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るる太📱⚡🐼
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「元宮さん、あの時奥さんになんて言われてたんですか?」
子どもたち二人が激しい公園遊びの後、お昼寝に着いたところで、リビングの机で一休みしていた新が聞いてくる。
空はそれに気づいていなかったようで、俺の顔をじっと見つめている。
「……そんな大したことじゃないで?」
軽く笑って流そうとする俺に、新が「俺たち家族でしょ?」と真剣に促す。
「……優しいだけの、つまらない人って」
自嘲気味に呟きながら、苦い過去が頭をよぎる。
「……かわいそうな人ですね」
ぽつりと空が呟いた。そうやんな。俺自身もそう思ってる。どこまでも頼りなくて、情けなくなる。
「ほんと、そうです。元宮さんの偉大さに気づけなかった奥さんは可哀想な人です」
新と空が目を合わせて、ふふっと笑い合っている。
「……でも、俺、子どもたちにも奥さんにも選ばれへんかったしな?」
情けない言葉が口をついて出る。よく考えれば、この家には新と空さえいれば、俺なんかおらんでもええような気すらしてくる。
「子どもたちにとって父親なんてそんなもんですよ。だから『縁の下の力持ち』って言葉があるんでしょ?」
新は穏やかな声で、諭すように言葉を続けた。
「子どもたちからしたら、分かりやすく甘やかしてくれて、お世話してくれる人に懐くに決まってます。でも、家族を丸ごと包んでくれていた父親という存在の凄さには、大きくなった時にふと気づくもんなんです」
「……」
「それに、俺たちは元宮さんを選びました。それが、元宮さんはつまらない人なんかじゃない、愛がたくさん詰まっている人だって何よりの証拠です」
真っ直ぐに、一点の曇りもない目でそう言ってのける新に、胸の奥がじんわりと熱くなる。……ほんま、さすがやわ、新先生は。
その穏やかで心地いい言葉は妙に説得力があって、心にすっと響く。
そっと、机の下で空が俺の手を握った。
大きな、でも少し緊張で強張った温かい手。言葉以上に伝わるその体温に、空への返事をするかのように、俺もその手を優しく握り返した。
「……そんなこと言うたら、ダーリンに愛想尽かされるで?」
少し照れくささを誤魔化すように、さっきの朝の茶番を引っ張り出して意地悪く返してみる。
「あ、……じゃあ、今のは三人だけの秘密で」
新は、唇に人差し指を立てて悪戯っぽく笑った。
それを見た俺と空は、繋いだ手はそのままで、自然と顔を見合わせて同時に吹き出していた。
「ほんま、ありがとうな、新。これからも……家族をよろしく」
空いている右手を差し出すと、新もそっとその手を握り返してくれた。
「え!? なんで空が泣いてんの!?」
俺の手を握っていた空の手がふっと離れたかと思ったら、空は両手で顔を覆って、ボロボロと泣いていた。
「だって、新先生が泣かせてくるから……っ!我慢できひんかったんやもん!」
鼻を赤くして子供みたいに抗議する空の様子に、俺も新も思わず大笑いしてしまう。つられて空も涙を拭いながら吹き出した。
空と新がいいのなら、俺たちはそれでいい。この先も愛が続く限り、この家族を守っていこう。
♢♢♢
「はい! いきますよー! 10、9……」
離婚届が正式に受理されたあと、俺たちは新しいスタートのために、家族写真を撮り直すことにした。
大人三人、ビシッとしたスーツに着替えて、子どもたちも可愛らしいおめかし服を着たりして。
コルクボードから消えたままの、かつての家族写真。あの写真の行方は今もわからないままやけど、もし、彼女がそれを持っていてくれたなら。それも彼女の愛の形なんやとも思う。
俺たちの家族は、周りから見れば、おかしくて歪な形をしているかもしれない。だけど、俺たちはごく自然に集まった、ただの愛の塊でしかないんや。
「……俺も元宮さんのこと、大好きですよ?」
「へ!?」
新が数を数えながらこちらへ向かって走ってくる、その一瞬の隙を狙ったように空が言った。
いや、気持ちは伝わってたけど、いざ真っ直ぐ言葉にされると猛烈に照れ臭い。
「おれもおとうのこと、だいすきやで!」
「こうもだいすきーー!!」
前に並んでいた弦と洸まで一斉に振り向いて、俺のことを満面の笑顔で見つめてくる。
「みんな、カメラ全然見てへんやん!!」
シャッターのタイミングを気にしながら、新が珍しく大きな声でツッコミを入れた。思わず顔を見合わせて笑う俺たちに、空がニヤリと悪戯っぽく新へ視線を送る。
「新は? 言わんでええの? このチャンス逃したらもうないかもやで?」
「へ……?」
空の突然のパスに、新が珍しく顔を赤くして何かを考えている。そして、少しだけ視線を泳がせたあと、意を決したように口を開いた。
「……僕も。僕も大好きですよ、元宮さんのこと。……洸くんと、弦くんと、空の次に」
「最下位!!」
俺のツッコミに、新はいつもの穏やかで優しい顔に戻って、ふふっと微笑んだ。
「じゃあ、もう一回! 10秒ですよ!」
セルフタイマーを押しに、再びカメラの方へダッシュしていく新の後ろ姿を見つめる。
「どこまでも優しい人ですね。新先生って」
「……空、お前もな?」
空が嬉しそうに、でも少し照れたように俺を見つめてくる。
カメラの前に滑り込んできた新が、俺たちの隣で笑顔を見せた。点滅が早くなってシャッターが下りるその直前、俺たちは声を合わせて叫んだ。
「いくで!!」
「「「「「はい、チーズ!!」」」」」
五人の弾けた声が、どこまでも高い大空へ響いていく。
いつまでも、いつまでも、このまま楽しい日々が続いていきますように。
〈 完 〉