答えた
「ユカと申します 」
月夜に浮ぶラグーンの淵に
ひっそりと作られたコテージは
コテージというより
ここが一つの宮殿のようだった
コテージの床からは
そのまま海に
入れるようになっていて
大理石を思わせる
4本の支柱には
シルクのカーテンが
海風をうけて優しく揺れていた
まったくここの屋敷は
どこまで贅沢な作りなんだろう
遠くのラグーンでは先ほどの
親子イルカがいて
水面にのんびりと
泳ぐ親子のイルカ
そのすぐ上の満月に
まるでどこかの有名な
外国のイルカ好きの
画家が描いた一枚の絵のようだった
本当にどこか
ファンタジーな世界に
紛れ込んで一国の城に
たどり着いたような気分だ
それか
他のみんなが言うように
ここは竜宮城でさしづめ
俺はうらしま太郎か?
「信一郎様は
お酒は飲まれますか?」
目の前で
酒を造る女の子の
問いかけに思考を遮られた
「ああ 飲むよ 船の上では
娯楽は限られているからね
酒はもっとも大切な娯楽だよ 」
「船の上ではずっと
飲んでいらっしゃるの? 」
クスっと笑いながら彼女が聞いた
信一郎は
緊張しながら話した
今まで女の子と
親しく話した事は
あまりなかったので
手のひらにじっとり汗が出ていた
「目的地につくまでは
大抵暇だからね
時々フィリピン沖で他の国の
船と交流する時があるんだけど
彼らも大概酒を飲んでいる
そして暇があれば歌っている 」
「どんな歌ですか? 」
彼女が身を乗り出して言った
興味を持っている
信一郎は続けた
「俺も彼らの言葉は
あまり知らないが
同じ乗組員で彼らの言葉を流暢に
しゃべるヤツがいるんだ
んで日本語で訳してもらった
大抵は古い島の恋歌だ
聞きたい? 」
「ええ!ぜひ聞きたいわ 」
海から優しい風が吹いていた
信一郎は風に揺れる前髪を
かきわけて言った
「でも
歌は得意じゃないから
歌詞を教えよう 」
ユカが入れた
カクテルを一口飲んで
信一郎は暗唱を始めた
あなたは光輝く海の女神
贈り物を手に
あなたのもとに駆けていこう
あなたに贈ろう
千の歯を持つサメを百匹
どんな災いからもそのするどい歯で
守ってもらえるように
宝石のような鱗を持つ
イワシを千匹
その輝きでどんな敵をも
くらませれるように
海に照らされる真珠を万粒
あなたのしとねに敷き詰め
永遠の美しさをたたえるために
信一郎は暗唱しながら
良く考えると
この歌は結婚前の
男性が射中の女性に
プロポーズするための
歌だったことを思い出した
暗唱は
さらにほら貝や海の沢山の
恵みの贈り物が続いた
信一郎が暗唱し終わると
ユカは立ち上がって拍手喝采した
「素晴らしいわ!!
とってもロマンチック 」
目を輝かせて喜んでくれる
彼女を見て信一郎は耳が
火照るのを感じた
「俺ならこう言うね
(あなたのために海に飛び込もう)
だって贈り物が多すぎるし
もっとも彼女がそれで
答えてくれるかどうか分からないけど」
二人は大声で笑った
「この辺に住んでるなら
舟歌ぐらい聞いた
事があるだろう?
どれもこれも
大げさなんだ 」
照れ隠しで笑いながら言った
「つい最近こちらへ来た
ばかりだから・・・ 」
彼女は悲しそうに言った
初夏の海の風を感じながら
とても穏やかな気持ちだった
聞こえるのは波の音と
ときどきイルカの親子が
立てる水面を蹴る
水しぶきの音だけ
信一郎は緊張がじわじわ
戻ってくるのが分かった
「君は・・・・・ 」
言いかけて辞めた
男なら誰とでもSEXするのかい?
バカなっ!
そんな
「血液型何型?」
とでも気軽に聞くように
こんなこと聞けるわけがない!!
信一郎は
持っていたカクテルを
一気に飲み干した
すかさず彼女が
お代りを作りだした
その表情は何を考えているか
分からなかった
もう一度落ち着いて考えよう
そうだ
ここの住人だからと言って
みんながみんな娼婦な筈はない
ここは宿泊施設でもあるから
使用人ってヤツもいるだろう
きっとユカはお手伝いで
きっとそうだ
厨房係とか客室掃除係とか
「ハイ・・・信一郎様」
ニッコリ笑って
カクテルを差し出された
その笑顔を見て考えが変わった
このユカを裏方に
回しているなら
ここの女主人はアホというものだ
流れるような艶やかな髪
あの中に手を
入れたくてウズウズする
そして髪をつかみ
上を向かせ
あの唇を一思いに・・・・
アホなのは俺だ!!!
