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⚠注意⚠

このお話はクトゥルフ神話TRPGキルキルイキルのシナリオを元にした作品です

そのためシナリオのネタバレを盛大に含みます。

キルキルイキルをプレイする予定の方、 配信を見る予定の方などは回れ右をお願いします。

また、本作品をTwitter(現X)等のSNSでの拡散は絶対にお止め下さい。

誤字脱字等が見られることがあるかもしれませんがそっと目を瞑ってやってください。

本作品は全てフィクションです、 実在する人物や事件とは一切関係ありません。

《登場キャラクター》


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喜山side

〜紘也の部屋

[はッ…]

「…ぅ…ん..?」

目が覚めるとそこは相変わらず子供部屋の中であった。だが、そこには幼い頃の俺の姿も、金庫も、あの奇妙な円筒状の物体も存在しない。何もない廃墟のような伽藍 堂な部屋があるだけとなっていた。

「気…..失ってた…?」

[そうみたいだな…、何も無い]

「…..とりあえず部屋出よっか」

[…うん]



〜ダイニングルーム

「えぇ…..」

[うわぁ…..]

部屋の内部がさらに変貌している。薄汚れている程度の印象であった室内は、今や廃屋のように至る所が劣化し、壁や天井には薄いヒビが走っている。俺らが床を踏むたび、乾いたフローリングはギチギチとたわみ、ともすれば崩壊してしまいそうな印象を受ける。俺らが室内の探索を進める間にも、ヒビは増え、天井からはパラパラとかけらが降ってくる。

「…もう、手遅れじゃん」

[…..どうしようも、ないな]

テーブルを見ると、先程からずっと置いてあるカルテと、それに添えられるようにして万能包丁が一本置かれている。

[…包丁、戻ってる]

「こんなとこに置かれても困るけどね」

[まぁな、]

カルテを手に取り目を通す、先程よりもさらに記載が増えている。


担当医:能生泰成のうきやすなり

症状:頭痛・記憶の混濁/解離性同一性障害(多重人格障害)の疑いあり

脳に甚大な損傷の疑いあり・後日精密検査を行う


バインダーに挟まっている紙を1度外し、裏返しにして挟む、なんだよ、解離性同一性障害って、俺がそんなのになるわけないだろ。

「なんか文字増えてたー?」

飾り棚を見ていた紘也が声をかけてくる

[…..いいや、何も]

「そっか、この包丁どうしようね…」

[空き巣が姿を現すかもしれないしな、置いとけ]

「やっぱり空き巣か…」

[あぁ]

[キッチン見に行こ]

「うん、」


〜キッチン

「ぅ…..くっせ」

[酷い匂いだな…]

ひどい悪臭が立ち込めている。コンロの上に置かれていたカレー鍋は中身が腐りきってしまっている。蛇口をひねると赤錆混じりの水が少し出た後、水は出なくなってしまう。同様に、コンロも火がつかなくなっている。

「死ぬしかないね」

[死ぬしかないな]

〜ダイニング

「…..うむ…テレビはバキバキですね」

[電源もつかないようですね]

「…..よし、水場」

[おっけー]

こんな軽く余裕そうな会話を交わしているが、恐らく俺も紘也も、恐ろしいほどに湧き出る恐怖を紛らわすためなのだろう。


俺たちが足を踏み入れようとすると、突然ばきっ、という何かが割れるような音の後にガラガラと瓦礫が崩れるような音が聞こえてくる。

[っ…!?]

「なんだなんだ」

水場を覗き込めば、洗面台から先の天井や壁が崩落し瓦礫の山と化してしまっている。通路は瓦礫の山に塞がれ先には進めそうにない。未だ無事である洗面台付近の壁や天井にも薄いヒビがほとばしり、程なく崩れ落ちてしまいそうだ。

[…..危ないから、ここの探索はやめとくか]

「そうだね…」


〜玄関

「…..あかないね」

[うん]

相変わらず扉は開かない。

端々に付着した赤錆が扉全体に広がっている。俺たちが見る間にもその赤錆は扉の正面を覆いつくそうと侵食を広げてゆく。

[ドアスコープ、見てみるわ]

「わかった…」

ドアスコープ覗き込むと、そこには見慣れぬ白衣の男がいる。

[…!]

