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遠くで声が聞こえる。
(名前)より少し低い、でも(名前)と同じで少し落ち着くような声。
「…(名前)」
「はよ起きろや角名。(名前)って誰やねん。寝ぼけんな、俺は治や」
俺の頬をパシパシと片手で軽く叩きながら、もう片方の手でおにぎりを頬張る治がそう言った。
俺今、(名前)とこいつが同じ様な落ち着く声って思ったのか。
「…最悪」
「は?お前起こしてもらっておいて最悪って何やねん。(名前)じゃなくて悪かったな」
俺にキレてる治の横から、瓜二つの顔をひょっこりと出した侑と目が合う。
「お前、インハイの全国大会の会場でよう寝れるな。
しかも次やぞ、俺らの試合。肝座ってる以前にお前には肝がないんか角名」
「分かってるよ、ごめんって」
稲荷崎は今年のインハイも全国に行くことができ、選手は次の試合に備えていた。
俺はレギュラーには入れなかったものの、ピンチサーバーで出れるかもしれない立ち位置だった。
目の前の試合に集中しよう。
そう思っていても、やはり頭の片隅には(名前)がいた。
帰省以外で会えるのは、こういう大会しかないから。
(名前)もこの会場に来てたりしないかな。
そしたらまた前みたいに、いや、前よりも俺の事求めてくれるはずだ。
だって急に離れて急に疎遠になって、連絡をしたい気持ちも抑えて、あれだけ焦らしたんだから。
もしここで会えたら、そのまま付き合えちゃったりして。
そんな淡い期待を抱いたまま、試合が始まった。
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