「ありがとう!」
またカクテルを
一気に飲み干した
もうそろそろ
これで止めておかなければ
近くの木で小鳥がさえずり始めた
さきほどのオウムもきっと
近くにいるのだろう
ユカは厨房へ行って
料理を取ってくると言って
その場を去った
この隙に帰ろうと思えば
帰れたのになぜか
信一郎はそうしなかった
正直になると
彼女ともっと一緒に
過ごしたかったのだ
暫くすると
ユカが盆いっぱいに
食べ物を持ってきた
特にバナナを葉っぱに包んで
焼いたものは上手かった
船上生活が長くなると
陸での料理は
なんでもうまく感じた
二人の間の微妙な
空気を読みながら
当たり障りない話を沢山した
ユカの歳は自分より一つ
年下だった
関西出身で理由があって
ここにやってきた
その理由はあえて聞かなかった
そして
最初に交わした言葉でユカは
ハッキリ
「自分が相手だと嫌か?」
と聞いた
もちろん何の相手か聞くのは
無粋と言うものだった
彼女とそうなりたいのかどうか
信一郎は分からなかった
でももう少し
彼女とこの空間を楽しみたかった
「もっとご家族の事を話してください」
「何世代まで遡る?
俺の父方の兄弟は二人だが
母方は7人の姉妹がいる
それに祖父は3回結婚した
俺には叔父と叔母が山ほどいるんだ
それに島のほとんどが
大島で親戚だ 」
「こんがらかりそう
では ご両親のお話だけ 」
信一郎は色々話した
船上の話や家族の事を
ユカは熱心に耳を傾け
父親の死には同情を重ね
色々質問した
彼女は飢えていた
この屋敷の外の情報に
テーブルの置時計をみると
なんと3時間もここでユカと
過ごしてた
叔父は一人で帰ったのだろうか
信一郎はあくびをした
クスッとユカは笑って言った
「眠いのでしたら
あちらに移りましょう 」
ユカの指さした所は
向かいのコテージの寝所だった
信一郎はコテージの奥に
ひっそりと佇んでいる
ダブルベットを見て
ビクッと体を震わせた
クスクスユカは笑った
「心配しなくても
いきなり襲いかかったりしません」
「何もしないと約束してくれるなら 」
肩をすくめて言った
これじゃ男女逆だ
信一郎は思った
眠いのは本当だった
10歩でコテージに
二人は移動した
ベッドの上には
ブーゲンビリアが
ハート型に飾られてあり
そこかしこに花びらが
散らされていた
まるで南国の
新婚夫婦が泊まる部屋だ
コテージのベッドは
とても心地よかった
横たわると良い具合に体が沈んだ
「私も横になってもいいですか?」
信一郎の隣にはユカが
静かに横たわった
彼女の重みでベットが少し沈んだ
少し体を起こして
ユカが言った
「こういう時は
何もしなくても
腕枕ぐらいはするものです・・・」
「・・・わかった・・・ 」
顏が赤くなるのを感じた
でも
彼女をそっと抱き寄せた
信一郎の肩の
くぼみにぴったり
彼女の顔はおさまった
サラサラの良いニオイがする
髪の毛をもてあそびながら
まるでシルクの糸のようだと思った
不思議といやらしい
気持ちは湧いてこなかった
天井を見上げると
天窓は開け広げられて
満天の星空が見えた
疲れているのか
酔っているのか
今や夜空の真ん中に煌々と
輝く満月が二重に見えた時
信一郎は深い眠りについた
彼女を抱きながら
夜明け前に目が覚めた
恐怖に震え
体はこわばっていた
直前まで見ていた
夢を思い出せなかった
けれども
いきなり現実に
引き戻されたみたいだった
現実に引き戻されても
体は揺れていない
海の上でも
家でもなければここは何処だ?