男はスコープからこちら側を覗き込んでいるように見える。それは対面で覗き込まれるような体勢ではなく、まるで仰向けに寝転がった俺の顔を、男が上から覗き込むような体勢だ。男は何かをつぶやいたのち、慌ただしく何処かへ走ってゆく。スコープから見える視界の端々では、ナース服を着た女性がバタバタと動き回っているようだ。

[…]

そこまで観察していると、途端スコープは真冬の窓ガラスのように曇り、外の景色は見えなくなってしまう。

「なにか見えた?」

[、白衣を着た男がいた]

「男ぉ?」

[でも…対面で見合ってる感じじゃなくて]

[…俺が仰向けに寝転がって、それを上から覗き込むような、感じ]

「…なんか、病院のベッドの上みたいな光景..だね…」

[確かにな…]

[…..戻るか]

「うん…あとは自室だけだね」

[…あぁ]


〜ダイニング

「どっちの部屋から行こうかね」

[先に俺の部屋から行ってみるか?またひろの部屋だけ変わってるかもしれないし]

「そうだね、行ってみよっか」


ガチャ

「えっ…..」

俺がドアを開けると、紘也が目を見開く

[どうした…? ]

「真っ暗で..なにも、…ない」

[真っ暗…]

[……..]

[…多分俺もひろの部屋には入れないだろうから]

[自室にいっててくれ]

「…..わかった」

[大丈夫だ、すぐ会えるから]

「…..うん」


パタン


〜自室?

扉を開けると、そこはいつか俺が訪れた総合病院の診察室になっていた。部屋の扉は丁度、病院の待合室から診察室へと入室するための扉に置き換わっているようだ。こじんまりとした診察室の中には俺が座るべき丸椅子と、そして医者が座る椅子が向かい合わせに置かれている。周囲の器具や壁に触れることができず、まるで幽霊のように通り抜けてしまうだろう。

[病院…]

[……..]

特にすることも無く、俺が丸椅子に座ると、程なく同じ扉から白衣を着た医者らしき男が現れるだろう。それは間違いなく俺が以前診察を受けた医者なのだが、その顔にはなにかモヤのようなものがかかり、しっかり見ることができない。

医者は入室すると俺の向かい側に腰掛け、俺に向かって話し始める。


“診察の結果が出ました。驚かずに聞いてくださいね。あなたには、解離性同一性障害、いわゆる多重人格症の疑いがあります。”


その一言で、それが先日訪れた診察室での追体験であることに気がつく。目前の医者は変わらず淡々と俺に向かって話しを続ける。


“あなたがお話してくださったお友達の紘也さんですが、彼はすでになくなっておられます。あなた方が10歳の頃、行方不明になってから戻られていないのです”


[…..え]


“恐らく、あなたはそのショックから、紘也さんの人格を、あなたの中に、作り上げてしまったのでしょう”

“あなたは、あなたたちはそのことに気づかないまま、今日まで互いが互いを存在しているものであると認識して生きてきたのでしょう。そのせいで、あなたの脳には甚大な負担がかかってしまっているようなのです”


“おっしゃっていた、頭痛ですとか、記憶の混濁ですとか、そういった症状は、恐らく今日まで二人分の人生を処理してきた脳に限界がきてしまった為に現れた症状でしょう。そのまま放っておけば症状は進み、あなたという人格は消えて無くなってしまうかもしれません”

“これ以上、そのお体で2人分の人生を処理することは不可能です。大変申し上げにくいことですが、どちらかの人格を…消さなければ、あなたも、彼もどちらも消えてしまうことになるでしょう”

“近く、あなたは潜在意識の中で紘也さんに会う事があるかもしれません。その時が、話し合う最後になるかもしれない。あなたが、あなたとして生き続けたいのであれば…無慈悲なことを申し上げますが、あなたの中の紘也さんを、殺してしまう他ないでしょう”


[殺..す…..]