信一郎は形の無い恐怖でいっぱいの
場所に漂っている気分だった
息をしたのか
声を上げたのか
どっちか分からなかった
体全身に冷や汗が沸いてきた
突然横のシーツが盛り上がり
ベッドにいた見知らぬ女が
顏を覗き込んでいる
「信一郎様?どうされました?」
目の焦点があった
女の白い顏が目の前にあった
「大丈夫ですか?」
彼女が囁いた
信一郎の濡れた額を
白い手が撫でた
「・・・・ここは・・・
ああ・・
起こしてすまないってか・・・
一緒に寝てたんだな・・・・ 」
細くて暖かい手に
むきだしの
腕を優しくなでられた
「ごめんなさい
布団を独り占めして
しまっていたわ
こんなに凍えている 」
そう言って
ユカはかけ布団を
信一郎にかけると
すっぽり二人を包んだ
すぐに信一郎の頬に手を
伸ばした
「怖い夢を見ましたか?」
「うん・・・・
たぶん・・・ 」
布団の中で手が温かい
手に触れた
二人は向かい合って
見つめ合った
少しの時間でも
二人で睡眠をとったことは
お互いの距離を
短いものにさせた
何かが心から溢れた・・・・
「父なんだけど・・・・・
脳貧血を起こしてから・・・
長い事・・・
寝たきりだったんだ 」
「・・・そうなの・・・ 」
ユカは信一郎の手を
握りしめた
深い安心感が信一郎を包んだ
「母さんは・・・・
毎日父を介護していた
最後の方は・・・・
もうしゃべれないし・・・
意思の疎通もできなくて
まるで
穴が開いたしぼんだ風船に
息を吹き込んで
いるようなもんだったよ
何をしても膨らまない・・ 」
「お気の毒に・・・ 」
長い事二人でじっとしていた
互いの息を感じ
体のちょっとした
動きにも敏感になっていた
「母は・・・・
もう半分
おかしかったんだと思う
父がもう末期の頃は
口数も少なく・・・・
生気もなかった 」
体が温まってきたので
信一郎はユカの頭を
そっと上げさせ腕枕をした
ユカの頭は信一郎の肩の
くぼみにすっぽり収まった
「ある日・・・・
見てしまったんだ 」
信一郎がきまり悪そうに
身じろぎした
「話して・・・・ 」
ユカが言った
「父が寝ている部屋の
ドアが少しだけ
空いていたんだ
隙間風が入って
寒いだろうから
閉めてあげようと思ったんだ
父の部屋の
ドアのそばに行った時
中に誰かいるのがわかった・・・
母だったんだ
母は・・・・
裸だった 」
そこでちょっと
間をおいてから言った
「父には・・・・
長いこと愛人がいたんだ
母はそれを知っていた
父が寝たきりになってからは
愛人との関係は
どうなったかは知らないけど
とにかく・・・・
大島の一族では
夫の介護は嫁の勤めでさ
父を施設に入れないで
それは母は妻の
鏡と親戚中から
尊敬されるぐらい献身的だった
だから驚いたんだ
母が全裸で
寝たきりの父の首に
くだものナイフを突きつけて
いたのを見た時は」
小さく息を飲む
音がした
ユカが驚いたのが分かった
「父の顔は恐怖で歪んでいたよ
母はさんざん父に
恨み言を小声で言ってた
殺すつもりは
なかったんだと
思ったよ
ただ・・・・
なんだか・・・
母も女だったんだなって・・・・
思って・・・・・ 」
信一郎の頬から
一筋熱いものが流れた
「父が死んでから
俺が母を幸せにしなきゃって
思って・・・・
家族のために頑張るのは
好きなんだ・・・
だた・・・・ 」
信一郎の腕枕と反対の指は
ユカの手を握りしめていた
「時々・・・・
こうして
夢でうなされる時がある・・・
なんでだか分からないけど・・・
決まってしばらく夢と
現実を彷徨うんだ
でも・・・ 」
信一郎はユカに顏を寄せて
ニッコリ笑った
「君に起こされた時は
悪くなかった・・・
初めてだよ・・・・
うなされて良い気分になったのは 」
ユカは泣いていた
「何度でも・・・・
引き戻します・・・・
私でよければ・・・ 」
二人は顏を近づけ
お互い目を閉じた
朝方の夜は冷たく暗いけれど
二人の回りには
光とぬくもり以外は何もなかった
そして
お互いの他には
「本当に私とではお嫌ですか? 」
ユカの息を思いきり
吸い込んだ
温かく甘い・・・
「初めから君がほしかった 」
どちらからともなく
キスをした
抵抗しても心は正直だった
認めてしまおう
だって俺は・・・・
彼女を一目見て
その5秒後に
恋に落ちてしまったんだから・・・
ユカが唇で
信一郎の口を開けさせ
舌の先と先をくっつけた
それだけで信一郎の体に
信じられない
化学反応が起こった
まさにマッチのように
一瞬で燃え上がった
ユカは信一郎を誘惑し
信一郎は
そうすることを許している
ユカの顔がふわりとあがって
信一郎の顔にふれた
頬を包む
すでに赤い顏が
なおも火照った
信一郎の手がユカの
フォルムを確認するかのように
全身をなでる
ユカはかわいがってもらうことを
喜ぶ猫のように信一郎の体に
自分の体をすりつけた
信一郎は自分に驚いた
こんなにも熱く
なれるものなのか?