この時、医者に向かってなんといったのか、思い出すことはできない。怒ったのか、泣いたのか、叫んだのか、その記憶は定かでないが、今感じている感情と、おおよそ同じようなことを考えていたにちがいない。


[……..]


“あなたが…あなたがそれでも、あなたと紘也さんがどちらも消えてしまうことがわかっていても、それでも2人で生きたいというのであれば…すべての事実を伝え、双方が納得することが大切です。相互に理解をすることで、脳への負担はわずかですが軽減されるでしょう”


“ですが忘れないでください。二人で生きつづければ、あなたたちは間違いなく、遠からず、二人とも、消えてしまいます。これは、決して避けられない事実です。”


“私からお伝えできることは以上です。もう少し早く、訪れてくださっていれば、処置のしようもあったのですが…..誠に、申し訳ございません”


医者はそう言って深く頭をさげると、椅子から立ち上がり扉の外へと消えていった。呼び止めようとしても手は医者の体をすり抜けてしまい、つかめる事はない。


[…ひろ…..]


椅子から立ち上がり、扉を開ける





紘也side

〜ダイニング

翔命が自室に入ってしばらく経った、僕は自分の部屋の扉を開ける勇気がなく、ただただ扉の前に佇んでいた。

「…..」

“大丈夫だ、すぐ会えるから”

息を吸い、深く息を吐く、ドアノブに手をかけ、力を入れる


〜自室?

扉を開け中に入ると、見覚えのない無機質な部屋になっていた。

足元に敷き詰められた緑色のタイル以外は、部屋に立ち込める異様な闇のせいで入り口から室内すべてを視認することができない。僕が室内に一歩足を踏み入れると、すぐさま僕の意識は暗転し、その場に倒れてしまう。

遠くで部屋の扉が閉まる音だけが僕の耳に届いた。

程なく、双眸を射す眩い光で目を覚ます。僕は見慣れぬ手術台に横たわっており、その目を射した光は手術台についた照明のようだ。周囲には生臭く、鉄臭い、湿気を帯びた嫌な臭気が漂っている。体を起こしたところで気がつく、自分の体が幼い子供の体に縮んでしまっていることを。手術代の脇に置かれた金属製のワゴンに映り込むあなたの姿は、幼い翔命の姿になっていた。割れるような頭痛に頭を触れば、その指先にはぬるりと赤い血液が付着する。僕は、この光景に見覚えがあった。幼いころこの光景を目撃したことがある。

そこで僕は気づく、これは幼い日の追体験であることに。

幼い翔命の姿をしたあなたはその体の自由が利かず、ただその体の中からかつての記憶を目撃しているにすぎないようであった。周囲を見渡せば僕が眠る手術台の横に、もう一台手術台置かれている。そこに、もう一人、誰かが眠っている。恐る恐る近寄れば、それは、幼い日の僕だった。力なくだらりと垂れた腕、見開かれた目、血の気の引いた皮膚。そして、ぽっかりと穴の開いた、頭部。幼い僕の頭蓋は、無残にもわり開かれ、その内側にあったはずの脳髄が、すっかり取り除かれていた。確認するまでもなく、僕は気づいてしまうだろう。そこにいる幼い自分が、もうすでに生きてはいないことに。

程なく、手術室の奥から幾つかの足音と、虫が羽ばたく羽の音が聞こえてくるだろう。男のしゃがれた、ひどく不明瞭な声が聞こえる。


“ああ、片方は死んでしまった。矢張り体が幼すぎたか?”


“一人生き残ってる。それで充分だろう。”


“いや、それより、現れたのは脳の人格なんだろう?実験はそれで充分じゃないのか”


“今はそうだが、成長によって変化が起こるかもしれない、まだまだ観察せねばならないのだよ。成体では意味がないだろう”


男は誰かと会話をしながら、あなたの方へと歩み寄る。そこに現れたのは、白衣をまとい、不愉快な笑みを浮かべた一人の老紳士であった。彼はあなたが起き上がっていることを確認すると、愉悦の笑みを浮かべながらあなたに語りかけるだろう。


“やあ、おはよう紘也くん。君が無事でなによりだ”


“安心しなさい、君はちゃんとおうちに返してあげるからね”


“ああ、そうだ、友人も返してあげようね”


“入れる予定だった体が死んでしまったから、代わりの入れ物にいれておいてあげたよ。会話ぐらいは出来るだろう。”


そういって男は僕に向かって金属製の大きな円筒を差し出した。円筒状の物体からは、ごぽごぽと泡立つような水の音に合わせて人のうめき声のようなものが聞こえる。

それは、”苦しい” “助けて” “出して”と哀願する、幼い翔命の声であった。

その後、僕は気づけばあのタイムカプセルを埋めに訪れた裏山に立ちすくんでいた。どうやってそこまで戻ってきたのかは定かでないが、その後すぐさま周囲を捜索していた警察に発見され、保護されるに至る。その手に、銀色の円筒体を抱えて。

幼い日の僕は、自らの身に起きた出来事を理解することができず、またそのあまりに残酷な現実を直視することもできず、その記憶を封印してしまっていたようだ。

家に帰った僕は、持たされた円筒体そのものを翔命だと思い込むようになった。そこに翔命が存在していると思い込むようにしていたのだ。毎日、毎日、その円筒体と会話をしていた僕だったが、日が経つにつれその円筒体から発せられる声は弱々しいものとなっていった。

その頃、僕の中には翔命の人格が形成され始めていた。

幼い僕は、自らの中に生まれた友人の人格を、本物の友人だと錯覚するようになる。そうして友人の代替品であったあの円筒体を、その全ての記憶とともに家にあった金庫へと閉じ込め、鍵をかけた。



気がつけば、僕は暗い診察室の椅子に座っていた。そこは最近訪れたことがあるような、見覚えのある診察室であった。目前には、白衣を纏った老紳士が一人向かい合うようにして腰掛けている。

それは、あの日、あの手術室であなたに笑いかけたあの、男であった。


“やあ、久しぶりだね紘也くん。元気そうで何よりだ”


“君たちのおかげで私の研究は一歩前進したよ、協力してくれて、ありがとう”


“私は、私たちはね、人の心について研究をしているのだ。それは長らく、人の脳に宿るものだと考えられていたが、実際のところはそれが事実かどうかは判明していなくてね”


“だから、試すことにしたんだ。人間2人の脳を入れ替えて、その体に現れる人格がどちらになるのかを”


“結果、その体に現れたのは君の人格だったわけだが…時間とともに変化することもあるかと思ってね、しばらく様子を見させてもらったんだよ”


“するとどうだ。君の中には失われたはずの翔命くんの人格が生まれた。それがその体に宿った記憶から生まれたものなのか、それとも君が作り出してしまった偽物の人格かどうかについては結局わからずじまいだが…だがこれはすごい発見なのだよ”


“これで次の実験に進むことができる。いや、君には感謝しているよ紘也くん。ああ、いや翔命くんなのかな?最近はもう、翔命くんとしての人格が強くなっているようだね。”


“長く持った方だったが、もうその脳も限界のようだ”


“人間の矮小な脳では、2人分の人生を処理しきれなかったようだね。損傷が激しい。程なく君たちの人格は二つとも、消えてしまうだろう”


“回避するには、どちらかの人格を殺してしまう他はないだろうね…勿体無い話だけれど。そのまま二人分の人格をその入れ物に入れておくことはできない”


“近く、君たちの脳が崩壊する直前に、その潜在意識の中で翔命くんと会うことができるかもしれない。そこで話し合うといい、君と、翔命くん、どちらが残るのか”


“全てが崩壊する前に、翔命くんを殺してしまうといいだろうね。それはもともと君の脳なんだから。君が生き残るべきだと私は思うよ”


“翔命くんを殺したいのならば、刃はいらない。ただ現実をつきつけてやればいい。”