人間って
「俺・・・
童貞なんだけど・・・
嫌か? 」
息をあえがせそう言った
ユカは頬にかかる信一郎の
前髪をなでるように払った
「嬉しい・・・・ 」
ユカの唇が
顎をたどり喉にくだっていく
それから鎖骨のくぼみを埋めた
乳首を吸われた時は
気持ち良くて
女のように声を上げてしまった
ユカの手つきは
うやうやしかった
ふれるかふれないか
くらいの密やかな触り方
それなのに信一郎は
その手の感覚以外は
何も感じられなくなっていた
ユカの手が触れた所から
熱が爆発してくる
心臓は助骨を打ち付けている
息が乱れる
手はさらに下って
おへその周りに円を描いた
信一郎は深く息を吸い
成すがままにされているのが
少し恥ずかしくなった
赤面するのは女であって
男ではないはずなのに
しかし
何故それがいけない?
「釣り針にかかった魚みたいだ」
「どういう意味ですか?」
問いかけの最中も
ユカは愛撫をやめない
「暗闇にぴちぴちと
跳ねてみても
なすすべもなく
もう どうされても
いいという気持ちだ 」
二人は笑った
笑いの振動がお互いの体に響く
それほど密着している
少なくともユカは
初めてではない
もう俺は気にしない
信一郎の考えが伝わったかのように
ユカの手がそこで一瞬ためらった
控えめな手が
ベルトとファスナーを外し
トランクスの中に侵入してきた
もどかしい一瞬ののち
指が陰毛の先をかすめた
じれったいほど微かに
触れただけなのに
信一郎の体中に興奮が走った
このままでは
射精してしまうっっ!
それだけは避けたい
信一郎はがばっと起き
シャツを脱ぎ捨てた
「今度は君の番だ!」
ユカは見つめあったまま
ノースリーブのワンピースを
頭から脱いだ
信一郎はそれを手伝った
美しさに息を飲んだ
長く優雅な胴体に
手にすっぽりおさまるような
張りのある乳房
そして誘うような
ローズピンクの乳首
その腰のくびれは
まるで砂時計のような
みごとなフォルムだった
恥かしそうにユカが言った
「女の裸は見たことがない?」
信一郎は目を見張って言った
「こんなに近くではない・・・
なんてきれいなんだ・・・
ああ・・ユカ・・・・
写真でもこんなに
綺麗な体はみたことがない」
信一郎は激しくユカを抱き寄せ
口づけをした
今度は遠慮せず舌で
容赦なくユカの口の中を
隅々まで探索した
ユカは全身震えていたが
信一郎のしたいようにさせた
そして赤くは塗ってはいない
天然で愛らしい色を
している乳首を吸うと
吐息と共にぷくっと
小さく勃起した
信一郎は感動した
今やユカと言う女体の神秘を
探検することに
果てしない喜びを
見出している信一郎を
ユカの母性は大いにくすぐられた
やさしさを求めるには
彼はあまりにも飢えていて
不器用だったけれど
信一郎はせいいっぱい
ユカを気遣い
そしてその気遣いに
ユカ自信は愛しさを感じていた
「ここは?」
「ああ・・・
信一郎様はずかしいっっ 」
「見てもいい? 」
「あなたがそうしたければ・・・ 」
ユカの陰毛は驚くほど
なめらかで柔らかだった
信一郎は初めて
嗅ぐ女の匂いに
すっかり興奮していた
ユカの白い脚を広げ
初めて見る女の秘所は
思ったより複雑で
限りなく滑らかで
ハチミツのように
濡れていた
舌で甘く温かい秘所を
隅々まで愛撫すると
ユカは体を弓なりにそらし
信一郎の髪に手を入れた
「信一郎様・・・・・
もう・・・もう・・・・ 」
ユカがすごい力で
信一郎を自分の顔に
近づけた
さっきまでユカのアソコを舐めていた
口でキスするのは少しためらった
「ああ・・
信一郎様・・・
そんな寂しいことしないで・・・ 」
ユカが遠慮も無しに
熱い口づけをかわし
舌が入ってきた
ああっ・・・
なんて女だ
信一郎も舌でユカの情熱に
答えていた時
それはやってきた
二人の体がぴったり
くっつき
後は出ている所は
信一郎のペニスだけ
当然収まる所に今すぐ
納めないと死んでしまう
ユカが角度を調節して
侵入しやすいように
してくれた
そして一突きに貫いた
貫いたのは自分なのに
心を貫かれたのは
信一郎の方だった