そう言って男は、おもむろに一本の鍵を取り出して僕に差し出した。


“君の封じられた記憶を取り戻す鍵だ。あの金庫をあけ、その中にある本物の翔命くんを見せてあげればいいのだよ。そうすれば、君の中にある翔命くんの人格も、すべて思い出すことが出来るだろう。自分が偽物だと知れば彼の人格は、君が手を下すまでもなく消滅させることができる”


“ああ、それでも、二人で生きていたいのであれば、よく話し合うことだ。そのままの生活を続ければ、間違いなく君たちは二人とも消えてしまうけれど、それでも互いがそれに同意するのであれば、僅かながら崩壊の速度は抑えられるだろう。でも、そうするのなら決して今日思い出したことを彼に言ってはいけないよ。知れば翔命くんは消えてしまうからね”


“さあ、好きな未来を選ぶといい。安心しなさい。今後、君がどうなろうと私はもう関与しない。存分に残りの人生を謳歌するといいだろう”


そう言って男は盛大に笑い声をあげると椅子から立ち上がり、背後にあった扉へと向かう。この時、僕が男の体を止めようと手を伸ばしても、その手は男の体をすり抜けつかむことはできない。


「…ぁッ……僕は、僕はッ…」

男から貰った鍵を、診察室の机に置いて、部屋を出る。



翔命side

〜ダイニング

パタン…

部屋を出ると、ばったり紘也と出会う、彼の顔を見ると、酷く疲弊していた。俺は今どんな顔をしているのだろう、彼の目に俺はどう映っているのだろう。

[……….]

「…あ、…」

[…とりあえず、..座ろ]

「…うん」

室内は先ほどよりもより崩壊が進んでおり、天井からはパラパラと粉が降ってくる。周囲の壁にほとばしったヒビは亀裂となって、今にも割れてしまいそうな雰囲気だった。

[そうだな、…俺、部屋ん中入ったら、診察室…になっててさ]

「…うん」

[前、病院いった時の追体験、みたいな]

[…そこでいろいろ思い出したよ]

「…….うん、」

[俺、解離性同一性障害らしい]

[所謂、多重人格症、ってやつ]

「…..」

[…そこでさ、お前もう死んでるって、あの日行方不明になってから、戻ってないって]

[…聞いて]

[… ひろは俺が生み出した人格だって]

「……そっか、」

[もうこれ以上、2人の人生を1人で処理するのは無理らしくて、近いうちに2人とも消滅するって]

[…..]

[….俺が聞いたのは、こんくらい]

「…わかった」

「僕も…追体験だったよ」

「…、君と同じことを聞いたと思う」

「…もう、長くはないって、無理だって」

「…でもね..僕はね、翔命」

[….]

「…何があっても、どんな理由があっても」

「… 翔命と一緒に生きたいと思ってるよ…」

[…….]

[…そうか]

[でも…俺は]

[…俺はな、…]

[…ひろに、生きてほしいと思ってるよ]

[…俺がこうやってさ、普通の人間として生きていられるのも、お前のおかげで…]

[俺を地獄の底から救い上げてくれたのも…お前で、]

「…..そんなの、」

「ッ…嫌だ…、嫌に決まってる!」

[…ひろ.. ]

「僕はッ…!!」

「僕は、君がいないと生きていけない…ッ!」

「…..君は、僕の光なんだ…ッ!!」

「僕には君が必要で、!僕は翔命がいないとダメなんだ…..!」

「..、僕は、君が生み出した人格なんだって、僕はもうとっくに死んでるって」

「ただ…ただそれがなんだってんだ…!」

[ひろ….]

「僕は..君と生きられればそれでいい..ッ」

「あわよくば…君に生きてて欲しいんだッ…..!!」

「君がいない世界なんて、生きられない…ッ」

[…..そうだな]

[..俺は、…..俺には、…お前を殺す勇気なんてない..]

「じゃあ…!!」

[でもな、]

[….死ぬ勇気も、ないんだ]

[…遠くない、その未来のうちに、覚悟が決まるなんて思っちゃいない]

[それなら…でも..]

「……」

[…あぁ..死ぬのは、怖いよ…..]

「翔命…」

[…..なぁ、どうしたらいいんだ、いっそ殺してくれないか]

[でも…でも死ぬのは]

「翔命…..ッ…!!」

[…..っ ]

「僕と一緒に、生きようよ」

「…..たとえ短くても、」

「僕がいるから」

「君を1人になんてしない….」

[……..あぁ、]

[…..確かに]

[お前がいるなら…..]

[…..ひろがいるなら、な]

[…..]

「さいごまで、僕は君といたいんだ」

「さいごの、お願いだよ」

[……]

[あぁ…わかった]

[…いいよ、]

[一緒に生きよう]

[さいごが来る、その瞬間まで]

俺がそう答えると、紘也は椅子から立ち上がり、俺の事を強く抱きしめて、嬉しそうに微笑んだ

「…うん、 ずーっと、一緒だからね…..」

[…..あぁ、ずっと、一緒だ]


俺たちが2人とも消えてしまう未来を受け入れた上で、それでも二人で生きてゆくと決意したその時、玄関でかちりと鍵の開く音がした。

キィ、という音とともに赤錆びた扉が開かれてゆく。その向こうからさす眩い光に、俺たちの体は飲み込まれてゆく。そうして、俺たちの意識はホワイトアウトした。

















次に目を覚ますと、そこはベッドの上だった。

どこかの病院らしい。

傍に立っていた見慣れぬ若い医者が、目を覚ました俺を見てひどく安堵した表情を浮かべる。

“ご無事で何よりです”

医者の話によると、俺は診察に訪れたその日院内で昏睡状態に陥ってから目が覚めなかったのだという。

脳に残された甚大な障害から、もう目がさめることはないかもしれないと思われていたのだそうだ。若い医者は不安げに、俺たちに向かって問いかける。

“お伺いしにくいことですが…あなたは翔命さんですか、それとも、紘也さんですか…?”

今会話ができるのは、翔命の人格である

[…..俺たちは、2人でさいごまで生きることにしました]

[…..どちらでも]

俺がそう告げれば少し苦々しい顔を浮かべる。どちらにせよ、病院側で施せる治療はこれ以上存在せず、俺たちは即日退院することができる。だが、あの老紳士についてこの医者に尋ねても”そのような医者はうちにはいない、あなたを診察したのは自分だ”とこたえた。









この先、いつ俺たちの人格が消えてしまうのかそれはわからない。日に日にひどくなってゆく頭痛や記憶の混濁が改善されることはないだろう。それでも俺たちは二人で生き、そして二人で死ぬ未来を選んだ。たとえどんな終わりが訪れようとも、俺たちにとってはそれが最良の未来だったのだ。
















You and Me


END











✂︎————————-あとがそ—————————✂︎

書きながら泣いてました、ごめんなさい自画自賛みたいで。

ついに終わりましたか…..

というわけで

彼らはこれからどのくらい生きられるのか、翔命の41という貧弱なSAN値で1d10を何回耐えれるかやってみました。

画像

9回耐えれたので9ヶ月2人で生きれましたね

かなり短い…..辛いね(自分の出目がなかなかに高い)、さいごの2、3ヶ月は…どれほどの痛みに耐えたのか…..


クライマックスのところの、翔命の死ぬ勇気もないし殺 す勇気もない、でも紘也には生きてて欲しいっていうのが私の大好きなキルキルセッションに出てくる会話のオマージュで、もしかしたらわかる人もいるかなー?って感じなんですが、かなり自分好みのお話になったので、自分でもたまに読み返したい作品になりそうです。さいごを平仮名にすることにより!最後、最期どちらにも受け取れるというなんかn番煎じのようなことをしてみました。ちょっとしたこだわりーぬ 。

このシナリオを作った○助さんも最強ですし、この作品に出会わせてくれた方も最強で最高です、頭あがりません。本当に。まじで。

てな感じでここまで見てくださった皆さんほんとにありがとうございます。一次創作を出すのは初めてだったんですけどこれほど見て貰えるとは思ってもおらず…..

非常に嬉しい限りです…本当にありがとうございます 。

これからも、応援していただけると幸いです。




Thank you for reading!


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